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ピジョン 社員のライフイベントをハンディにしない

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日経DUAL

日経DUALの「共働き子育てしやすい企業グランプリ2017」で特別奨励賞に輝いたピジョン。「社員を大切にする」という当たり前に見えて実現が容易ではない目標に、どのように取り組んできたのか、取締役専務執行役員の赤松栄治さんにお聞きした

◇  ◇  ◇

「社員が一番大切」と言い切る

「社員に気持ちよく働いてもらうことが何より大切。売り上げや利益はその結果としてついてくるものです」。育児・マタニティー用品の製造・販売などを手掛けるピジョンの取締役専務執行役員の赤松栄治さんは、そう言い切る。

「当然、お客様や株主様は大切ですが、歴代社長が常に内外で言ってきたのが、一番大切なのは社員だということです。社員が働きやすく、力を発揮できる環境を整えることが、ひいては会社の永続的な発展につながると考えています。社員の皆さんが働いてくれるから経営が成り立っているわけですし、その結果、株主様に配当することもできます」

言われてみれば当たり前のことだが、実際のところ、世の中には社員が軽んじられている企業は少なくない。その「当たり前」を、ピジョンは実直に行ってきた。それが端的に伝わるのが、社員の声をきっかけに作られる、数々の人事制度だ。「形だけで人事制度を作っても利用されなければ意味がありません。社員の現実の声があって、それを解決するために制度ができる。すべては社員に気持ちよく働いてもらうための『手段』なんです」

最初に「社員の声ありき」

社員の声から制度ができた一例が、不妊治療を受ける目的でつくられた、在籍中、通算24カ月間休職することができる「ライフ・デザイン休暇・休職」である。「『不妊治療に専念したい』と言って辞めた女性社員が過去に何人かいました。本当に申し訳ないことをしたと感じています」と赤松さんは振り返る。そうした事例が以後出ないよう、2015年にこの制度ができた。原則2回まで分割取得できる。さらに、不妊治療だけでなく、里親(養子縁組)希望の社員にも適用される柔軟さを備えている。

これらの制度を考える際に社員の声を聞く必要がある。とりわけ妊娠・出産に関する話は、聞きだすのが難しいだろう。ピジョンは、社員が大切にするべき「基本となる価値観」の一つに「コミュニケーション・納得・信頼」を掲げている。「『コミュニケーション・納得・信頼』は、4代目社長で現・代表取締役会長の大越昭夫がずっと使っていた言葉です。大越は今につながる人事制度の改革を行いました。上辺だけのコミュニケーションではなくて、納得して信頼する。この上司のためだから、この部下のためだから頑張る。このように『信頼する・信頼される』レベルの関係性を持って仕事しないと成果は出せないと考えています」

「コミュニケーション・納得・信頼」の考え方を含めた内容は、2014年に「Pigeon Way」としてまとめられた。歴代社長が大切にしてきたことを企業の指針として示し、国内外に関わらずグループ全社に浸透させている。社員は、仕事を通して「Pigeon Way」を具現化した経験を「Pigeon Way Story」としてまとめ、半年に1回提出する。その中で特に全社内で共有したい「Pigeon Way Story」を選ぶ選考会もあり、共有したいStoryは社内ポータルサイトでも公開される。

人事総務本部人事総務部人事グループマネージャーの若山直樹さんは、社内のコミュニケーションについてこう話してくれた。「事業内容が子育て関連なので、妊娠や出産という話題に対して、男女を問わず抵抗感がないのも、コミュニケーションがうまくいっている一つの要因かもしれません。ただ、信頼関係がなければ悩みを打ち明けようとは思えません。当社には、社員同士が本音でつき合える風土があるのは確かだと思います」。育児用品を扱う会社であるということを最大限に利用しつつ、「社員一人ひとりを大切にする」というトップダウンの姿勢が社内風土を醸成し、同社を「共働き子育てしやすい企業」にしている。

男女関係なく気持ちよく働けるように

数字や制度ありきではなく、社員を「個人」として見ていることが伝わってくる例がもう一つある。同社はその事業内容から、女性が多い企業のイメージがあるが、実は正社員では女性は3割しかいない。女性管理職比率は約15%。だが、女性管理職比率の目標数字を定めていない。

「正社員の男女構成比は7対3なので、将来的には女性管理職が同じように30%ぐらいでもおかしくないと思っています。でも、大事なのは数字ではなく、女性管理職を育てる仕組みをつくることです。目先の数字を上げるために女性だから登用するという考え方は、女性社員にも、降格されたり、昇格を阻まれたりするかもしれない男性社員にも失礼だと考えています」。赤松さんは力強く語る。

「女性には本当に活躍してほしい。女性のライフイベントがハンディにならないように、様々な手段を考えています。社員の皆さんが気持ちよく仕事をし、気持ちよく出産を迎えられる、気持ちよく復職できる、大事なのはそこです。育児はお母さんだけがするものではなく、当然お父さんもするものです。1人で育児をするのではなく、社員みんなが応援しているよ、という姿勢を会社として示すことも大切だと思います」

