2018/4/20

スポーツイノベーション

英国に、もっと勝率の高いショットはなかったのか。AIは50%という別の候補を示した。しかし複数の玉突きを利用する高度な技巧が求められ、選手らは「成功はとても難しい」とみている。この点が課題で、AIを現実に近づける改良が必要だ。

選手別の技量もまだ反映できない。個々の選手のショットの成功率を調べ、プログラムを修正するなどで性能を高めていく。

ラグビーでは、パスやランなどプレー内容を自動で仕分けする

試合で様々な情報を集め、膨大なデータを分析して競技の質を高め、作戦を立てる取り組みはスポーツで当たり前になった。データが多いほど最近のAIは威力を発揮する。例えばバレーボールでは、セッターのフォームを分析した例がある。正確なトスを上げるためどんなフォームにすればよいか。相手のセッターが上げるトスの場所を予測し、ブロックの確率を高めるなどの活用策があるという。

サッカーでは、ペナルティーキックの場面でキッカーの体勢を分析し、ゴールの左右どちらを狙っているのかを予想し、キーパーの守備に役立てる試みもある。

ラグビーでは、試合映像からパスやランなどのプレー内容を認識し、自動で仕分けるAIが登場した。慶応義塾大学の青木義満教授と東芝が共同で開発した。

試合の中でボールが連続して見えている場合は「パス」、ボールを持ったまま3メートル以上移動している場合は「ラン」、スクラムなどの選手が密集する場所にボールがある場合は「密集」と決めて、AIに多くの試合を学ばせた。その結果、3つのプレーを自動で判定できるようになり、トップリーグの強豪でもある東芝の試合で検証すると、7~8割の正確さで識別できた。

対戦相手の戦略を分析するとき、これまでは担当者が市販のソフトを使って過去の映像をプレー別に分けていた。AIはこの作業を自動化でき、人員を戦略の分析や立案に集中できる。青木教授は「ラグビーは大人数で密集するプレーが多く、画像の解析が難しかった。この技術はサッカーなど他の競技にも使える」と話す。日本で開催される19年のラグビー・ワールドカップで実用化を目指している。

AIの技術革新は急速だ。将棋や囲碁で人間が思いもつかない新手を発見したように、スポーツの分野でもAIが一石を投じる例が出てくるだろう。

(大越優樹、中島沙由香)

[日本経済新聞朝刊2018年4月8日付]