会社の風土やマネジメントポリシーで、昔からそうだったという企業もあれば、離職課題が明確になったのちに、課題を乗り越えるために努力をして風土を変えてきた企業もあります。そういう企業には、

(1)従業員一人一人が尊重され、その人の強みに期待されている
(2)スキルアップや成長を実感できるシステムがある
(3)入社前に想定していた魅力と現実のギャップが少ない
(4)職場の人間関係が安定していてストレスが少ない
(5)努力や結果がしっかり評価され、課題も率直に指摘される

といった傾向があります。

定着率の質が高い企業は、人間がやりがいを感じるメカニズムに着目して、個々人の能力を生かせる体制の構築に成功しています。特に、上記のような傾向をもとに、多くの従業員が高い当事者意識を持っているとしたら、これほど強い組織はないでしょう。

企業との「価値観」の相性を調べ尽くす

2年前に転職のお手伝いした30代後半の方は、長く広告代理店の営業として働いていましたが、少し異色の転職理由を持っていました。勤務先の会社は、半年前に入社したばかり。もともと前職時代から憧れていた会社だったということでした。初めての転職で望んでいた仕事に就くことができ、自分が希望していた以上の年収も得られたそうです。

素晴らしく恵まれた環境にしか見えませんでしたが、その方は本当に落ち込んで憔悴(しょうすい)しきった状況で、「一刻も早く転職したい。転職先が決まらないまま先に退職することも考えている」ということでした。理由は、顧客対応についての考え方が、会社と自分とで180度異なり、まったくすり合わなかったこと。

単に上司との相性ということではなく、顧客を回転させて生産性を高める全社的な方針と、1社1社の顧客と深く向き合い、結果的に取引額を高めていくというその方が信じているスタイルがかみ合わず、たった半年で精神的にも参ってしまうほどの重大な事態になってしまいました。

「仕事の進め方にそこまでこだわるのか」と思われるかもしれませんが、この方は、自分が信じているポリシーを変えてまで会社に合わせることはできないタイプでした。能力も実績もお持ちだったので、無事、価値観の近い企業に転職されました。前職とは比べられないほど小さな会社でしたが、とても満足度が高く、現在もその企業で大活躍しておられます。

仕事に対して自分自身が持っている価値観を意識しておらず、いざ転職してから違和感を覚える方はたくさんいます。キャリアの遠回りをしないように、転職活動を始める際には、仕事内容や年収などのハード情報だけではなく、まず自分が大切にしている価値観の有無を明確にしましょう。もし重視する価値観があるのであれば、「転職先の企業の考え方とマッチしそうか」ということや、自分自身の価値観が言語化できない場合でも、「その企業の理念、ビジョンに自分が腹の底から共感できるか」という点は、必ず押さえていただければと思います。

※「次世代リーダーの転職学」は金曜更新です。この連載は3人が交代で執筆します。

黒田真行
 
ルーセントドアーズ代表取締役。日本初の35歳以上専門の転職支援サービス「Career Release40」を運営。1989年リクルート入社。2006~13年まで転職サイト「リクナビNEXT」編集長。14年ルーセントドアーズを設立。著書に本連載を書籍化した「転職に向いている人 転職してはいけない人」(【関連情報】参照)など。「Career Release40」http://lucentdoors.co.jp/cr40/

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