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ハーピスト吉野直子が紡ぐフランス近代音楽

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ハープ奏者の吉野直子さんが3月、フランス音楽に特化した演奏会を開いた。ドビュッシー没後100周年の今年、フォーレ作品の独奏を交えながらフランス近現代音楽の魅力を語る。2015年のデビュー30周年を機に自主レーベルのCD制作に注力している理由も聞いた。

3月9日、フランス印象主義音楽の開祖クロード・ドビュッシー(1862~1918年)の名曲「アラベスク第1番」が東京・銀座のヤマハホールで奏でられた。比較的小規模な同ホールがアラベスク(アラビア風唐草模様)の夢幻のイメージに包まれる。原曲はピアノ作品だが、この夜のステージは様相が異なる。ピアノよりも柔らかくしなやかな音が紡ぎ出される。吉野さんがハープを独奏しているのだ。

フランスのハーピスト兼作曲家ルニエの孫弟子

「吉野直子の室内楽~ハープで織り成す近現代フランス音楽の世界」と題された演奏会。ドビュッシー没後100周年にふさわしくその冒頭を飾った「アラベスク」は、フランスの女性ハープ奏者で作曲家のアンリエット・ルニエ(1875~1956年)の編曲による。「私はルニエの孫弟子」と吉野さんは言う。彼女が米ロサンゼルスで幼少時から師事したスーザン・マクドナルド氏はルニエの弟子だ。「ハープを熟知している名手が名曲を残している。特にルニエはオーケストラが鳴っているようなスケールの大きいハープの曲を書いた。私が大切にしている作曲家だ」と話す。

演奏会では続いてフランス近代音楽を代表するガブリエル・フォーレ(1845~1924年)の「即興曲変ニ長調作品86」を吉野さんが独奏した。フォーレが書いたハープ独奏曲2曲のうちの一つ。「ハーピストなら誰でも弾く名曲。ハープは華やかで優雅なイメージがあると思うが、それだけではない。強さや繊細さなどいろんな音の世界を持っている。そうした豊かな音色を1曲ですべて表現している優れた曲。私も10代初めからずっと弾いてきた」と絶賛する。今回の映像では3月8日の同ホールでのリハーサルで吉野さんがこの曲を練習する様子を捉えている。

9日の演奏会は他のメンバーとのフランス室内楽の共演へと進んでいった。吉野さんが長年共演してきたビオラの川本嘉子さん、フルートの佐久間由美子さんの2人に加え、バイオリンの成田達輝さんと小川響子さん、チェロの伊東裕さん、クラリネットの吉田誠さんの若手4人。6人とも「今まさに素晴らしい活躍をしている演奏家ばかり」と言う豪華な顔ぶれだ。

 粋な雰囲気を醸し出していたのは吉野さんと吉田さんのハープとクラリネットによるデュオ。五重奏曲の合間に間奏曲風に入るアンドレ・メサジェ(1853~1929年)やガブリエル・ピエルネ(1863~1937年)の小品は、クラリネットの快活さとハープの優雅さが相まって、小じゃれた遊び心のフランス風を聴かせた。

フランスで発達し優れた演奏家を生んだハープ

圧巻は7人全員による最後のモーリス・ラヴェル(1875~1937年)作曲「序奏とアレグロ」。舞台中央の吉野さんを6人がぐるりと取り巻いて、様々な色彩の楽器をハープの響きに絡ませる。「ハープは奏者1人で成り立つ点がピアノと似ている。でも室内楽ではハープが旋律を弾いてリードする時もあれば、他の楽器を伴奏風に支えることもある。その使い分けが室内楽の醍醐味」と吉野さんは説明する。「序奏とアレグロ」ではハープの旋律弾きやアルペジオ(分散和音)、グリッサンド(音の高低を隙間なく滑らかに鳴らす奏法)が他の楽器とのアンサンブルの中で様々に登場し、華やかに演奏会を締めくくった。

