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奨学金が返せない 原因は学費より「一人暮らし」

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子どもが将来にわたるまで多額の借金を抱えてしまうかも、と奨学金に対し漠然と不安を抱える人は多いでしょう。返済に困る可能性が高まる条件、借金の本来の意味、大学が都市部に偏在することが生みだす影響など、ファイナンシャルプランナーの中嶋よしふみさんに分析していただきました。

2.6人に1人が借りている奨学金

近年、教育費や奨学金に関するニュースが多数報じられています。発端は2016年4月に放送された奨学金の返済に困っている人が風俗店で働くというショッキングなニュースです。この報道は2017年度から急きょ始まった給付型の奨学金や、大学の授業料無償化が検討されるきっかけにもなりました。

現在、大学・短大進学者の2.6人に1人(38.5%)が奨学金を借りています。これは2005年の3.9人に1人(25.6%)から、10年で1.5倍に増えています(「日本学生支援機構について・2017年3月」より)。

利用者が増加する一方で滞納者に対する返還訴訟も急激に増え、自己破産をした人が過去5年で1.5万人を超えたと報じられるなど、多くのニュースで奨学金はワルモノのように扱われています。3カ月以上の滞納者は利息のつかない第一種で4.0%、利息のつく第二種で3.6%と、実際に返済できない人は一部なのですが、若者を借金漬けにして社会に送り出している、消費者金融よりたちが悪い、「奨学金」は本来返済不要なもので名前が間違っている等々、ひどい言われようです。

自分は普段、FPとして共働き夫婦の相談に乗っています。その多くは住宅購入の相談ですが、住宅ローンの返済は数十年にわたるため他の支出とのバランスを考慮する必要があります。そのため住宅購入と併せて家計・保険・投資などすべてひっくるめてアドバイスをしますが、中でも重要な要素が教育費です。当然のことながら教育費の中には奨学金の話も含まれます。

奨学金に対する不安を抱えている方が急激に増えていることは、普段の相談でも実感しています。将来返せなくなったら子どもが自己破産してしまうのでは? 親もその影響を受けるのでは? 子どもが奨学金返済を抱えていたら結婚できないのでは? といった相談を受けることもあります。奨学金は借りないほうがよいとアドバイスをするFPも少なくありません。

ただ、漠然としたイメージで奨学金を避けるとかえって家計をリスクにさらすことになります。結論から書いてしまうと、奨学金を過剰に怖がる必要は全くありません。奨学金は他のあらゆる借金と比べて「最も良心的な借金」であることは間違いありません。使える人は限界まで借りてくださいと有料相談でもアドバイスしています。

奨学金=借金=怖いモノ、という(間違った)常識ができつつある中でこのような説明をされるとビックリした人も多いかもしれませんが、奨学金の仕組みや返済に困る人の実態、そして借金の本質的な意味を考えれば何らおかしくない、当然のアドバイスになります。

一人暮らしは生活費の負担が大きい

奨学金について理屈をアレコレと書く前に、大学の費用はどれくらいかかるのか、実際に奨学金を借りるとどうなるか、返済で困る人はどんな人か説明してみたいと思います。

大学の費用は国公立か私立か、文系か理系かで異なります。医科大や芸大等であればさらに高額になりますが、一般的な大学の費用は図の通りです。

学費は4年間で国公立ならば250万円程度、私立ならば390万~530万円程度となっています。なかなかの金額ですが、これは学費のみです。生活費は別途必要です。

1カ月の生活費は、自宅から通学する学生は6万690円、実家から離れて一人暮らし(下宿生)なら11万7610円です。4年分(48カ月)の総額はそれぞれ約291万円と約564万円になります(全国大学生活協同組合連合会「第52回学生生活実態調査の概要報告」より)。

ここで注目すべきは実家住まいと一人暮らしの差額で、約273万円とかなり大きな額です。一人暮らしを始める際の初期費用(敷金礼金・家具家電・引越代金等)も加算すれば300万円を超えます。都市部で家賃・物価が高い場合は実家住まいとの差額はさらに大きくなります。1カ月当たり6万円程度の差額ですから、ほぼ住宅コストの負担の有無ということになります。

これらのデータはあくまで平均ですが、一つ明確に分かることがあります。それは一人暮らしの場合は実家住まいと比べて、学費と同等かそれ以上に生活費の負担が大きいということです。大学に通いながら生活費を全額アルバイトで稼ぐことは極めて困難ですから仕送りで穴埋めをして、それでも足りなければ奨学金で賄うことになります。

