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「データ分析が新技生む」 体操革命、具志堅氏の予言 体の動きに加え、呼吸や鉄棒のしなりも目安に

2018/4/18

「もうひとつがルールです。我々のころ、技の難度はABCの3つの区分しかありませんでした。それが今はCDEFGHIまであります。技はどんどん進化していて、Iという最も難しいとされる技で良い演技をすると、高得点がとれます。そういうルールにのっとって、選手はより難しい技に挑戦しようと練習しています」

「体操競技は機械器具が引っ張り、ルールが引っ張ってきました。テクノロジーは3つ目の要素になるのではないでしょうか」

かつては8ミリビデオを逆に再生して新技がひらめくことも多かったという(具志堅幸司氏の現役時代、1983年撮影)=本人提供

――今後、具体的にどのような発展が考えられますか。

「新しい技が生まれてくると思います。選手は(データによって)自分のやっていることが正確に見えるわけです。選手自らコーチになって、今の動きはこうすればできるんじゃないかと分析できます。それをもとに、また演技して(データを)分析する。その分析もテクノロジーの力を借りることができます」

「昔は8ミリビデオをよく使っていました。自分で撮って、現像に出して、壁に映し出す。逆に再生することもできて、そうしているうちに『これ、できそうじゃないか』となって、新しい技に発展していく。そうして生まれた技が、いくつもあります」

■感覚、コーチ、データは三位一体

――8ミリビデオの逆回しから、ひらめきが生まれるというのは驚きです。選手は自分の感覚が頼りだったんですね。

「その感覚は今も必要ですが、それにプラスして、コーチからの助言とテクノロジーからの提案の三位一体がこれからは重要です」

「データはだれのものかという議論も出てくるかもしれない」と語る具志堅氏

――テクノロジーを駆使すれば、失敗やけがを防ぐことも可能ではないですか。

「(選手に)今までと違う力みがあると駄目ですね。僕が着目しているのは呼吸です。現役のときは意識していなくて、引退後にビデオを見て分かったのですが、僕は吸っているときにだいたい失敗しています。どこで吸って、どこで吐くか。今の選手もあまり意識していないのではないですか。呼吸が安定するということは演技が楽になります。逆に緊張したり動揺したりすると呼吸が不安定になって、演技も不安定になります。そういう分析もできるかもわかりません」

――センサーで呼吸を読み取って、そのリズムを本番でも守れば、失敗を防げるかもしれませんね。ほかにも、いい演技をするために目安になるデータはありますか。

「鉄棒のバーのしなりですね。思い切って演技すると、かなりしなります。逆に試合で大事にいかなければいけないと思うと、思いきりがないために、しなりが小さくなるかもしれません。たとえば(体が)バーの頂点にいったときに、練習ではバーの高さより50センチ高いけれど、試合では5センチ低かったとか。逆に思い切っていきすぎて60センチまでいっちゃったとか。そうすると高さが違って失敗につながることも考えられます」

――そうしたテクノロジーの発達は、町の体操教室にも恩恵は及びますか。

「選手にコーチが必要なように、テクノロジーも必須条件になってくるのではないでしょうか。スポーツ界にとっては、(テクノロジーに)使われたらいけないんでしょうけどね」

■データはだれのものか

――コーチも、うかうかしていられませんね。将来、機械にとってかわられる可能性はありませんか。

「やはり、人間の見る目は必要です。それは機械ではできません。たとえば、(リオデジャネイロ五輪で団体総合金メダルの)山室光史選手と内村航平選手が同じ学年にいて、同じ技を教えるのに、内村選手に言うことと山室選手に言うことは違いますよね。人に寄り添って、助言していけるというのがコーチだと思います」

――寄り添ってというのは、心理的なことですか。肉体的なことですか。

「それらを含めて。(指導されたときの選手の)反応も違いますよね。機械は数字は出せても、なかなかそこまではできません。もし将来、機械が(選手の)感情まで検知できるようになれば、機械も必要になるかもしれません。そうなるとコーチが要るのか、要らないのかという議論に発展する可能性はあります。『いいコーチを連れてきたよ』『どこのメーカー?』なんてね(笑)」

――選手にとっても、秘密にしておきたいデータもあるでしょう。「データがだれのものか」という問題は出てきませんか。

「出てくるでしょうね。選手の立場からは、隠しておいてほしいものもあるかもしれません。倫理的な問題も絡むので難しいですね。もっとも(選手のデータが)オープンになったからといって、(別の選手に同じことが)できるかは別問題です」

――実際に、そうした議論は出てきているのですか。

「まだないですね。対症療法ですから。(問題が)出てきたときに、どうしようかとなるのではないですか」

(聞き手は高橋圭介、山根昭)

具志堅幸司
1956年大阪府生まれ。79年日体大体育卒。84年ロサンゼルス五輪に出場し、個人総合とつり輪で金メダルを獲得。現役引退後は日本体操協会男子強化本部長などを務め、多くのトップアスリートを育成した。2013年4月から日本体操協会副会長。日体大では体育学部長、副学長などを歴任し、17年4月から学長。

日経からのお知らせ 日本経済新聞社は4月23日、2020年東京五輪・パラリンピックの成功を支える科学技術をテーマにした第3回日経2020フォーラム「テクノロジーが彩る2020年のニッポン」を開催しました。JXTGエネルギーの杉森務社長、富士通の山本正已会長が基調講演したほか、日本体育大学の具志堅幸司学長、元バレーボール選手の大林素子氏らによるパネル討論「スポーツと技術が紡ぐ未来」も実施しました。同フォーラムの模様は日経の映像コンテンツサイト「日経チャンネル」で、ご覧いただけます。

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