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アカデミー賞アニメで注目 メキシコのソウルフード

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NIKKEI STYLE

今年3月4日、米映画界最大の祭典、米アカデミー賞の受賞作品が発表された。長編アニメーション賞に加え、主題歌賞も受賞したのは、ディズニー/ピクサー映画「リメンバー・ミー」。メキシコのお盆「死者の日」の少年の冒険を描いた作品で、日本でもヒット中だ。

映画の冒頭では少年の祖母が、お皿に山盛りにしたメキシコのソウルフード、タマレス(複数形。単数形ではタマル)を「たんとお食べ」と食卓に出す。トウモロコシの原産地メキシコでは、この穀物が主食。タマレスはトウモロコシの粉で作った生地を主にその皮で包んで蒸したメキシコ版ちまきだ。

「包んだもの」という意味で、11月初めの「死者の日」をはじめお祭りの時に特によく食べるもので、「タマレスの日」と呼ばれるお祭りまである。2月2日のキリスト教の祝日・聖燭祭(せいしょくさい)だ。

メキシコ料理というと、日本ではトウモロコシの生地を揚げたタコシェルにサルサ(メキシコのソースの一種)やひき肉、溶けるチーズなどを盛ったタコスや、小麦粉を使った薄焼きパン、トルティーヤで具材を包んだブリトーを思い浮かべる人が多いと思うが、これらはメキシコ料理ではなくテクスメクスと呼ばれるメキシコ風米国料理で本場にはない。

実は、メキシコは2010年にその伝統料理がフランス料理や地中海料理と共に、料理としては初めて世界無形文化遺産に登録されたほどの国。トウモロコシのほか、トウガラシ、インゲンマメ、アボカド、カボチャ、カカオなど今では世界中で人気が高い食材の原産国で、マヤやアステカをはじめとする高度な文明が栄えてきた。

今なお古代からの料理が受け継がれていて、その一つがタマレスなのだ。なんと、紀元前5000~8000年よりその原型があったと言われる料理である。

メキシコの主食の基本となる食材は、乾燥させた甘味の少ない白いトウモロコシを石灰水でゆでてから粉状にしたものから作るマサという生地。メキシコのトルティーヤはテクスメクスとは異なりマサを薄く円形に伸ばしたパンだが、タマレスはこれをラード(豚脂)などと練り合わせて作る。

かつては、狩人や旅人などが持ち運ぶ携帯食として重宝されたらしい。なお、タマレスにラードを使うのは16世紀にこの地を植民地化したスペインの影響。家畜として豚をメキシコにもたらしたからだ。

このタマレス、家庭料理の定番かと思いきや手間がかかる料理だからだろうか。大方、屋台で買うものだという。教えてくれたのはメキシコ観光局の志田朝美さん。「メキシコには新鮮な野菜や果物をその場で絞るフレッシュジュースの屋台があるんですが、それとタマレスを一緒に食べるのが大のお気に入りでした」と満面の笑みを浮かべる。

「朝ごはんとして食べることが多いんですが、私は早起きが苦手で。愛用していたのは、やはりポピュラーな夜食の屋台。店によると思いますが、よく行った屋台は店開きが夜の9時ぐらいで夜中までやっていましたね」

屋台に置かれているのは大きな寸胴鍋。これでタマレスを蒸し上げるのだ。「鍋の中が区切られていたりして、大抵何種類かのタマレスを売っているんです」。首都のメキシコシティに住んでいた志田さんがよく見かけたのは、サルサベルデという緑トマト(実際にはトマトではなくホオズキ属の野菜)を使ったソースと肉をマサで包んだもの、赤いトマトのサルサ、サルサロハと肉を包んだものや、モレというチョコレートソースを生地に練り込んだタマレスだった(モレとは元来ソースの一種で色々な種類があるのだが、特に有名なのがモレ・ポブラーノというチョコレートソースなのだ)。肉は鶏、豚が定番の材料だという。

「タマレスは普通、トウモロコシの皮で包んで蒸しますが、地域によって違うタイプがあるんです。私が好きなのは南部のオアハカ州のもの。ここではタマレスを包むのに使うのはバナナの葉。メキシコシティでもオアハカタイプのタマレスはよく売っていて、本当においしいんです」と志田さんは言いながら、「想像しただけでヨダレがでそう」と急いで口元を手で隠した。

先住民が多く暮し多彩な文化を持つオアハカは、グルメ都市として有名で「メキシコの食通はみんなオアハカを目指すんです」と志田さん。この地方にしかない食材も多く、薫製にした独特の風味を持つトウガラシはその一つ。また、日本でポピュラーな「裂けるチーズ」はオアハカ名物のチーズ、ケソオアハカが原型。スティック状の日本版とは異なり、本場のチーズは極太糸を巻いた毛糸玉のような形だ。

