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住宅街に300万人! 桜満開・目黒川のリスク管理

2018/3/29

目黒川の桜を楽しむ人たち(24日、東京都目黒区)

 東京の有名なお花見スポット「目黒川の桜」。川面に重なり合う約800本のソメイヨシノはテレビなどで紹介されこの数年で一気にブレーク、今では300万人以上の花見客が訪れる。閑静な住宅地のど真ん中に生まれた観光スポットは、雑踏対策やごみ処理に追われる一方、住民の生活維持との両立を迫られている。満開の桜の下、観桜ストリートの対応に追われる地元の奮闘ぶりを追った。

 東急東横線・渋谷駅から2つ目の中目黒駅からほど近い路地に入ると閑静な街並みと目黒川が現れる。先週末から川面に向かって折り重なるソメイヨシノを写真に収めようと次々にスマートフォンをかざす花見客で周辺は鈴なりになる。駅前は警察車両の横断指示と警察官のホイッスルがけたたましく鳴る。駅構内は花見客であふれかえり、駅前の横断歩道は一斉に渡り切れず、青信号でも警察官が制止するほどだ。

 昨年のピークだった4月5日は年間の平均乗降客数より約5万人以上多い、約24万4000人が中目黒駅で乗り降りした(東急電鉄調べ)。普段は閑静な住宅街で花見客のピークを迎えるのは夜。1キロにわたってライトアップされる夜桜を楽しもうと、午後5時から9時まで川をはさんだ両側の狭い道路は満員電車のような人混みだ。

 「桜見物が増え始めたのは2012年の春でした」。中目黒商店街連合会の本橋健明会長は振り返る。樹齢50年、「熟年」の並木が競って花を咲かせる。ピンクの雲のように川面を包む景観がテレビや雑誌でとりあげられ、都心の隠れ花見スポットの人気に火がついた。駅前の交差点は車が大渋滞。道路では酒盛りがはじまり住宅地には食べ残しのゴミや飲み終わったペットボトルが投げ込まれる。「このまま放置したら危険。必ず花見客や住民のトラブルが起こる」。花見の季節が終わった後、本橋会長は桜並木と目黒川、生活道路を管理する目黒区役所に駆け込んだ。

 ほぼ同じころ、区の中澤英作土木工事課長(現都市整備部長)の机上の電話が鳴った。相手は目黒警察署の警備責任者。「住民から花見客への苦情が殺到している」。口調こそ穏やかだったが、対策を強く迫る意思が電話口の奥から感じられた。中澤課長から報告を受けた青木英二区長はしばらく思案する。「花見客への対応は果たして公費を使う仕事だろうか」。4カ月後、季節は夏。青木区長は中澤課長と警察署に足を運び「リスクマネジメントは区が責任を持つ」と警備責任者に決意表明する。「ただし警察の全面協力が欲しい」と付け加え、その場で約束を取り付けた。

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