株価、「真の働き方改革」にこそ浮揚のカギ(渋沢健)コモンズ投信会長

経営者が賃上げを実行するには企業の生産性が構造的に高まり、利益が恒久的に上がる状況でなくてはならないのです。それには何より企業の価値を創造する社員が生き生きと働ける環境が求められます。従って、働き方改革の本丸とは、労働時間や非正規労働の規制強化などではなく、あくまでも企業の生産性向上であるはずです。

3月下旬に北海道・帯広で開催されたセミナーで、ソフィアバンク代表の藤沢久美さんと「第4次産業革命」時代における働き方や資産形成について対談した

そのためには、本質的で大胆な働き方改革が必要です。かつての日本の成功モデルである「終身雇用・年功序列」という慣習にメスを入れなければなりません。

右上がりの経済成長という時代背景があったからこそ、年功序列で給料が上がる状態が成り立ちました。社員は一律に恩恵を受けるので終身雇用もでき、労働市場の流動性を高める社会的ニーズもありませんでした。でも、そのような時代はとっくに終わっています。

むしろ、終身雇用・年功序列は弊害が目立っています。そうした慣習に縛られているからこそ、企業が賃金を上げることに慎重でも社員が我慢してしまう側面があるからです。労働市場の流動性が高まれば、自分の生産性を高めることで、より高い賃金を求める社員も増えてくるはずです。生産性の高い社員が高い賃金を求めて他社に転職することを阻止するために、能力に見合う賃金を支払う傾向になるでしょう。これは好循環です。

新しい労働のあり方を提示すべきだ

そうはいっても、これは強者の論理であるという批判もあると思います。生産性が低い社員は切り捨てられかねないからです。そういう意味では安全網として、生活に必要な最低限の収入を国が保障するベーシックインカム(BI)のような制度も検討対象になり得るでしょう(永続的な制度は巨額の財源が必要という大きな課題があるが)。

私は、AIによる第4次産業革命、そして「人生100年の時代」において終身雇用・年功序列の旧来モデルを保持するのではなく、新しい労働のあり方を国民に提示するのが働き方改革の本質であると考えます。例えば、転職や起業が容易なシリアル(連続的)なキャリアパス、あるいは副業が常識であるパラレル(並行的)なキャリアパスといった多様な働き方の実現です。

こうした真の働き方改革を進めなければ、世界における日本の経済社会の地位はますます低下するでしょう。これは目先の株式相場の動向より深刻な問題です。安倍首相が政権を立て直したいなら、こうした視点で働き方改革に臨むべきです。その結果、企業の生産性が向上すれば株価浮揚にもつながるはずです。いずれにせよ、働き方改革は政権の重要なカギになると思います。

渋沢健
コモンズ投信会長。1961年生まれ。83年米テキサス大工学部卒。87年カリフォルニア大学ロサンゼルス校MBA経営大学院卒。JPモルガンなどを経て、2001年に独立し、07年コモンズ株式会社(現コモンズ投信)を創業、08年会長就任。著書に『渋沢栄一 100の金言』(日経ビジネス人文庫、2016年)など。
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