出世ナビ

キャリアの原点

69歳からの挑戦 遅咲き起業家が貫く「逆転の発想」 エリーパワーの吉田博一社長(上)

2018/4/10

吉田博一社長は元住友銀行(現三井住友銀行)の副頭取まで務めた後、電池メーカーを興した。

世の中にベンチャー企業は数多いが、燃えないリチウムイオン電池の開発・製造で注目を集める「エリーパワー」の吉田博一社長は69歳で起業した。300億円を超える資金調達に成功し、起業から10年余りで従業員数300人規模のメーカーに育てた。遅咲きのアントレプレナーが成功した要因を探ると、3つの「逆転の発想」が浮かび上がる。

逆転の発想(1)
「1日に90社を訪問すると決め、毎日、『預金してください』と頭を下げて回っていました。90件、すべて成功するわけはないんです。1件とれたらもうけもん。ここで『89件失敗した』と思うか、『1件成功した』と思うか。この違いは大きい」

銀行員と経営者に求められる資質には、おのずと違いがある。ましてや、吉田氏は副頭取まで務めた経歴の持ち主だ。「貸す」立場から「借りる」立場への切り替えは難しかったのではないかと聞くと、吉田氏は笑顔でこう答えた。

「頭を下げるのは平気になっちゃいました。役員時代のことはすっかり忘れた。セカンドキャリアを成功させるには、この『忘れる』能力が大事なんです」

忘れることを覚えた原点が、若き日の支店勤務時代、1日90社を自らノルマと課して歩き回った体験だ。

「失敗したことをいつまでも覚えていたら、翌日から動けなくなります。ベンチャーも同じ。うまくいったことを記憶して、失敗したことは忘れればいいんです」

1937年生まれの80歳。酸いも甘いもかみ分けた、熟練の新人経営者だ。

■現場に塩漬けで「辞めてやろう」と思ったことも

それにしても、1日に90社もの訪問先を回れるものなのだろうか。第一、アポイントメントを取るだけでもひと苦労ではないか。疑問をぶつけると、吉田氏は再び笑ってこう続けた。

「アポイントは取りません。当時の銀行員は名刺一つでどこでも訪問できた。エリアも限られていますから、ルートを決めてひたすらぐるぐる回ればいい。当時、僕は社長にしか会わないと決めていたんです。留守だったら、名刺だけ置いて帰ってくる。1カ月のうちに同じところを何回も訪問しますから、そのうちに名刺がたまっていく。それを訪問先の社長が見て、『今度、この吉田っていうのが来たら呼べ』と言ってくれるわけです」

規制金利の時代で、どこの銀行も金利は同じ。預金集めと貸付業務が支店営業の主な仕事というなか、売れる商品は「自分」しかないと思っていた。

出世ナビ 新着記事

ALL CHANNEL