人気の引き金は京老舗の緑茶 ネスレのティーマシン
ネスレ日本のティーマシン「SPECIAL.T(スペシャル.T)」の利用者が拡大している。これまでは30~40代の女性のユーザーが多かったが、60歳以上のシニア層のユーザーが増えているという。その背景を探った。
「日本人好み」の緑茶で売り上げが2倍に
スペシャル.Tは茶葉を封入した独自のカプセルを装填してお茶を抽出するマシン。ネスレ日本が展開する「ネスプレッソ」のお茶バージョンだ。ネスプレッソなどのコーヒーマシンと違う点は、茶葉に合わせて最適な抽出温度をマシンが自動で設定してくれること。紅茶なら高温で、日本茶なら比較的低い温度で抽出するという。2010年に欧米で発売後、2013年から日本でも展開。日本茶の製造販売を行う福寿園(京都府木津川市)と共同開発したカプセル「京の匠福寿園」シリーズを発売したところ、カプセルの売り上げが伸長。2017年の売り上げは2014年の約2倍になったという。
ネスレ日本によると、スペシャル.Tの利用シーンはオフィスが4割、家庭内が6割で、登録ユーザーの約8割が女性。ユーザーの中心は30~40代だ。同社は女性が好むお茶としてフレーバーティーに着目。お茶の専門店として全国160店舗以上を展開するルピシア(東京都渋谷区)に声をかけた。
ルピシアは紅茶だけでなくウーロン茶や日本茶、オリジナルのブレンドティーやフレーバーティーを自社工場で製造している。会員を対象に無料送付している情報誌の発行部数は月間36万部で、会員の約8割が女性だという。まさにスペシャル.Tのターゲットと合致しているというわけだ。2018年3月には、ルピシアと共同で開発した専用ティーカプセルの新シリーズ「SPECIAL.T blended by LUPICIA」を発売。紅茶やフレーバーティー、ハーブティーなど全6種類のカプセルを用意した。
湯を沸かさなくても済むという特徴から30~40代の女性以外にも開拓できたターゲットもある。60歳以上のシニア層だ。
「湯を沸かさない」ことでシニア市場も開拓
ネスレ日本 スペシャル.Tビジネス部の早坂由香利マネージャーは「『京の匠福寿園』シリーズをきっかけに、ユーザーの中心である30~40代の女性が自分の親にすすめることが増えている」と話す。高齢になると、湯を沸かすという行為が手間だけでなく困難に感じることもある。だが、火を使わずに電気ポットを使ってお茶をいれることもできる。スペシャル.Tをすすめる理由はどこにあるのか。それについて、同社のグンター スピース専務は「自分が飲んで、おいしいと感じたからではないか」と分析する。
スピース専務によると、コーヒーマシーン・ティーマシーンともにプレゼント需要も多いというが、「ネスプレッソなどはもともとコーヒーを親しんでいた人にプレゼントするという例が多い」(同氏)。エスプレッソを提供する店に行ったことがある人ならば「マシンがいれるコーヒー」に抵抗がある人も少ないだろう。しかし、お茶をマシンでいれるという認識はあまりない。そこで「飲んでみたらおいしかった」という体験が重要になるのかもしれない。
スピース専務は「マシンのメンテナンスのため、消費者と直接コミュニケーションを取る必要がある」とし、引き続き通販を中心に展開していくと話す。だが、今後は「体験の場も必要と考えている」(同氏)。無料の体験イベントを行うほか、店頭展開も視野にいれていくという。
(ライター 樋口可奈子)
[日経トレンディネット 2018年3月23日付の記事を再構成]
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