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円高は長期傾向? 明治以降の相場を読む(平山賢一) 東京海上アセットマネジメント執行役員運用本部長

2018/4/3

図は1875年以降の対円での米ドル相場の推移を示したものです。第2次世界大戦中の空白期をはさんでレートの数字が2桁変わっています。米ドル円相場は明治時代、1ドル=1円前後からスタートしました。日清戦争の賠償金をベースに日本は1897年からは金本位制(貨幣価値を金の信用により裏付ける仕組み)を採用しました。

この間、1ドル=2円で相場は安定しましたが、第1次世界大戦末期に、金本位制を停止したことや戦後不況および関東大震災を理由に、1ドル=2.63円までの円安を経験することになります。

その後一時的に、国力に見合わない円高水準(1ドル=2円)を基準に、無理やり金本位制に戻したため、輸出が激減して昭和恐慌に至ってしまいます。1931年には再び金本位制を停止するとともに、日銀は国債を引き受けたため、円の価値が下がり、一気に1ドル=4円前後までの円安が進むことになりました。

第2次世界大戦後は、強国としての米ドルの時代が訪れます。米国政府が金1オンスと35ドルを交換する義務を負う一方、他国は自国通貨とドルの交換比率を固定する(日本の場合は1ドル=360円)ようになります。これはドルを基軸通貨とする管理通貨制度であり、いわゆる「ブレトンウッズ体制」のスタートです。

しかし、インフレと景気悪化問題を抱える米国は、71年8月15日にドルと金との交換を停止してしまいます(ニクソン・ショック)。これにより、為替相場は「変動相場制」に移行することになりました。その後、85年のプラザ合意で一気にドル高是正が進み、95年や2012年の80円割れなど円高局面を経て、現在の水準に至っています。

■予断を持たず、マーケットに臨むべき

ここで、大きな流れを整理しておきましょう。私たちの頭の中には為替相場は長期的に円高基調で推移してきたとのイメージがあるものの、戦前は円安基調で推移しており、長い歴史の中では円高局面はごく最近のことだという事実です。今後も政治・経済情勢に応じて、円安基調に転じる可能性が十分あるわけです。

90年代以降の円高水準は、戦前に約5分の1に下落した円が戦後に約5倍まで再評価され、振り出しに戻ったともいえるわけです。今から100年後の為替レートの推移を見たら、大幅な円安はあり得るはずです。このように米ドル円相場の歴史からは、明確な長期トレンドを決め打ちできるものではありません。

為替レートの変動は経済活動に大きな影響を与えるため、プロの投資家もその予測に必死です。しかし、短期的な見通しを示すことはできても、長期トレンドについては見通しづらいものです。長い目で見ると、これまでの大きな流れであったドル高・円安に戻るかもしれないのです。足元では米中が貿易摩擦の激化を避けるために交渉に入ったとの報道も出ました。個人投資家の皆さんも予断を持たず、マーケットに臨んでください。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムで、原則火曜日掲載です。
平山賢一
東京海上アセットマネジメント執行役員運用本部長。1966年生まれ。横浜市立大学商学部卒業、埼玉大学大学院人文社会科学研究科博士後期課程修了、博士(経済学)。89年大和証券投資信託委託入社、97年東京海上火災保険(現東京海上日動火災保険)入社、2001年に東京海上アセットマネジメント投信(現在の会社)に転籍。29年にわたり内外株式や債券を運用する。

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