タマレスはパッケージに入ったものをスーパーなどでも売っていると言い、志田さんは現地の人気メーカー、ラ・コステーニャのタマレスをお土産にくれた。電子レンジでチンと温めるタイプのものだ。チョコレートソースのモレ味で、パッケージを開けると目に入ったのはテラテラと脂が光るタマレスの表面。

ラードを使うため高カロリー食だと聞いていたが、脂をたっぷり使っているのだろう。温めてみると生地はしっとりもっちり。カカオとトウモロコシが混ざった不思議な香りが立ち上ったが、甘味はなくピリッとしたトウガラシの辛さが舌をつく。中には肉も入っていて、これがカカオの風味とよく合ってなかなかおいしい。

さらに本格的なタマレスを求めて、『メキシコ料理大全』(誠文堂新光社)の著者である東京・広尾のメキシコ料理店「サルシータ」のシェフ、森山光司さんを訪ねた。東京でタコスを出すレストランは多いが、タマレスを食べられる店は限られている。しかも、「サルシータ」のメニューには、バナナの葉で包んだタマレスがあった。

「植生の影響だと思いますが、バナナの葉は、オアハカだけでなくユカタン半島を含むメキシコ南部全体のタマレスに使われています。国全体ではトウモロコシの皮の方がポピュラーですけどね」と森山さんは説明してくれる。

森山さんは、定番メニューのバナナの葉で包んだ「豚肉と唐辛子のタマレス」のほか、菜の花を生地に練り込んだもの、トウモロコシの皮を使った鶏肉入りタマレスを用意してくれた。タマレスは多種多様で魚やイチゴを使った甘いものもあり、トウモロコシの葉でおにぎりのように三角に具材を包む地方もあるらしい。

森山さんが出合ったタマレスの中で最も印象深かったものの一つは、南部タバスコ州の緑のタマレス。チャヤという葉を生地に練り込んでいて青い、ハーブのような香りがしたという。「南部では、よくその土地ならではの緑の葉物を使ったタマレスを作ります。だから、日本なら菜の花かなと思って、この食材が手に入る間、季節のメニューとして出しているんです」

「タマレスのラードは、ホイップして使います。蒸し上げたとき、香りが豊かでふっくらした食感になるんですよ」。そんな森山さんの話を聞きながらタマレスを食べてみた。トウモロコシの皮で包まれたものが一番この穀物の味を濃く感じるかと思ったら、意外にもこれを強く感じたのは菜の花のタマレス。

菜の花の青い風味がトウモロコシの味も引き立てている。通常タマレスに使うラードではなくナタネ油を用いていたため、よけいそれぞれの香りも風味も口の中で強く広がっていくようで、ちょっと草もちを彷彿(ほうふつ)させた。

一方、豚肉のタマレスはしっかりコクのある味わい。生地には自家製ラードを使い、うま味の強いトウガラシと一緒に煮た肉がふっくらとした生地に入っていた。肉はしっとり軟らかくほろほろとほぐれるほどで、トウガラシの強い辛みは感じない。「メキシコには様々なトウガラシがありますが、必ずしも辛いわけではありません。そもそもどんな味のトウガラシでも辛くするためではなく、うま味を加えるために使うんです」と森山さんは言う。

「サルシータ」には、タマレスと同じようにバナナの葉を使ったユカタン半島の名物料理コチニータピビルがあった。アチオテという木の実のペーストやオレンジ果汁でマリネした豚肉をバナナの葉で包んでオーブンで蒸し焼きにしたものだ。肉や紫タマネギのピクルス、ハバネロを使ったサルサをトルティーヤでくるんで食べるのだが、豚肉はあっさりしていて、添えられたライムをきゅっと絞るとボリュームのある肉料理であるにもかかわらず、さっとお腹に収まった。

メキシコ観光局によれば日本からメキシコへの渡航客は昨年まで6年連続で2ケタの伸びをみせ、直行便の増便により2017年には前年比13.6%と大きく伸長、15万人を超えた。「イギリスの出版社が毎年発表する『世界のベストレストラン50』の上位にもメキシコのレストランが入るようになって、グルメ国としても訪れる人の心をつかんでいるんです」と志田さんは言う。これからは、テクスメクスばかりでなく豊かな歴史を背景に持つ本場メキシコの料理も、もっと日本で広く知られるようになるに違いない。

(フリーライター メレンダ千春)

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