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カナディアンウイスキー 禁酒法で開花、世界の頂点へ

世界5大ウイスキーの一角・ジャパニーズ(15)

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NIKKEI STYLE

世界5大ウイスキーの一角を占めるに至ったジャパニーズウイスキー。山崎蒸溜所が開設された1923年に産声を上げた、5大ウイスキーの中では最も若いウイスキーだが、世界中でその品質が高い評価を受けるようになった。

ジャパニーズウイスキーに至る流れを追ってきたこの連載、最も長い歴史を持つと言われているアイリッシュから説き始め、スコッチ、アメリカンを終え、今回からカナディアンに入る。

アメリカ同様、カナダにおいてもラムの生産は行われていた。しかし、隣国同士ながら、カナダではアメリカで起きたラムからウイスキーへの劇的な転換のような愛国心をかき立てる出来事はなかった。

もともとカナダに入植し、開拓を進めたのはフランス系の移民たちであったが、その居住地域では、本国政府のワイン、ブランデー保護政策の下、ラム蒸溜もウイスキー蒸溜も禁止されていた。フランス領以外の地域、特にアメリカ、ニューイングランドの北、カナダ東海岸の南部では、ニューイングランドと同様に西インド諸島のサトウキビプランテーションで出た廃糖蜜を発酵・蒸溜するラムづくりが行われていた。

では、ラムからウイスキーへとどのように移っていったのか?

カナダへの入植者の最初の狙いは毛皮であった。その次が世界3大漁場の一つ、ニューファンドランド沖のグランドバンクで取れる豊富な魚類であった。そのうちに、農業が発展してくる。農家が狙うのは収穫した穀物の有効活用で、付加価値の高いウイスキーづくりは、まさにそれに該当した。たくさんの製粉所が開業し、製粉工程で出る表皮や胚芽など穀粒重量の15%以上を占める 副産物を原料として利用する蒸溜所が併設されていった。

アメリカの独立を許した英国は、サトウキビから出る廃糖蜜の流通を制限した。そのような中でラム蒸溜を継続する必然性はなかった。地元で収穫された豊富な穀類、ライ麦、大麦、トウモロコシ、小麦が原料として使われ出したのだ。

カナディアンウイスキーは、穀類を商品性の高い酒類であるウイスキーに転換したものだ。そのため基本的な性格は、より効率的な生産工程でつくる、なるべく「クセ」のない万人受けする味わいであった。「クセ」のないとは、ほの甘い軽快なモルティー、爽快なフルーティー、バニラ、そして、クリーンでスムーズ、マイルドな飲み口である。ロックでもおいしいが、カクテルベースとして申し分ないつくりになっている。また、ハイボールスタイルの適性も高い。

このカナディアンウイスキーの方向性は、結果的には大成功であった。5大ウイスキーの中で、販売数量は1980年代にはアメリカンウイスキーに肉薄していた。最近のバーボンブームで差が開いてきているとは言え、この20年以上安定した売上数量を維持しているのは、熱心なファンが付いているからに他ならない。

製法は、バーボンと似ている。最も大きい違いは3つ。ベースウイスキー(連続式蒸溜機使用)とフレーバリングウイスキー(単式蒸溜器使用)の二つのタイプの原酒をブレンドしてつくること。樽貯蔵期間は3年以上であること以外、樽についての決まりがないこと。9%までなら、果汁でもワインでもウイスキーでも種類を問わずウイスキーに混和してもよいという慣行である。

フレーバリングウイスキーだが、初溜は連続式蒸溜所の最初の塔、つまり醪塔で得られる溜液を使う。従って、初溜釜を使うより軽い香味を持つ。

ウイスキーの中では目立たないカナディアンウイスキーだが、実は驚くようなエピソードを持っている。それも三つもある。

一つ目はカナディアンウイスキーの会社が世界一の大スピリッツ会社になる日が訪れたという話。

二つ目は、製造に日本酒製造技術の一部が使われているという話である。カナディアンウイスキーには、遠く離れた極東の島国日本の未知の技術に果敢に挑戦する隅に置けない柔軟性とタフさがあったのだ。