例えば、同社の代表的な制度に、「ひとつきいっしょ」という制度がある。男性社員は、子どもが1才6カ月になるまでの1カ月間を有給で休業することが可能。「男性も1カ月間育児に関わることで、育児の大変さを経験し、育児中の女性社員の大変さがより分かるようになってきました」と赤松さん。

「ひとつきいっしょ」でより強い会社に

なぜ「ひとつき」なのだろうか。制度の検討当時、育児中の女性社員から「1週間ぐらいでは、育児のつらさも楽しさも体験できない」と声が上がったことが決め手になったという。「やはり3日ぐらいでは分からないと思います。正直、1カ月でも足りないぐらいだとは思いますよ」と赤松さん。親しみやすい制度にするために、社員に公募をかけて名称を決めた。2006年の導入当初こそ取得率は30~40%だったが、その後は約25%にまで下降。現在の山下茂社長が「取得しない人がいる場合は、その理由を所属長から社長に報告すること」というルールを設け、トップダウンで本腰を入れた結果、2015年に取得率100%達成に至った。現在は取得するのが通例となっている。

この制度の運用で、副産物もあった。「1カ月間の不在中、誰かが仕事をカバーしないといけません。既に取得した先輩社員が、率先して後輩社員のフォローを希望する、などみんなで業務を助け合うようになり、そのために協力し合って業務の効率化を図る姿も見られます。『ひとつきいっしょ』がきっかけで、より良い、より強い会社になっています」

「育児レポート」という財産

「ひとつきいっしょ」の期間は、「休み」ではなく「仕事」であると社内で認識されている点も興味深い。育児用品を扱う企業として、「社員誰もが育児を語れる会社」にするための貴重な「研修期間」とも捉えられている。

育児体験を「仕事力」につなげるための象徴的な取り組みが、「育児レポート」である。育児レポートは、「ひとつきいっしょ」の取得の有無にかかわらず、1歳6カ月までの子どもを持つ男女社員全員に提出が義務付けられている。テーマや体裁は自由。自社製品を使ってみた感想や、保活や子育ての苦労話、現在の子育て環境が抱える問題点など、内容は多岐にわたる。

人事担当役員である赤松さんがすべて目を通し、目標管理制度の1項目として評価をする。「最初は公園で他のお母さん方から『奥さん出て行っちゃったのかな』という疑いの目で見られた、でも最後にはお母さん方と仲良くなって、『いい制度だね、いい会社だね』と言われるようになった――そのようなエピソードもレポートにありました。読んでいると場面が浮かび上がってきます。この体験は一人ひとりの仕事にも活かされ、会社にとっても大きな力となっています」。提出された育児レポートはポータルサイトに掲載され、他の社員が読むことも可能だ。書いた本人や家族にとっての大切な思い出になると同時に、この蓄積が企業の掛け替えのない財産にもなっている。

個人の生産性向上が大切

「私自身は1982年入社です。どの会社もそうだったと思いますが、いわゆる『24時間働けますか』の世代。実は子どもが小さい頃は子育てにはあまり関わってこれず、今思うと申し訳なかったです。当時と現在では、社員数は大きく変わっていないのですが、売り上げは単体で4倍ほどになっています。歴代社長は、従業員一人ひとりが生産性を高めることが大切だとずっと言ってきました」

勤務時間は厳しく管理されている。2008年から始めた「20時退出ルール」をさらに進めて現在は、管理職を含む全社員の19時以降の就労を原則禁止とする「19時退出ルール」を実施。業務の都合上、やむを得ず19時以降に働く必要がある場合は、当日17時までに各部門の本部長にその理由を説明し、承認を得なくてはならない。また、毎週水曜日を「ノー残業デー」と定め、1日の標準労働時間を越える就労は原則禁止している。

「仕事の生産性を上げて、その結果早く帰れるようになってほしいですし、仕事も家庭も充実させてほしい。余暇の時間を使って知識や教養を身に付けることは、会社にとっても大きな力になります」と赤松さん。「皆さんが時間を意識して働くようになりました。特にお子さんのお迎えがある社員は、とても効率よく働いています。周囲の社員も効率を上げなければ、と刺激を受けています。ただ、職務によっては残りがちな部署もあると聞いていますので、どのようにしたら社員がより効率的に仕事ができるかを考えていきたいです」

今後、グローバル市場で生き残るためには、一人ひとりの生産性の向上が大切、と赤松さんは強調する。ピジョンの市場は世界へ広がっている。現在、売り上げの50%以上は海外で、そのうち6割が中国という。「中国は、2002年に現地法人を設立して以来、成長しつづけています。一方、国内の出生数は1万人単位で毎年減っていますが、業績は好調に推移しています。インバウンド需要もありますが、社員の皆さんの地道な努力のおかげだと思っています」

また、同社の人事制度が世の中に知られるにつれ、新卒採用の応募者は増えているという。「入社してくださる優秀な社員には、ライフイベントで退職しなければならないというような申し訳ない結果にならないで、長く働いて能力を発揮してほしい。そのために社員が働きやすい制度を作って会社をよくしていきたいというのが経営陣の思いで、その思いをきちんと社員にも伝えています。この会社で働くことを誇りに思えるようにしたい。それを実現するための手段が、人事制度だと思っています」

(ライター 小林浩子)

[日経DUAL 2018年3月12日付記事を再構成]

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