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老舗に女性後継ぎ 第2の創業、独創のアイデアで挑む

2018/3/27 日本経済新聞 朝刊

平安伸銅工業代表取締役の竹内香予子さん 

老舗企業が集積する関西で、女性の後継ぎに注目が集まる。全国でも低い女性の就業率を上げ、後継者不足を解決しようと、近年は官民を挙げて後押ししている。老舗の経営を継ぎ、ユニークなアイデアで第2の創業に挑む女性社長たちを追った。

◇   ◇   ◇

■日本画絵の具×ネイルカラー 石田結実さん

艶紅、薄花桜、黄紅葉――。日本の伝統的な色のネイルカラーが並ぶ。260年続く日本画の絵の具専門店、上羽絵惣(京都市)10代目の石田結実さん(50)は古来の色の美しさや歴史を生かす商品開発に知恵を絞った。同社のネイルカラーは日本画で使う貝殻の粉末で作る。一般品と比べて刺激臭がなく、肌や爪が弱い人も安心。がん患者らのおしゃれにいいと、全国約50カ所の病院で使われている。

上羽絵惣の石田結実取締役

9代目の父親が病に倒れたのを機に家業を継いだ。日本画材料は需要が先細り。借金の返済に追われ、一時は廃業も視野に入った。「経営の素人で何の専門的な強みもない自分が、何をできるのか」。日本画や絵の具、色彩について猛勉強。異業種交流会に参加して突破口を探す日々が続いた。

ネイルカラーという新分野を思いついたのは友人のひと言だった。「女性の爪を飾るのってアートだよね」。日本画の絵の具の淡い色味を生かし、ネイルカラーにできないか。色の主張が強すぎないものを好む人はいるはず。

かつて20店以上あった地元の同業者は、老舗ほど伝統に固執して、次々と廃業していった。石田さんは「時代のせいにしたくない。だから次を探し続ける」と言う。伝統の日本の色の美しさには、他にない未知なる価値がまだまだあるはず。新たな魅力の創造に挑むつもりだ。

■果汁入り発泡日本酒を開発 吉田佳代さん

梅乃宿酒造の吉田佳代社長

「安いから質の低い酒でいいと若者が考えていてはファンは増やせない。初めての酒こそ、いいものを」。1893年創業の梅乃宿酒造(奈良県葛城市)で初の女性社長、5代目の吉田佳代さん(38)はこう話す。力を注ぐのは、酒離れが進む若い世代への酒文化の継承。大学へ出向き、清酒の発祥と言われる奈良県の酒造りの歴史と技術を講義し、試飲をセットにしたユニークな授業を開く。

大学で経営を学び、総合商社に入社。その後、家業に入った。入社4年で「後を継ぎたい」と4代目の父に申し出たところ「能力があれば継がせる」と背中を押された。

創業120年を機に吉田さんがつくった日本酒の新ブランド「山風香シリーズ」は、絞りたてのフレッシュな味にこだわる。さらに日本酒の常識を超え、リンゴやブルーベリーの果汁を入れた発泡日本酒を開発した。首が長いスタイリッシュな瓶を採用し、フレンチやイタリアンの店でも評判だ。人気を集めていた日本酒ベースの梅酒は、果肉を入れた濁りの「あらごし梅酒」を生み出した。

伝統に重きを置く業界だからこそ、「歌舞伎にスーパー歌舞伎があるように、私たち自身が勇気をもって変わること。新たな日本酒文化の可能性を示せるはず」と力を込める。

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