「理系のツッパリ」 ホストクラブで経営に目覚めるSmappa!Group会長の手塚マキ氏(上)

石川 ホストとして自信や誇りを持てるようになったのはいつごろですか。

手塚 そんなの最近まで持ってないですよ(笑)。若い頃は自分を成長させるためにいるだけで、「ここは自分の居場所じゃない」とずっと思ってきましたから。とにかく、この「不良の東大」みたいな場所でのし上がれば、どんな世界でも通用するだろうと。

若い従業員を抱える責任が自分を変えた

予防医学者の石川善樹氏

石川 ホストの世界でのし上がるとはどういうことでしょう。

手塚 やっぱり売り上げですね。それと知名度。いい接客をしたというお客さんからの評判は同業者の間にすぐ広まります。男同士の戦いというか、男が認めた男を女が認めるという世界ですね。今は少し変わってきていますが。

石川 のし上がっても、外の世界に戻ろうと思っていたのですか。

手塚 そうです。3~4年してそろそろ卒業しようかと思ったのですが、ホストの仕事に没頭しすぎていて、外の世界のことがまったく見えなくなっていました。就職活動といっても何をしていいかわからない。仕方ないので沢木耕太郎の『深夜特急』よろしく世界放浪しようかと考えていたところ、「お店をやらないか」と声をかけられたのです。これも自分の成長につながるチャンスかもしれない、ダメならやめればいい、と軽い気持ちで始めました。

ところが最初はうまくいきません。自己成長のためにやっていただけですから当然です。戦略もなければビジョンもない。ホストクラブが社会にとって必要なのかどうかも考えず、ただ「もっと稼げ」と言うだけですから、若いホストたちも付いてきませんでした。

ただ、ある時ふと、この子たちを抱えてしまった責任を感じてしまったんですね。家庭環境がよくない、あるいはちゃんとした教育が受けられなかった。この子たちをこのままホストとして働かせてよいのか。そこで初めて、自分自身が歌舞伎町という町で働くということに向き合いました。それが10年くらい前です。

石川 部下を持つということは、それだけの責任を負うということ。初めて経営者として目覚めたわけですね。それと、存在意義について考えることは、どの企業にとっても必要であり、その重要性はますます高まっているように思います。話を戻すと、10年ほど前から従業員への接し方はどう変わってきたのですか。

手塚 若い従業員には、もっと外の世界の人と交わろう、渡り合えるような人になろう、ということを伝えるようにしました。自分自身の反省でもあります。この世界にずっといられるとは限らない。外の世界に出たいと思ったとき、それなりに対応できる人間になってほしいと思ったのです。具体的には、マナー研修とか、ワインのソムリエ研修などを取り入れました。自分もソムリエの認定を取りました。歌舞伎町のゴミ拾いなどボランティア活動もやりました。

ホストはそもそも、人をもてなす仕事。お客さんが何を求めてお店に来るのか。泣きたいのか、笑いたいのか。人の心に寄り添える人間になってほしかったのです。

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