海外生活ゼロでNYタイムズに 女性記者の英語上達法
海外生活ゼロなのに、英語を専門的に使う職場で働くほどのスキルの持ち主がやってきた勉強法とは? 英語に並々ならぬ情熱を傾けて努力してきたからこそ分かる、確実に英語が上達するコツを教わりました。
アウトプットを意識した勉強が英語上達のカギ
アメリカの日刊新聞『ニューヨークタイムズ』東京支局記者の上乃久子さん。日本語や英語で取材したことを英語のネーティブスピーカーの特派員に通訳したり、英文の取材レポートを書いたりするのが上乃さんの仕事だ。帰国子女? 留学経験が豊富? などとつい想像してしまうが、「英語圏で1カ月以上の滞在を体験したことがない」というから驚きだ。
そんな上乃さんがおすすめする勉強法と、今もなお毎日欠かさない勉強習慣を教えてもらった。大切なのは、「アウトプット(話す)を常に意識して、英語に向き合うこと」だと言う。「日本人は特に机でインプットする勉強に偏りがち。言葉はコミュニケーションの手段。『何を伝えたいか』『なぜ伝えたいか』という英語への強い執着心を持ち続けられるかが、上達する上での大切なポイントになります」
「経験上、『まとめて3時間』より、毎日の30分学習のほうが効果的。効果の高かった次の勉強法を日課にしてみてください」。正しい勉強法を知って、今日からすきま時間にトライしよう。
【すきま時間にやっておきたい 英語力アッププログラム】
5分で「瞬発力」と「自信」をつくる(スピーキング)
「下の例文を参考に自分の1日を表現する50個の英文を作り、繰り返し音読しましょう。すると、びっくりするくらい瞬発力が身に付き、いざというときに肝心な一言が出てくるようになりますよ」。50英文をベースに、主語を変える、過去形、未来形、否定文、疑問文にするなど、応用してみよう。
1 The alarm goes off at six o'clock.
2 I get up immediately.
3 I turn on the TV.
4 I take a quick shower.
5 I dry and comb my hair.
…
・『自分のこと100言う英会話─シンプル自己紹介フレーズで英語が話せる!』(浦島 久、クライド・ダブンポート著/ダイヤモンド社)
・『Weblio 英和辞典・和英辞典』 https://ejje.weblio.jp/
言いたいことを調べるときに便利な、無料の英和・和英辞典サイト。単語を検索すると、ネーティブスピーカーによる正しい発音を聞くことができる。
10分で「英語らしさ」を身に付ける(スピーキング&リスニング)
次にCD付き教材などで、聞こえてきた英語の音源そっくりにまねて発音する「シャドーイング」にトライ。「英語独特の抑揚を体に染み込ませて、『通じる英語』が聞き取れて話せるように」
1 【リスニング】まずは音源を聞くだけ
2 【ハミング】音に合わせて聞こえてくる英語の流れだけをなぞる
3 聞こえてきた英語に合わせて、小さな声でぼそぼそつぶやく
4 テキストを見て、音源のスピードに合わせて声に出して読む
5 英語の音をできるだけ正確にまねて発音する
6 【シャドーイング】意味を理解した上で、テキストなしで音源のまねがうまくできている手応えを感じながら発声する
・『決定版 英語シャドーイング 入門編』(玉井 健編著/コスモピア)
シャドーイングの練習用に編集された教材。CD付き。
・『English Central』 https://ja.englishcentral.com/
無料で1万本以上の日英字幕付き動画が見放題のリスニングサイト。字幕の中の単語をクリックすると、発音記号と音声が確認できる。一部有料箇所あり。
・『VOA Learning English』 https://www.youtube.com/user/VOALearningEnglish
アメリカ国営放送「ボイス・オブ・アメリカ」が英語学習者のために作った動画サイト。すべての動画に英語の字幕が付く。
10分で「意味を理解する」精度を上げる(リスニング)
シャワーを浴びるように英語を聞き流すより、どっぷりと身を沈めるくらいの姿勢で英語を聞くことが大事。「おすすめは、全体の意味の理解を主眼にせず、一言一句聞き取っては書き出す『ディクテーション』です」
1 3分ほどの英語音源を用意し、通しで聞いて大まかな内容を把握する
2 1文聞いたら、紙に英文を書き起こす。分かるまで繰り返し聞く
3 終わったら次の文に進む
4 何度聞いても分からない単語は、スペルを推測して英和辞書で調べる。または、文脈から判断して使われる単語の見当をつけ、和英辞書で確認
5 スクリプトを見て答え合わせをする
・『ENGLISH JOURNAL』『CNN ENGLISH EXPRESS』
共に英語学習雑誌。ニュース番組や著名人インタビューなどの音源とともに、書き起こされた英文が掲載されている。
・『Okoshiyasu2』 http://www12.plala.or.jp/mojo/
ICレコーダーに録音した音源のスピード調節や、巻き戻しや早送りができるPCソフト。聞き取れなかった部分をスロースピードにしたり、キーボードをワンタッチするだけで巻き戻したりすることができる。
【上乃さんが今もスキルアップに欠かさない勉強習慣】
準備体操&早口言葉で口を「英語仕様」に
英語には、口や唇を大きく動かさないとうまく発音できない単語が多い。「私はほほの筋肉のマッサージ後、下記のような早口言葉を5回ほど繰り返し、口を"英語仕様"にします」
I scream, you scream, we all scream for ice cream!
想定問答作成、用語リスト……日ごろの仕込みで英語に慣れておく
「最初から自己紹介の英文が頭にスラスラと浮かぶ人は、そうそういません。想定問答や用語リストなど、できる準備をしておくだけで、頭が"英語慣れ"していい反応ができます」
分からない単語は「スマホにメモ→調べる」を徹底
「専門用語はもちろん、トランプ米大統領のトランプ語録などネーティブでなければ分かりにくいニュアンスの単語は、すぐスマホに打ち込んで、電子辞書で調べます」
ニューヨークタイムズ東京支局記者。1971年岡山県生まれ。94年に四国学院大学文学部英文科卒業後、同大学の事務職に就職。その後上京し、翻訳会社、ロサンゼルスタイムズ東京支局、国際協力機構(JICA)などを経て現職。サイマル・アカデミー同時通訳科修了。著書は『純ジャパニーズの迷わない英語勉強法』(小学館)。
(写真:佐藤和恵)
[日経ウーマン 2018年4月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。