「2つ目の原因は、買収を計画する人と、買収後の統合を進める人が違うことです。これは絶対に失敗します。計画をする側の役員が、中国でインターネットのビジネスを展開したいからと市場を調査し、目的を設定したとしましょう。そこで数社見つけて、順番に問い合わせたら条件に合う会社が見つかったとします。そこで『じゃあ○○さん、お願いします』と別の担当者にバトンを渡すというようなケースです」

「海外企業のM&Aでは、コミットメントが非常に重要」と話す池内氏

「こういうやり方は、結構一般的だと思います。しかし、M&Aを計画する段階で役員クラスの人が『M&Aでこういう目的を実現したい。そのために自分が責任を持ってやりたい』と決意し、やり切らなければなりません。最初から自分が責任者なら、言い訳もしないでしょう。特に海外企業のM&Aでは、こういうコミットメントが非常に重要です。M&Aの後の統合は海外企業の方が難しいからです」

――多くの企業には、M&Aを担当する部署があります。

「彼らが市場を調査したり、対象企業のデューデリジェンス(資産査定)をしたりするのはいいんです。しかし、先ほども言いましたが、実際に計画を立て、交渉し、買収後に経営するのは、同じ人がやり切るという姿勢が重要です。これは相手がヨーロッパでもアフリカでも同じです」

――インディードの場合はどうだったのですか。

「当時、執行役員になったばかりの出木場久征が、インディードを見つけて『すばらしい』と思ったそうです。取締役会議で反対されましたが、なんとか通した。彼は、今もインディードの最高経営責任者(CEO)をやっています。そういう熱意が、インディードがうまくいった大きな原因だと思います」

「自分のお金を投資する」覚悟で

――買収には覚悟が必要ということですね。

「自分のお金で会社を買うと考えてみてほしいんです。『自分のお金でこの会社を1800億円で買いますか』という質問に、答えを出さなければいけない。うまくいかなかったら、お金をドブに捨てることになる。1800億円だとリアリティーないから、1800万円でもいいですが、自分の金で投資してリターンを得られるかどうか。そういう感覚を持っていない人はやめたほうがいい」

「『自分のお金で』と思えば、最初の交渉から顔つきだって違うはずです。そんな金額だったら乗れない、交渉が決裂しても構わないと思う局面も出てくるでしょうし、相手に無理な要求もするでしょう。かなりもめるはずです。サラリーマンとしての『役割』『機能』で考えたら、最終的な目的は『買うこと』になってしまいます。そうなれば、もともと微妙なラインの判断なのだから、グレーなものを白や黒にしたり、調べていくと黒になったりするものを白にしたりすることになりがちです」

「しかし、そうやって譲歩して、買収交渉がまとまっても、その後の統合が破綻するんです。不確実性をゼロにすることは難しい。経営側にも失敗を許容する覚悟はあるでしょうが、自分が決めたことなら、なんとか努力するでしょう。先頭に立つ担当者には、100%の『当事者意識』、コミットメントが必要なんです」

池内省五
 1988年リクルート入社。人事部、経営企画室などを経て、05年執行役員、12年取締役。13年常務執行役員就任。14年、リクルートUSA代表。16年に専務執行役員に就任、経営企画や人事を担当。

(松本千恵)