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住宅街に300万人! 桜満開・目黒川のリスク管理

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NIKKEI STYLE

東京の有名なお花見スポット「目黒川の桜」。川面に重なり合う約800本のソメイヨシノはテレビなどで紹介されこの数年で一気にブレーク、今では300万人以上の花見客が訪れる。閑静な住宅地のど真ん中に生まれた観光スポットは、雑踏対策やごみ処理に追われる一方、住民の生活維持との両立を迫られている。満開の桜の下、観桜ストリートの対応に追われる地元の奮闘ぶりを追った。

東急東横線・渋谷駅から2つ目の中目黒駅からほど近い路地に入ると閑静な街並みと目黒川が現れる。先週末から川面に向かって折り重なるソメイヨシノを写真に収めようと次々にスマートフォンをかざす花見客で周辺は鈴なりになる。駅前は警察車両の横断指示と警察官のホイッスルがけたたましく鳴る。駅構内は花見客であふれかえり、駅前の横断歩道は一斉に渡り切れず、青信号でも警察官が制止するほどだ。

昨年のピークだった4月5日は年間の平均乗降客数より約5万人以上多い、約24万4000人が中目黒駅で乗り降りした(東急電鉄調べ)。普段は閑静な住宅街で花見客のピークを迎えるのは夜。1キロにわたってライトアップされる夜桜を楽しもうと、午後5時から9時まで川をはさんだ両側の狭い道路は満員電車のような人混みだ。

「桜見物が増え始めたのは2012年の春でした」。中目黒商店街連合会の本橋健明会長は振り返る。樹齢50年、「熟年」の並木が競って花を咲かせる。ピンクの雲のように川面を包む景観がテレビや雑誌でとりあげられ、都心の隠れ花見スポットの人気に火がついた。駅前の交差点は車が大渋滞。道路では酒盛りがはじまり住宅地には食べ残しのゴミや飲み終わったペットボトルが投げ込まれる。「このまま放置したら危険。必ず花見客や住民のトラブルが起こる」。花見の季節が終わった後、本橋会長は桜並木と目黒川、生活道路を管理する目黒区役所に駆け込んだ。

ほぼ同じころ、区の中澤英作土木工事課長(現都市整備部長)の机上の電話が鳴った。相手は目黒警察署の警備責任者。「住民から花見客への苦情が殺到している」。口調こそ穏やかだったが、対策を強く迫る意思が電話口の奥から感じられた。中澤課長から報告を受けた青木英二区長はしばらく思案する。「花見客への対応は果たして公費を使う仕事だろうか」。4カ月後、季節は夏。青木区長は中澤課長と警察署に足を運び「リスクマネジメントは区が責任を持つ」と警備責任者に決意表明する。「ただし警察の全面協力が欲しい」と付け加え、その場で約束を取り付けた。

目黒川の区内の桜並木は約3.8キロの両岸に約800本が植えられている。橋のたもとに「桜樹記念碑」が建っており、植樹の地元発起人の一人として西郷隆盛のおい西郷従徳氏の名が刻まれている。目黒川の桜は地元住民が憩う貴重な財産だ。観光客が殺到する前から区は毎年、開花前にブルドーザーを目黒川に投入、川底を整地し流れをサラサラにして環境を保全、臭いも抑制するなど対策を続けてきた。

押し寄せる花見客に新たな対応を迫られた青木区長は警察から戻るとすぐさまリスク管理のプロジェクトチームを作るよう指示。「それは役所の仕事か?」といぶかる区役所内の各課を説得し、区が事務局となり警察、消防、町内会、商店街、東急電鉄などを集めた「目黒川桜まつり等運営協議会」を年末に立ち上げた。

大人が5人も並んで歩けば幅いっぱいになる狭い道に咲く桜。期間中の花見客の安全が最優先となる。危機回避には人海戦術による警備とパトロール作戦だ。区が委託した警備員は昨年16日間で延べ1205人、今年は約1700人に増やす。花見客を立ち止まらせず誘導するのが警備員の役割だ。「風情を損なわないようホイッスルは使わない。丁寧な口調と歩行協力への感謝を花見客に示すよう徹底して指導している。警備員の大声は住民には騒音になるのでご法度」。青木区長はソフトな警備を強調する。

人出が急増する土、日はパトロールで道路上での違法な屋台、宴会・場所取りをめぐる対策も欠かせない。横断幕や掲示板を使い200カ所以上で指導するも、中には無視して屋台販売する業者や路上でブルーシートを敷いて宴会をする花見客も現れる。パトロールは主に区の職員や町内会のメンバーらが受け持つほか、警察の協力も仰ぐ。区職員が指導しても言うことを聞かない販売業者や宴会客も、警察が説得すれば聞き入れてくれる。

人の流れをスムーズにするため17年から、事実上一方通行にした。中目黒駅に近い橋を起点にしてライトアップの終点付近にある橋を渡りUターンして駅に戻る人の流れを作り出す。各地に「順路」表示を目立つように掲げて静かに導く。

ゴミ投棄や夜間の騒音・臭い、トイレ確保も課題として残る。ごみの持ち帰りは地元の小学生らが描いた絵を道沿いに掲示し訴えているが、持参したゴミをポイ捨てする花見客はいる。桜が散るまで毎日早朝、区職員と委託業者が回収する。昨年の処分量は約2.6トン、一昨年の2倍以上に増えた。路上の宴会は禁止されているが民間駐車場や住宅敷地内でも所有者が認めれば飲食できるため、騒音や臭いが住民の生活環境を乱し、区に苦情が持ち込まれる。トイレは駅の高架下近くに仮設トイレを設けているが足りない。めぐろ観光まちづくり協会が作成したパンフレット「目黒川さくらMAP」には利用可能なトイレを表示している。

目黒川の桜の保全は税金によってまかなわれる。区内にある約1000本が今後10年で、ソメイヨシノの寿命とされる「還暦」を迎える。状況に応じて異なるが植え替えには1本100万円が必要だ。公費投入を「いかがなものか」と眉をひそめる住民もいる。区では14年から「目黒のサクラ基金」制度を設け観光客からの寄付金を期待する。

今年はさらに昨年を上回る見物客が見込まれる。運営協議会ではリスク管理を一段と強化、新たにテント張りの対策本部「現地連絡所」を中目黒駅近くに設けた。平日は午後5時から土日は午後1時から区職員、警察、地元住民ら4~6人がチームとなり、住民や花見客の相談にライトアップが終わる午後9時まで対応する。チームのメンバーは入れ替わり、総勢で数十人。客同士のけんか、病人や迷子、食中毒、火事など16のマニュアルを作り、担当部署・機関と連携し、すばやく対応ができるようにした。

「花見を楽しんでもらい住む人の暮らしも守る」。青木区長はこの週末も目黒川を訪れ、桜舞い散る下で地元住民らの奮闘を見守る。

(近藤英次)

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