そして三つ目は、日本でなじみ深いカナディアンクラブの誕生から今日までである。

まず、世界一のスピリッツ会社誕生から始めよう。会社名はシーグラム。日本ではビール会社と合弁で、シーバス・リーガルを販売していた会社として記憶に残る。

世界最大規模に上り詰めたのは、1950年代であった。そこまでの道程には二人の人物が深く関与する。基礎を築いたジョセフ・エマ・シーグラムとその会社を大発展させたサミュエル・ブロンフマンである。もう一人、エドガー・ブロンフマン・ジュニアという名前を記憶に留めておいてほしい。

ジョセフがこのシーグラムを創業したのではない。イングランド移民の子として1841年に生まれたジョセフが成人して就職したのが、グラナイト・ミルという製粉会社。シーグラムの前身である。製粉所には、蒸溜所が併設されていた。その会社の3人の創業者のうちの一人の娘と結婚した彼は、義理の父親と共に共同創業者たちの株を買い集め、1883年に自身の名前を冠した「ジョセフ・シーグラム製粉所・蒸溜所」に会社名を変更する。

ウイスキー蒸溜業は順調に伸び、1887年には彼自身が開発した「シーグラム83」を、1914年には息子の婚礼を記念して、その後ベストセラーとなる「シーグラムVO」を発売する。ジョセフは国会議員に選出されるなど、地元の名士となった。また、競走馬の育成に精力を傾け、英国で最高の血統馬を採用した彼の厩舎は圧倒的な成績を上げていった。

1919年の彼の没後、後を継いだ息子の代に会社は大きな困難に直面する。それを救ったのが、サミュル・ブロンフマンであった。困難とは禁酒法である。

ブロンフマンの会社、ディスティラーズ・コーポレーションは、禁酒法をチャンスと捉えた。この法律によってアメリカの蒸溜業界の生産量が激減したのを尻目に何と大増産に走ったのである。思惑は的中し、禁酒法下、彼のウイスキーは売れに売れ、莫大な利益を得た。

ブロンフマンは禁酒法を機に経営悪化した名門シーグラムに触手を伸ばす。シーグラムも渡りに船であったが、ディスティラーズ・コーポレーションとの合併により倒産は免れたものの、輝かしい会社名も貴重なブランド資産も生産設備もブロンフマンのものになる。1927年のことであった。名門企業の体裁は保っているが、新生シーグラムはブロンフマンの経営参加によって負の側面を抱えることになったのだ。

ブロンフマンのタフさはその半生を見れば納得できる。生まれは1889年、現在のモルドバ共和国である。ロシアで起きた反ユダヤ運動「ポグロム」から逃れた一家はカナダに移住する。一緒に育った2人の兄たちはホテル業で成功する。彼も兄たちからノウハウを習って、ホテルを手に入れ経営するようになる。その時運命的な出来事が起き、一挙に彼をウイスキーへと近付ける。

彼は禁酒法の本質を学ぶ機会を得たのである。1916年カナダで禁酒法が施行される。第1次世界大戦参戦に伴う措置であった。酒の仕入れができなくなり、彼の経営するホテルでも客に出す酒が払底する。ところがケベック州では酒類販売は禁じられているものの、製造は可能であった。兄はケベック州に移り、メールオーダーによる酒類販売を始めた。と同時に未納税倉庫の手配をし、スコッチウイスキーの大量輸入を始めた。ブロンフマンも兄に習った。スコットランドからウイスキー原酒を買い付け、カナダ国内でブレンド、瓶詰して兄の元に送った。こうしてブロンフマンはにわかウイスキー業者になったのである。この経験がシーグラムを世界最大のスピリッツ会社へとけん引する。しかし、とんでもないことが起きる。この世界最大のスピリッツ会社は消滅してしまうのである。続きは次回に。

今回のおススメは、アルバータプレミアム。原料はライ100%、カナダの中西部アルバータ州の蒸溜所でつくられているウイスキーだ。

カナディアンと言えば、原料穀類の中でライ麦の使用比率が高いことで知られていた。理由は、カナダでの栽培のしやすさであった。ライ麦は寒冷に強い。しかし、現在のライ麦生産量は、小麦やトウモロコシに比べれば、0.1%にも満たない。ウイスキー原料中のライ麦の使用比率も落ちていると言われている。

香りは、バニラ、甘いフルーツ、たる香。味は、バニラ、シナモン様のスパイシー、とてもなめらか。そして、甘くおだやかな中に、スパイシーさがアクセントとなっている余韻。飲み手に寄り添うようなウイスキーである。

(サントリースピリッツ社専任シニアスペシャリスト=ウイスキー 三鍋昌春)

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