未来での蘇生を願う ロシアで冷凍保存され眠る人々

日経ナショナル ジオグラフィック社

それから100年以上がたった今、フョードロフの宇宙論はトランスヒューマニズムへと形を変えた。トランスヒューマニズムとは、技術の進歩は現代の人間の限界を超越できるという考え方だ。現在、トランスヒューマニズムが盛んなのはロシアだが、その影響力は世界に広がっている。クリオルス社で保存されている56体の遺体のうち、約4分の1は外国人のもので、その中にはイタリア人、ウクライナ人、米国人、イスラエル人が含まれている。またペットも22匹おり、イヌやネコの他、少なくとも1匹のチンチラがいる。

ロシア国立図書館で、ニコライ・フョードロヴィチ・フョードロフが遺した文書を整理するオルガ・サロミノ氏。正面の壁にはロシア宇宙主義を提唱したフョードロフの肖像画がかかっている(PHOTOGRAPH BY GIUSEPPE NUCCI)

「トランスヒューマニストが全員、冷凍保存されることを望んでいるわけではありません。ほとんどがその技術に関心をもっているだけです」とヌッチ氏は言う。トランスヒューマニズムにおいて用いられる手法は冷凍保存だけではないが、遺体の腐敗を止める技術としては、これが飛び抜けて信頼性が高い。遺体が冷凍保存された最初の人物は、1967年に腎臓がんで亡くなったジェームズ・ベッドフォード氏だ。彼の遺体は米アリゾナ州の施設で冷凍保存されており、51年経った現在も変化を見せていないという。

しかしながら、映画の世界以外では、冷凍保存から復活した人間は今のところ存在しない。病気のないユートピアのような未来が訪れるのはまだ先になりそうだが、クリオルス社の倉庫で眠っている56体の遺体たちは、そう先を急いではいないだろう。

次ページでは、人体の冷凍保存を実施する施設の写真をさらに7点紹介する。

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