「おとぎの森」の幻想フォト まるで妖精のすむ世界
写真家エリー・デイビース氏の写真を見ていると、魔法をかけられた森の入り口に立っているような感覚にとらわれる。あたりは、これから何か不思議なことが起こるのではないかという予感に満ちている。そんな「おとぎの森」のように幻想的な写真を10点、紹介しよう。
写真の多くは、英国イングランド南部のニューフォレストを舞台に撮影されている。中世の時代から変わらない森やヒースの草原、牧草地が広がる、童話のページをそのまま切り取ったような風景だ。
デイビース氏は、この近くにあるわらぶき屋根の小さな家で育った。子どもの頃は、森の中で何時間も遊んで過ごした。今となっては、多くの人にとってぜいたくなものとなってしまった貴重な環境だ。
「森の中は、安心して遊べる場所でした。隠れ家や基地を作るなど、本当に楽しかったです。けれども危険もあるし、恐いと感じることもありました」と、デイビース氏は振り返る。「空想の中で、色々な場所へ出かけました。あの雰囲気を写真に描こうとしているのだと思います」。彼女の作品に触れた多くの人が、自分自身の子ども時代に回帰したとの感想を抱くという。あらゆることが可能に思えて、魔法が本当に存在していたあの頃だ。
このテーマに取り組むようになって以来、デイビース氏はいくつかのシリーズ作品を手がけてきた。そのすべては、互いに関連し合っている。森がデイビース氏のスタジオであり、発想の源なのだ。
森の中を散策したりドライブしたりしていると、心が開かれて意外なつながりに気付くことがある。そこからアイデアが生まれる。プロジェクトによっては、風景の中に別の要素を持ち込むことがある。たなびく煙、色が塗られた枝、シダの通り道、木々の合間に銀河系の写真を重ねた「Stars」と題されたシリーズ。また時には、水の集まる場所などすでにそこにある要素を利用して視線の動きを導くこともある。
デイビース氏は、写真にあえて人間や動物を登場させない。風景そのものが個性を持ち、見る人に解釈を委ねる。「自分だけのために用意された世界へ入っていくという体験です。森の中へ足を踏み入れた時に感じる、ひんやりとして静かで、本能的な何かを感じる。言葉では言い表せない、魔法がかった感覚です。誰もが少しは欲していることだと思っています」
次ページで、おとぎの森のような幻想的な写真をさらに8点紹介する。
(文 Alexa Keefe、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック 2016年11月4日付記事を再構成]
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