「ローン特約」が無効に? こんな不動産業者は要注意不動産コンサルタント 田中歩

 借入額の記載がない場合はどうでしょう? 思った金額に満たない額しか借りられなくても「何をもって売買契約を白紙にできるか」が明確になっていないわけですから、こちらも無償で契約解除できるとは限らなくなります。

あえて明記しない不動産業者も

 しかし、なぜこのようなケースが散見されるのでしょうか。もちろん、購入の申し込みから売買契約までの期間が短いため借入先を決めきれないという事情もあるかもしれませんが、「せっかく契約までこぎ着けても住宅ローンが借りられないことで契約を白紙にされたくない」という意識が不動産業者に働く面も否めません。

 不動産業者の中には多少金利が高くても貸してくれる金融機関をあらかじめ準備しておき、万一買い主が希望する金融機関で借りられなくても、解約できないように手はずを整えているところが全くないわけではありません。

 具体的な手口としては、買い主が希望する金融機関以外に「念のため」と別の金融機関にも同時に借り入れを申し込ませ、結果として希望する金融機関から借りられなかったとしても、金利の高い金融機関の審査が通っていれば「金融機関のローン審査は通った」としてローン特約は適用されない状況にするのです。

 「〇〇銀行等」という書き方をすることもありますが、これも「等」と書かれていることから余計な疑義を生じる可能性もありますので、注意したほうがよいでしょう。

「欲しい」気持ちも大事だが、冷静に

 仮に不動産業者が買い主の希望に応じた金利や返済方法から金融機関の選び方までアドバイスし、そのうえで万一借りられない場合、多少金利の高い金融機関から借りてでも購入したいかどうか確認し、買い主もそれを承知しているのなら問題はありません。

 とはいうものの、実際には買い主も「欲しい」という気持ちが高ぶってしまい、こうした細かな部分を見逃しがちな面もあります。熱い気持ちも大事ですが、冷静な判断も併せ持っていただければと思います。

田中歩
1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、ライフシミュレーション付き住宅購入サポート、ホームインスペクション(住宅診断)付き住宅売買コンサルティング仲介などを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」に参画。
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