歴史が示す円高リスク ドル高論に落とし穴(藤田勉)一橋大学大学院特任教授

写真はイメージ=123RF
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「歴史の教訓によると、中長期的に円高のリスクが高まりつつあると考えられる」

「米国の金利が上がるので、ドル高になる」という為替の専門家が多い。2015年12月に米フェデラルファンド(FF)金利は0.1%だったが、米連邦準備理事会(FRB)の利上げにより、現在は1.7%に上昇した。しかし、この間、為替相場はドル高どころか、1ドル=120円台から106円台(18年4月3日時点)まで円高になった。ドル高論者は「米国金利上昇=ドル高」という見方がなぜ当たらなかったのか理解すべきである。

歴史の教訓によると、中長期的に円高のリスクが高まりつつあると考えられる。ドル高とはむしろ逆のシナリオだ。円高リスクを生じさせているのは以下の3点である。

第1に、長期ドル高の反動である。その国の通貨の実力を示すのが実効為替レートである。ドルの実効為替レート(貿易加重平均)は、11年の安値から17年の高値まで35%上昇していた。

為替は米金利上昇をすでに先取りしていた

つまり、相場は先読みして動くので、米国の金利が大きく上がることを想定し、早期にドル高になっていたのである。そして、17年初の実効為替レートは00年の史上最高値とほぼ同水準にまで達していた。

14年末時点で、米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーの17年末のFF金利の予想中央値は3.6%だったが、実際には1.7%にとどまった。要は、予想ほどは金利が上がらなかったのだ。よって、史上最高値水準まで上昇していたドルが、下落に転じたのは当然のことである。

第2に、米国経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)に大きな変化が生じた。トランプ米政権により17年末、史上最大規模の減税(総額1.5兆ドル)が決定された。国防費増など歳出削減が十分になされていないため、米国の財政収支は大きく悪化する見込みである。

米国の19年の財政赤字のGDP比(国際通貨基金=IMF予想)は4.0%(18年予想比0.3ポイント増)と、日本の2.9%(同0.4ポイント減)、ユーロ圏の0.7%(同0.3ポイント減)を大きく上回る見込みである。さらに、米国の18年の経常収支のGDP比(IMF予想)は2.6%の赤字と、日本の3.8%の黒字、ユーロ圏の3.0%の黒字と比較すると、著しく悪化している。このように、米国は経常収支と財政収支の赤字である「双子の赤字」が拡大していく状況にある。

歴代の共和党政権は長期ドル安になりやすい

歴代、大企業や富裕層の支持を受ける共和党政権はレーガン政権(1981~89年)、ブッシュ政権(2001~09年)と、いずれも大減税を実施した。その結果、現在と同様、双子の赤字が大きく拡大した。

そして、歴史的に双子の赤字は長期ドル安要因となった。レーガン政権では、1985年のプラザ合意をはさんで、82年の1ドル=278円台から88年の121円台まで、ブッシュ政権では2002年の135円台から08年の87円台まで、それぞれ長期の円高になった。

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