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男性差別は存在するのか 女性運動家が撮った現実

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NIKKEI STYLE

フェミニストの女性監督が男性差別の現実を撮ったドキュメンタリー映画『The Red Pill』(2016年、米国)が近く日本でも公開されます。男性差別は存在するのか、その実態は? 男性差別の研究者、久米泰介さんが解説します。

◇  ◇  ◇

これまで「男性差別」や「男性の権利」は社会的、学術的にほとんど相手にされてこなかった。世界のあらゆる社会は、男性が権力者で女性が被害者である「パトリアキー」の下に成り立っている、という前提があったのだ。

パトリアキーは日本語で「家父長制」と訳されたりするが、それだと「家制度」と関係あるようなイメージになってしまうので「男社会」と訳されることもある。「男が権力と利益を得て、女性が搾取される社会システム」のことだ。「政治家に男が多いのは、パトリアキーだからだ」というように使われる。

しかしこの前提に疑問を投げかける人々もいる。それがマスキュリスト(男性差別をなくして男女平等を目指す男性運動家)だ。パトリアキーは科学的データや実証に基づく客観的事実ではなく、あくまで仮説、思想だとする。もともとフェミニズム(女性の権利運動)は男性差別の是正に対しては関心がなく、学問や社会運動において男性差別を是正する動きもほとんどなかった。

その中でようやく、男性差別や男性の人権を正面から取り上げたドキュメンタリー映画が登場した。キャシー・ジェイ監督の『The Red Pill』である。タイトルのレッド・ピル(赤い薬)とは、映画『マトリックス』の有名なシーンから来ている。

『マトリックス』の序盤で、主人公のネオはサングラスをかけた男に「青い薬を飲むか、赤い薬を飲むか」の選択を迫られる。青い薬を飲めば、日常の(実は仮想現実の)世界に戻れる。赤い薬を飲めば、つらいけれども真実の世界を知ることができる。ネオは赤い薬を飲み、現実を知ることになる。

「男性の被害者は助けない」

監督を務めただけでなく、自らインタビュアーとしても出演しているジェイはもともとフェミニストで、これまでフェミニズム系の映画を撮ってきた。男性権利運動を取材する前は「男性差別など存在するのか?」と疑っていた。少なくともジェイが教育を受けてきたフェミニズムの中では存在しないものだ。現実とデータに触れたとき、ジェイは相当葛藤している。

映画の中でインタビューされる女性(米国の女性学の準学術誌『ミズ』の編集者でありフェミニスト)は「男性のDV(家庭内暴力)被害者などいない。肉体的、精神的DVの被害者は全員女性だ」と言う。しかし映画では次々と男性差別の実態が取り上げられる。

例えば、ある男性は自分の妻からDVを受けていた。しかし我が子を置いて逃げることはできず、男性権利運動家である友人が彼のためにシェルターを探した。ところが驚くべきことに、電話をかけたすべてのシェルターが「我々は、男性のDV被害者は助けない」と言ったのだ。憲法が保障する男女平等の下、税金で運営されている公的なDV被害シェルターで、なぜこのようなことが起きるのだろうか。

米国のDV被害者の4人に1人は男性である。そして全米で公的に運営されるDV被害シェルターは女性用が2000カ所あるのに対して男性用シェルターは1カ所しかない(これも近年、男性DV被害者が自主的に動いて何とか実現した貧弱な施設だ)。映画の中で監督のジェイは問う。「自殺者の70%以上が男性だ。ではそれを理由にして国が自殺防止の援助対象を男性だけに限ったら、それは性差別と呼ばれないのだろうか」

リプロダクションや親権に関する男性差別の実態を取り上げたシーンは相当にショッキングだ。性被害を受けても警察に信じてもらえなかった男性。息子の健康に気を配り、熱心に育児をしていたにもかかわらず、家庭裁判所が息子の親権を「女性である」という理由で妻に渡し、離婚後ほとんど息子と会えなくなってしまった男性。男女平等とは何なのだろうか。女性差別をなくすときだけに男女平等をうたい、男性差別に対しては無視するのだろうか。男性活動家のフレッド・ヘイワードたちはこう言っている。「これらが起こり、放置されるのは、社会が男性を人間(human being)として見ていないからさ」

男性差別の実態は様々だ。DVや性被害、親権における不利以外にも、教育の男女格差、就労中の死亡・負傷率の男女差、兵役、自殺率、平均寿命、ホームレスにおける男女差など。

多くの男性は、差別を訴えても社会的には無視されてきた。ひどい場合は攻撃すらされた。この映画では、声を上げた男性がどのような暴力や妨害、脅しに遭ってきたかを見ることができる。映画自体も、16年にオーストラリアでの公開が「一部の」フェミニストの抗議で一時的に中止になり、報道でも取り上げられた。

この映画が18年5月から日本で初めて公開される。この機会に考えてみてほしい。「この世は男が常に社会的加害者。女性差別はあっても男性差別はない」という既存のジェンダーの主張を信じるならブルーピルを。男性の人権に関心がある人、女性差別と共に男性差別もなくさなければ男女平等ではないと思う人、そして男性差別はあるのではないかと少しでも考えたことがある人はレッドピルを。あなたはどちらだろうか。

「The Red Pill」上映予定(入場無料)
第1回  2018年5月5日(土)午後1時30分~ 立川アイムホール(東京都立川市、JR立川駅北口 徒歩7分)
第2回 2018年6月17日(日)午後1時30分~ 稲盛記念会館(京都市左京区、京都市営地下鉄烏丸線 北山駅 徒歩5分)
第3回 2018年7月21日(土)午後1時30分~ 全労連会館ホール(東京都文京区、JR御茶ノ水駅 御茶ノ水橋口 徒歩8分)
久米泰介
 翻訳家、男性問題研究者。1986年、愛知県生まれ。米ウィスコンシン大学スタウト校卒(家族学修士)。訳書に『男性権力の神話』(作品社)、『広がるミサンドリー:ポピュラーカルチャー、メディアにおける男性差別』(彩流社)『ファーザー・アンド・チャイルド・リユニオン ― 共同親権と司法の男性差別』(社会評論社)。

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