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ミシュラン店から伝統料理店まで バンコク最新食事情

大衆的なレストラン「レーム・チャロン・シーフード」の「トムヤムクン」 タイ料理のうまさに衝撃を覚えた一品

バンコクのタイ料理店で提供されるトムヤムクンは、ちょっと濁った雑味を感じさせることが多いが、この店のものは全く雑味を感じさせないすっきりした味。そして、味が凝縮されていて、そこに奥から酸味が湧き出してくる。

もう一つ見逃せない皿が、「白身魚の素揚げ」である。水分を抜け切るまでカラッと揚げてあり、生臭さは皆無。スプーンとフォークで崩して口に含むと、魚のうま味だけが凝縮して口いっぱいに広がる。水分を抜いてうま味を凝縮する調理法は、日本のてんぷらと同じだが、バリバリとした食感が勝っている。

「レーム・チャロン・シーフード」の「白身魚の素揚げ」 水分を抜いてうま味を凝縮している

「タコの炒め物」「パックブン・ファイデーン(空心菜炒め)」など、ほかの料理もうまい。食材を厳選し、的確な調理をしていることが分かる。

タイ料理を食べるなら、最新キュイジーヌもいいし、カジュアルもいい。だが、やはり押さえておきたいのは伝統料理だろう。それには「バーン・クラン・クルン・レストラン」がお薦めだ。店名はタイ語で「森の家」という意味。文字通り木々の緑の中の一軒家である。場所はバンコクのラマ3世通りで、アクセスは悪い。タクシー利用しかないが、それでもわざわざ訪問する価値大のレストランである。

料理は奇をてらわない伝統的な直球。食材は良いものを用いて、適切に調理されて提供されるので、うまいのは当然である。さらに、この店の良いところは、家庭的なサービスの心地よさを満喫できることだ。

ここの「トムヤムクン」は、「レーム・チャロン・シーフード」とは違って、色々なうま味が混和しているやさしい味わい。しかし、辛みはきちっと出している。「レーム・チャロン・シーフード」が剛速球であれば、こちらはコーナーぎりぎりの変化球といったところか。店によっておいしさが違うのがタイ料理の魅力でもある。

そして、この店の定番は、鶏、ナッツ、野菜などを炒めて鳥の巣のような揚げ物の籠に盛った料理「いろいろな食材の炒め物」。こちらもやさしい味わいで、日本人が好む適度な味付けが心地よい。

森の家という意味のレストラン「バーン・クラン・クルン・レストラン」の「いろいろな食材の炒め物」 やさしい味わいが特徴

タイの伝統料理の中では人気の高い「プーパッポンカリー」というカニと卵を用いたカレーも、この店では卵のふわふわ感が秀逸だ。

実は、この店でかつて生ガキを食べたことがある。熱帯の国での生ガキには一瞬躊躇するが、実においしく食べたことがよみがえってくる。食材にこだわり、丁寧な調理法で提供する店の姿勢に感服だ。

食都バンコクのレストランは日々革新を遂げ、訪問するたびに期待に応えてくれる。出張や休暇で訪問する機会があれば、ぜひバンコクの食を探訪してほしい。

(芝浦工業大学名誉教授 古川修)


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