「ハープとフランスは関係が深い」と吉野さんは言う。「マリー・アントワネットはハープを弾いていた。モーツァルトはフランス貴族の親子のために『フルートとハープのための協奏曲』を作曲した。フランスの上流階級のサロンで演奏するのに雰囲気が合っていた」。ハープが現在の3段階ペダルのダブルアクション型になったのは1811年ごろという。ハープはフランスで発達し、優れた演奏家も生まれた。「フォーレ、ドビュッシー、ラヴェルにはハープの名曲があり、演奏の機会も多い。フランスの作曲家が書きたい音楽の響きにハープは合っていた」と解説する。

吉野さんは1981年の第1回ローマ国際ハープコンクールで第2位、85年の第9回イスラエル国際ハープコンクールで優勝と輝かしい受賞歴を持つ。音大には進まず、国際基督教大学で美術史を専攻し卒業した異色の演奏家だ。ソロ中心の音楽活動を続けてきたが、「自分にとって室内楽はすごく大事」と位置付ける。一方で「オーケストラに所属したことがない」ため、交響曲や管弦楽曲を演奏するのはまれだが、クラウディオ・アバド氏(1933~2014年)指揮のルツェルン祝祭管弦楽団や小澤征爾氏指揮のサイトウ・キネン・オーケストラなど著名な楽団に参加した実績がある。

 オーケストラでは「ハープは色合いを出す」と言う。「響きが豊かでポリフォニック(多声的)なので、和音や和声が変わった時に色を出せる。逆に単音も弾けるので、打楽器と一緒にリズムを作ったり、弦楽器と一緒に旋律を歌ったりもできる」と万能ぶりを説明する。具体的には「マーラーの交響曲はハープを効果的に使っている」と説明する。

自主レーベル最新盤はドイツ・オーストリア音楽

例えば吉野さんがアバド氏指揮のルツェルン祝祭管弦楽団に参加して弾いたマーラーの「交響曲第3番ニ短調」。第1楽章の長大な行進曲が最高度に盛り上がる終結部で、低音から高音へと駆け上がるハープのダイナミックなグリッサンドが登場する。第2楽章「テンポ・ディ・メヌエット」でも拍子が変わる中間部でハープが印象的なリズムを刻む。マーラーの交響曲ではほかにも「第5番」第4楽章「アダージェット」でのアルペジオ、「第7番」第1楽章展開部での場面転換、「第9番」第1楽章の冒頭など、ハープが活躍する箇所を挙げれば切りがないほどだ。

楽器と同様にソロ、室内楽、オーケストラというオールラウンドの活躍をしてきた吉野さんは2015年にデビュー30周年を迎えた。それを機に始めたのが自主レーベル「grazioso(グラツィオーソ)」によるCDのレコーディング制作だ。「選曲もブックレットの文章の執筆も自分で担当し、デザインも考える。自分で全部聴いて、採用するテークも決める。そうすると自分が今までやってきたことが客観的に見えてくる」と意義を説明する。

最新盤は2月10日に出た自主レーベル第3弾「ハープ・リサイタル3~バッハ・モーツァルト・シューベルト・ブラームス」。「フランス音楽の話をしておきながら、最新CDはドイツとオーストリアの作品ばかり」と言って笑う。「今回はハープのオリジナル曲ではない曲を集めた。特にバッハの『シャコンヌ』(『無伴奏バイオリンのためのパルティータ第2番』の第5曲)をどうしても入れたかった」。年1枚のペースで「まだ何枚か予定している。次は現代曲を考えている」。自主レーベルCDの制作を通じて自分がどんな方向に行くべきか、「次の道も見えてくる」と話す。

ピアノに比べるとレパートリーが少ないハープ。コンサートの数も少ないが、現代の作曲家への作品の委嘱も含め、「ハープの新しい世界を広げていきたい」と今後の抱負を語る。フランスを中心に演奏家と作曲家が協業してつくり上げてきたハープの世界。円熟味を見せるハーピストは楽器の固定観念を打ち破り、新たな面を引き出す機会を求めている。

(映像報道部シニア・エディター 池上輝彦)

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