健康・医療

日経ヘルス&メディカル

認知症には波がある 「おかしい」と思ったら専門医へ 40代から始める認知症対策(下)

日経ヘルス

2018/5/21

写真はイメージ=PIXTA
日経ヘルス

 40代からのメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群、メタボ)対策が、60代以降のアルツハイマー型認知症の予防に重要だとわかってきた。アルツハイマー型認知症の予防法から、治療、家族の心得までを紹介する。3回目は、認知症の薬物療法や介護の心得について見ていこう。

◇  ◇  ◇

 認知症は本人が自覚しにくいため、周囲の人が「おかしい」と気づくことが大切だ。兆候として、もの忘れや趣味をやめるなどの意欲の低下も見られる。

 「初期は症状に波があり、いいときもあれば、悪いときもある。家族はいいときにフォーカスして『大丈夫』と考え、病院の受診が遅れがちになってしまう。しかし、早期に受診すれば必要なタイミングで介護サービスも受けられる。兆候を感じたらできるだけ早く認知症専門医のいる病院へ」と横浜相原病院の吉田勝明院長はアドバイスをする。

 病院での治療は薬物療法が中心で、アセチルコリンを増やすドネペジルなどを服用する。「薬は症状を改善するが、認知症そのものを治すものではない。日常生活での意欲が向上し、施設への入所まで時期を延ばせる効果がある」(慶應義塾大学医学部神経内科の伊東大介医師)

プライドを傷つける言動は、症状の悪化につながるので避ける。笑顔で接することが大切

 iPS細胞を使ってβアミロイドを減らす予防薬や治療薬の開発が進められているが、現在の薬では軽度認知障害の段階から薬を服用しても認知症の予防はできず、進行も止められない。家族の心得として大切なのは、「変わりゆく親の姿を受け入れること」と吉田院長は説く。

 認知症では、もの忘れに対する言い訳や作り話による取り繕いがよく見られるが、自分の変化に不安を感じている表れでもある。「家族は、元の姿に戻ってほしいという思いから、『もっとちゃんとして!』などときつい言い方をしがちだが、命令するなど、プライドを傷つけるような言動はNG。症状の悪化にもつながる」(吉田院長)

 認知機能は衰えても、感情は豊か。ちょっとした役割を担わせて、失敗しないように支援し、できたことを褒めよう。「何より笑顔で接することが大切。ポジティブな働きかけで、怒りっぽいなどの精神症状の緩和も期待できる」(吉田院長)

 コンサートへ出かけるなど、感動的な体験や、心から笑うことも必要だという。また、デイサービスなど地域の支援も積極的に活用したい。

吉田勝明さん
 横浜相原病院(神奈川県横浜市)院長。日本老年精神医学会専門医、日本精神神経学会精神科専門医。同院開設以来、認知症の高齢者の治療にあたる。著書に『「こころ」の名医が教える 認知症は接し方で100%変わる!』(IDP出版)。
伊東大介さん
 慶應義塾大学医学部神経内科(東京都新宿区)医師。慶應義塾大学病院メモリークリニックで認知症の診療にあたるとともに、治療薬の開発などにも携わる。著書に『認知症 専門医が教える最新事情』(講談社+α新書)。

(ライター 海老根祐子、構成:日経ヘルス 羽田光)

[日経ヘルス2018年5月号の記事を再構成]

健康・医療

ALL CHANNEL