――英語以外には、どんなカルチャーショックがあったのでしょう。

「価値観は人ぞれぞれ違うと、肌で感じたのは大きかったと思います。世の中にはどう説得してもしきれない違いもある、と認識できたのも米国時代です。例えば、所得税が増税されるとわかれば、日本人ならおそらく支出を控えるでしょう。ところが、米国では『今年のうちに使ってしまおう』となる。同じ事態に遭遇しても、対応のしかたが180度違います」

違いを認め、ウィンウィンの関係作る

「渡米前は円をドルに換算しながら収益を計算し、『YCAの連中はどうしてこんなに安売りするんだ』などと憤っていました。しかし、駐在して現地スタッフに『為替がどう動こうが、私たちにとっての100ドルは100ドルです』と言われて、ハッとなりました。考えてみたら、仕事はすべて、こちらの見方とあちらの見方、常に両面がある。それをなんとかしてウィンウィンの関係にもっていけるよう、知恵をひねり出さなくてはならない。ビジネスとはそういうものだと改めて認識しました」

若手社員の頃、ヤマハ主催のイベントで商品の説明員を務めた

──実は「ヤマハ音楽教室」の海外展開は1964年からと早いんですね。

「その頃からごく最近まで、ヤマハが日本で培ったノウハウをそのまま海外に持ち込んでいました。新興国では音楽が義務教育に取り入れられていない国もあり、そのままだと少しハードルが高い。そこで、3年くらい前から1000校を目標に、マレーシアやインドネシアなどで現地の学校と協力し、放課後に教室を開放してもらい、そこに我々が楽器と先生を提供するというスクールプロジェクトを展開しています。地道な将来への投資です」

――経営者のなかには、リーダーシップを歴史小説から学ぶ人も多いですが、中田社長はどうですか。

「最も影響を受けたのは、山岡荘八氏の長編小説『徳川家康』です。20代のときに全26巻を読破したことは、今も組織づくりや人材育成などで役立っています」

――なぜ、「徳川家康」だったのですか。

「ずっと読みたいとは思っていました。ただ、長編すぎて尻込みしていたんです。ちょうどカード事業の説明会で全国を回っていた時期で、移動中やホテルにいる間に夢中になって読んでいたら、1巻を1日か2日で読み切ることができました。読み始めると止まらなくて、行く先々の書店で本を買い求めていました。いまだにその26巻は保管してあります」

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「腑に落ちる」まで考え抜いた家康に学ぶ
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