私が考えついた言葉の中で自分で結構、気に入っているものの一つが、「株式市場は横暴な上司である」というものです。
このコラムを先月まで担当していたレオス・キャピタルワークス社長の藤野英人さんが初回の「ミスター・マーケットと上手に付き合う」(2016年2月14日付)で、投資の賢人といわれるウォーレン・バフェット氏の師匠、ベンジャミン・グレアム氏のマーケットについての例え話を取り上げていましたが、意味するところはほぼ同じですね。
要するに株式市場は情緒不安定なパートナー、「ミスター・マーケット」のようなものであるということです。市場は正しいといわれるけれど、実は矛盾だらけで、平気でついさっきまでの発言と相反することを言い出します。物の言い方も居丈高で、しばしば非常に下品です。どうでしょう。なかなか厄介な上司ではありませんか。
でも、私はファンドマネジャーという仕事を選んだので、この上司の下でお金を稼がねばなりません。今回は株式市場という横暴な上司とどのように付き合えばいいか、私なりの基本的な考え方を3つ紹介したいと思います。
市場を狭い視野で考えるのは無益
まず「忖度(そんたく)をしない」ということです。
投資家の中には、株式市場で起こることをいちいち説明しないと気が済まない人がいます。相場が上がっているときは買い手、下がっているときは売り手が誰であるか(なぜか反対側にいる投資家はあまり気にしない)、さらにはどうしてそういう投資行動を取っているかを勝手に推測します。見えているものは目先の値動きだけであるにもかかわらず、それを前提として将来の株価変動を予想しようとします。
そういった思考方法をとっていると、大体において結論は現状追認になり、市場の動きに半歩遅れて追随するという「最もやってはいけないこと」をやってしまいがちです。