エイリアン? 謎のミイラの正体が判明、遺伝子が変異

日経ナショナル ジオグラフィック社

一方、科学により新事実が明らかになっても、アタを地球外生命体と信じる人々は考えを変えようとしない。グリア氏はこの研究のことを知っているが、「正体はわかりませんが、ヒトでないことは明らかです」と言う。

アタの身長はヒトの胎児ほどしかない。しかし、画像を分析したX線技師は、アタの骨は6歳児並みに成熟していると言う(PHOTOGRAPH BY EMERY SMITH)

けれども科学者たちは、今回の分析をもって、アタをめぐる議論は終わりにするべきだと考えている。

「エイリアン騒動は、マスコミの注意を引くための愚かな疑似科学でした」。古人類学者で解剖学者でもある米ストーニーブルック大学医療センターのウィリアム・ジャンガーズ名誉教授は、このように批判する。「今回の論文により、彼らのナンセンスな主張とかわいそうな小さなアタを眠りにつかせることができます」

アタを含め、すべてのヒトの遺伝子には多くの変異が生じうる。けれども通常、子どもの病気を引き起こす変異は1つだけだ。7つもの変異が関与することは「ほとんど聞いたことがありません」とサウジアラビア、ファイサル国王専門病院・研究センターの遺伝学者ファウザン・アルクラヤ氏は言う。同氏は、アタの成長に異常を引き起こした変異は1つか多くても2つだろうと考えている。

ノーラン氏の意見は違う。「このかわいそうな子どもには7つの不運が重なったのです」

どの遺伝子が影響したかは謎のまま

アタの遺伝子変異のどれが症状を引き起こしたかを明らかにするのは、不可能ではないにしても非常に難しいだろう。アタの親族についての情報が全くないからだ。例えば、アタの両親のDNAがあれば、アタの変異が母親や父親にもあるかどうかを確認することができる。両親のDNAにも同じ変異があった場合でも、それは何も引き起こさなかったかもしれない。アタとは違い、両親は子どもを産める年齢まで生きられたからだ。

ノーラン氏は、アタの両親について何もわからなかったとしても、彼女が死亡したときに彼女を愛しく思ってくれる人がいたと考えている。彼女の遺体は革の袋に入れられ、そっと地面に寝かせてあったからだ。「彼らはアタをその辺に捨てたりしませんでした。自分たちの子として、大切に思っていたのです」

ジャンガーズ氏と同様、ノーラン氏も、アタが再びチリで眠りにつけるようになることを願っている。

「人間の遺体を売買したり、金儲けのためにエイリアンの遺体だと主張したりするべきではありません」

(文 Erika Check Hayden、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2018年3月23日付]

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