親の貯金や収入が少ない場合は学費・生活費の支払いに多額の奨学金が必要です。すると卒業するころには数百万円の借金を抱える……という報道で見かけるような状況になります。

自宅か一人暮らしか? それが問題だ

やはり奨学金は多額の借金を作り出す危ない仕組みだ……と思うかもしれませんが、自宅から大学に通える家庭であれば負担すべき額は大幅に減ります。そして就職後も、自宅からの通勤では返済時の状況も全く違います。実家か一人暮らしかの違いは、在学中の生活費のみならず、返済時の状況にも強く影響を与えます。

初任給で一人暮らしをしながら返済する場合は、奨学金の返済が重くのしかかります。一方で、実家に住んで家にお金を入れない、もしくは数万円を親に渡す程度なら奨学金の返済に困ることはまずありません。

奨学金の返済で困っている、自己破産に陥った、という報道を目にした際はぜひ丁寧に確認してください。そのほとんどが在学中と就職後のどちらか、あるいは両方で地方から上京して一人暮らしをしているケースです※。

例えば、奨学金を毎月10万円、総額で480万円借りた場合、現在の金利水準であれば毎月の返済額は月額2万573円、総額で約493万円です(日本学生支援機構、第二種奨学金、2017年3月の固定金利・0.27%で計算。返済期間は20年。期間保証制度を利用した場合、別途約26万円の保証料が必要)。

総額で見ればかなりの額ですが、毎月の返済額である2万円は自宅から通勤する人にとって決して大きい負担ではありません。就職に失敗してフリーターになったとしても、返済できないことはまずありません。

東京など首都圏の最低賃金で100時間ちょっと働いて10万円も稼げば、奨学金と自身のお小遣い、家に入れる生活費は十分賄えるでしょう。加えて、自宅からの通学でここまで借り入れ額が増えるケースは、私立理系で親の学費負担がゼロに近いケースです。

このように見ていくと、奨学金の問題は教育費の問題に見えて、実は生活費の問題であることが分かります。現在、教育費無償化の議論も出てはいるものの財源の問題で実現はかなり難しいように思います。仮に大学の費用が無料になったとしても一人暮らしをすれば結局多額の生活費がかかります。教育費の無償化ですべての問題が解決するわけではありません。

※一人暮らしに加えてもう一つ返済に困るケースで多いのが母子家庭です。母子家庭や父子家庭には進学に当たって援助があってよいかもしれませんが、これは学費の問題ではなく社会保障の問題です。

多額の奨学金返済は「事前に」分かる

以上のように考えると、奨学金で返済に困ったり自己破産に陥ったりしやすいケースは、上京して一人暮らしをしながら通学して多額の生活費がかかり、就職後も一人暮らしで返済をする人という、ある程度限定された状況であることが分かります。加えて、そういった状況になりやすいかどうかも事前に分かります。

つまり親が大学の選択肢が多い都市部に住んでいれば、在学中と就職後の両方とも一人暮らしになる可能性は(本人があえて選ぼうとしなければ)低いわけです。偶然、運悪く、想定外の状況で多額の奨学金返済を抱える可能性は極めて低いと言えます(逆に言えば地方在住で進学先が限られる場合は、苦しい状況になる可能性が高いと言えます)。

自分が教育費や奨学金のアドバイスをするタイミングは相談に訪れた夫婦が家を買うタイミングです。まだ若く、子どもは未就学児で大学進学は10年以上先の話です。奨学金の不安は多額の借金であることに加えて、発生するかどうか分からないという面も大きいと思われます。

ただ、すでに書いたように東京やその近辺で家を買う夫婦であれば、「首都圏で交通の便がそれなりにいい場所に家があれば、返済に困る状況にはまずなりません」とハッキリとアドバイスできます。この話をするだけでほっとした表情になる方は少なくありません。

中嶋よしふみ

 ファイナンシャルプランナー、シェアーズカフェ代表取締役社長。新聞・経済誌・ウエブメディア等で執筆・取材協力多数。対面ではファミリー世帯向けにプライベートレッスンを提供中。お金よりも料理が好きな38歳。

[日経DUAL 2018年3月6日付記事を再構成]

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