知ってる? 会社員が出産で払うお金、もらえるお金
前回「妊娠前から知っておこう 出産までのお金の基礎知識」では、妊娠が分かってから出産までのお金についてお伝えしました。今回は、出産から産休・育休の間のお金の知恵についてお伝えします。
出産のために仕事を休んだときの収入は?
出産ギリギリまで仕事をする方もいらっしゃいますが、出産予定日の少し前から産休に入られる方が多いようです。
ここで登場するのが「出産手当金」です。勤務先の健康保険に加入している会社員などが出産のために会社を休み、その間に給料が出ない場合は、健康保険から「出産手当金」として、出産予定日以前6週間(双子など多胎妊娠の場合は14週間)、そして、出産後は翌日から8週間で受け取ることができます。
ただし、出産予定日はあっても、赤ちゃんが予定通りに生まれてきてくれるかどうか、分かりませんよね。そこで、遅くなった日数分も出産手当金が支給されるように、予定日よりも遅れても安心して出産できるような制度として整えられています。
出産手当金はいくらもらえるの?
出産手当金の金額は、1日当たりで計算されます。その額は、給料1日あたりの3分の2です(正確には、支給開始前12カ月間の各標準報酬月額の平均額を30で割った額の3分の2)。ざっくり、1カ月会社を休んだら、その3分の2の出産手当金が出ると思ってください。
なお、出産手当金は給料ではないので、いつもは天引きされている厚生年金保険料と健康保険料は差し引かれません。これだけ聞いて、「ラッキー!」と思いませんでしたか(笑)?
実は、厚生年金保険料を納めない……ということは、通常はその期間の分だけ老後に受け取る年金が減ってしまいます。そこで、出産で仕事を休む女性が不利にならないように、産休と育休の間は、厚生年金保険料を納めなくても、老後の年金が減ることがないようにしているのです。これなら、本当に安心ですね。
子ども1人当たり42万円の出産育児一時金
出産すると、「出産育児一時金」として、子ども1人につき42万円を健康保険から受け取ることができます(産科医療補償制度に加入している医療機関で出産した場合)。また、双子のように、一度に2人以上出産した場合は、42万円×子どもの人数が支給されます。
前回お伝えした通り、出産にかかる費用の平均額である50万円は、全額自己負担です。この負担をカバーするのが、出産育児一時金なのです。
実際に受け取る際は、「直接支払制度」を利用して、病院などに支払う出産費用と、健康保険などから受け取る出産育児一時金を相殺することが一般的です。
例えば、平均的な出産費用は約50万円ですから、未来のあなたが出産するときも50万円かかったとしましょう。その時、あらかじめ申請をしておくと、退院時には出産費用約50万円と出産育児一時金42万円の差額の8万円を支払うだけで済みます。これなら、家計負担が減りますね。
一方、事前に病院で直接支払制度の手続きをしていなければ、いったん50万円を窓口で支払い、その後、健康保険などに出産育児一時金の申請をして、42万円の還付を受けることになります。結果はどちらも同じですが、一時的とはいえ、家計負担を抑えるためには、事前に制度を知っておいたほうが助かりますね。
なお、ここでいう出産とは、早産を含めて赤ちゃんがこの世に生まれた場合だけでなく、妊娠4カ月(85日)以後の死産、流産、人工妊娠中絶も指し、出産育児一時金の対象になります。
出産育児一時金は自分が受け取るの?
女性が勤務先の健康保険に加入している場合は、自分の健康保険から受け取ります。専業主婦などで、夫の扶養に入っている場合は、「家族出産育児一時金」として、夫が加入している健康保険から受け取ります。共働きの場合は、妻が自分の健康保険から出産育児一時金を受け取りますから、夫は家族出産育児一時金は受け取れません。
さて、出産後は、産休をどのぐらい取るのか、あるいは、産休後にそのまま育休に入るのかなどを検討されるかと思います。育休(育児休業休暇)の間は、雇用保険からの給付を受けることができます。
育児休業給付金の原則は、子どもが1歳、または、両親ともに育児休業を取得する場合は1歳2カ月までの休業に関して、休業1日当たり、当初6カ月間は給料の67%、6カ月経過後は50%を受け取ることができます(正確には、休業開始時賃金日額×支給日数×割合で決定)。
なお、復帰に当たり、ママの大きな心配事が保育園です。保育所などの待機児童が社会問題化するにつれ、保育園に入るための「保活」情報が重要性を増してきています。自治体に相談したり、地域のママ友と情報交換しながら、スムーズな復帰を目指したいところです。
とはいえ、保育園での受け入れ人数には限りがありますから、保育園が見つからない場合もあるでしょう。そんなときは、最長2歳まで育児休業給付金の給付が延長されるようになりました。育休に関する制度は、実態を踏まえて見直されていますから、不安があるときは、早めにハローワークに問い合わせるようにしましょう。
Cras代表取締役。FPオフィス will代表。大阪在住のファイナンシャルプランナー。中学・高校の保健室の先生から、結婚、退職、住宅購入、加入保険会社の破たんを経て転身。働く女性や子育て世帯が、お金の安心と可能性を実感できる「知れば得トク、知らなきゃソンするお金の知恵」を伝える。講演やテレビでも活躍。新著に『本気で家計を変えたいあなたへ〈第2版〉 書き込む"お金のワークブック"』(日本経済新聞出版社)。
[nikkei WOMAN Online 2018年3月12日付記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。