給食嫌いで居残り4年間 関根勤さんの小学校時代食の履歴書

NIKKEIプラス1

東京・港区生まれ。64歳。1974年、日本大学法学部在籍中に「素人コメディアン道場」で初代チャンピオンとなり芸能界へ。81年から小堺一機さんとコンビを組んで活動。5月5日にトークライブ「MC井川とゲスト関根勤と野性爆弾」を都内で開催予定。瀬口蔵弘撮影
東京・港区生まれ。64歳。1974年、日本大学法学部在籍中に「素人コメディアン道場」で初代チャンピオンとなり芸能界へ。81年から小堺一機さんとコンビを組んで活動。5月5日にトークライブ「MC井川とゲスト関根勤と野性爆弾」を都内で開催予定。瀬口蔵弘撮影

デビューから40年以上活躍するコメディアンの原動力は、小学校の給食で味わった屈辱と達成感だ。好き嫌いが多く、完食するまで下校させてもらえなかった少年が偏食を克服。その後の芸能人生で何度も窮地を抜け出す力になる。

給食食べられず放課後居残り

1961年のある春の日。放課後を知らせるチャイムは鳴り、教室内に残っているのは自分だけ。もう何時間も前から、一口も食べていないマーガリンとコッペパンとのにらめっこ。食べ終わるまでは帰してもらえない。「なぜ自分だけこんな仕打ちを受けなければならないのか」。惨めさと悔しさがこみ上げた。

一番年が近い兄でも7つ上という末っ子。3人の兄や姉と競争する毎日で、食べるのが遅いわけではなかった。すき焼きなら「肉をネギの裏に隠す技も身につけていた」。ただ、自分を溺愛した母親が好きなものだけを作ってくれたこともあり、偏食がひどく、給食はほとんど手をつけられなかった。

小学2年生の時、大正生まれの女性が担任になった。とにかく厳しい人で、宿題をやっていないと大きな札を一日中つけさせるなど日常茶飯事。戦時を知るだけに「給食を残すなんて絶対に許せなかったんだろう」。外は真っ暗、他の先生の許可でやっと帰宅することも。

苦しみは同じ担任の間4年間続いたが、どんなトンネルにも出口はある。ずっと同じ給食が出されていたはずなのに、味に慣れたのか「6年生に入って残した記憶がほとんどない」。何か一つ山を越えられた気がした。

■コンビ結成も笑い取れず苦労の日々

74年にコメディアンとしてデビューした後、生涯の相棒となる小堺一機氏とラジオ番組を持つ幸運に恵まれる。同番組は30年近く続くヒットとなるが、当初は緊張もあってまったく笑いが取れず、その後も視聴者から1枚もはがきが来ない日々。インターネットが普及してからは掲示板などで何度も中傷された。

それでも、同級生の前で怒られ、家にも帰れない肩身の狭さに比べれば何でもない。厳しい芸能界でも生き残ってきた。「小学校の先生には感謝しかない」という。

物まねを売りに生きてきたが、実は当初、物まねは自分が選んだ人でしかやらないと決めていた。ところが90年代前半にテレビ番組で俳優の大滝秀治さん(故人)のまねをしてほしいと頼まれた。なかなか特徴をつかめなかった。でも1週間猛練習したら自分でも驚くほどそっくりに。「いちばん得意な物まねは実は人からのオファーだった。受け身であることも大事だね」

■人に与えられた機会で開けた道

こんな時にも、やはり思い起こすのはあの小学校での日々。与えられた環境に何とか適応しようとした結果、道が開けた。与えられたことをチャンスととらえればブレークスルーが起きる。

食も同じ。好き嫌いがなくなったことでそれぞれの食への探究心が芽生えた。もともと「気に入ったものには極端なほどはまり込む性格」。例えばカレーは家でも外でもよく食べていたが「ルーツを調べているうちに、見かけも味もまったく違うであろう、本場インドのものが食べたくて仕方なくなった」。

本場のカレーとの出合いはラジオ番組をもつようになったころとほぼ同時期。ある日、ふらっと立ち寄った書店で目にした雑誌のカレー特集号。そこで紹介されていたのが東京・銀座のナイルレストランだった。薦められるままに同店の名物料理「ムルギーランチ」を注文。一口食べた瞬間「魂がガンジス川に飛んだ」。テレビ番組のスタジオが銀座にあったこともあり、週に3回行くほど通い詰めた。

こういうと、同じものばかり食べているような印象だが、健康には人一倍気を使っており、いつも若々しい。酒はもともと飲めないし、たばこも吸わない。体重も血圧も適正範囲だ。

実は62歳のとき、テレビ番組の企画で心臓の検査を受けたところ、3つの冠動脈のうち2本が詰まりかけていた。このときばかりは、父と同じ病気の因子を抱えていたと衝撃が走った。父は栄養価とカロリーがほぼ同義語だった時代の人で75歳で帰らぬ人に。

でもそこはコメディアン。何事も深刻に受け止めない性分なので「血管を広げる手術を受けたけれど、そんなに重大なことだという自覚が最後まで湧かなかったんだよね」と笑いにしてしまう。食と芸の幅を広げ、バランスのとれた笑いを探究し続ける。

■犬と見つけた行きつけ

「トラットリア・イタリア目黒店」の「ブッファラマルゲリータ」

約10年前「犬と散歩中にたまたま前を通ったのが初めて入るきっかけ」と話す「トラットリア・イタリア目黒店」(電話03・5759・3800)。ピザを中心としたイタリア料理店だ。月に5~6回通うことも。

一番よく注文するのが「ブッファラマルゲリータ」(2380円)というピザ。水牛の乳のモッツァレラチーズとトマトソースというシンプルな組み合わせは「生地の歯応えや焼き方の技術がいちばん分かるピザ」(白石彰宏店長)でもある。

キノコとルッコラ、パルメジャーノチーズのうまみがきいた「色々キノコと野性のルッコラのサラダ バルサミコ風味」(1640円)、ムール貝やエビなどたっぷりの魚介類と濃厚なトマトソースで仕上げたパスタ「ペスカトーレ」(1840円)も関根さんのお気に入りだ。

■最後の晩餐

アジの開きか塩ジャケにのりやみそ汁がついた、旅館で出てくるような朝食がいいかな。実家でよく出てきたわけではないけれど、幼かったころを思い出させてくれる、日本文化の原点のような気がする。青い静かな海が一望できる場所で食べてみたいですね。

(小山隆史)

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