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うどん、そばなど多くの和食に麺つゆが大活躍

麺つゆで楽できたはずの時間は、どこへ行ってしまったのか。ともかく当時の昭和ヒトケタには悪気はなかったし、母も「市販品なんか使っちゃって申し訳ない」というスタンスだった。「今はそんな時代ではない」と言いたいところだが、「麺つゆを使うような女性とは~」という発想がSNSのタイムラインに表示されるのを見る限り、まだ呪いは完全に解けてはいないのだろう。

そういう私自身も、長い間「麺つゆの呪い」にかかっていたクチだ。なまじ料理が好きで、できるばかりに「こんなものを使うわけにはいかない、プライドが許さない」と頑なに拒否していたのだ。あんなものを使ったら、料理が全部麺つゆの平坦で均一な味になる。それにうま味調味料も使いすぎではないか。麺つゆに繊細な料理など作れるはずがない。ダサい料理にしかならない、と信じていたのだ。

市販の麺つゆを買いたくないあまりに、自分で瓶に昆布やカツオブシ、しょうゆにミリンに日本酒などを合わせた自家製麺つゆを常備していたときもあった。しょうゆの種類や、甘みの量を変えたものを何種類も作っては冷蔵庫に貯蔵し、ご満悦だった時代もあった。麺つゆを否定しながら、麺つゆを作ることに夢中になっていたのだ。バカだなあ。市販の中から好みのものを探す方がずっと簡単だったのに。

麺つゆ製品は種類も豊富

私と同じ呪いにかかっている人は、どうかプライドと偏見を捨て去って麺つゆを試してみてほしい。麺つゆの進化はすさまじい。参入するメーカーが増え、ひとつのメーカーで作る種類が増え、次々と新しい麺つゆが生まれている。どんなジャンルでも、人気のあるコンテンツは急激に進化する。「こんなものまであるのか!?」と、麺つゆの世界の広さに驚くことだろう。

根底に流れる「だしのきいた甘じょっぱいしょうゆ味」という概念は同じでも、メーカーにより、商品により、材料も味わいも違う。特に地方のメーカーは自ずとその土地の好みにあったものを作るため、カツオブシではなくアゴだしだったり、白だしの種類がやたら多かったり、しっかりした甘味を売りにするものが多かったりと、郷土の味がどういうものかをほうふつさせる仕組みになっている。そう、麺つゆとは決して均一の平坦なものではない。十把ひとからげにしてはいけないものなのだ。

メーカーの人はどうか、お試ししやすいように100ミリリットル以下のミニボトルを作ってもらえないだろうか。私はもっとほかの商品も試したい。どこかに今よりもっと気に入る麺つゆがあるに違いないと信じているのだ。通常より割高で構わない。割高が5本セットでさらに割高になろうが、構わない。どこかで試食するのではなく、いつものキッチンでいつもの料理に、2回くらい使ってみたいのだ。

ああ、どこかに麺つゆミュージアムがあったらなあ。全国の麺つゆミニボトルを集めた天国だ。外貨は稼げないかもしれないが、内需は天井知らず、しかも右肩上がりだ。お願い、えらい人、ミュージアム作って。

(食ライター じろまるいずみ)


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