レストランのシェフにとっての「仕事の装い」はやはりコックコートだ。日本のフランス料理をけん引してきた東京・四ツ谷の「オテル・ドゥ・ミクニ」。オーナーシェフ、三国清三氏はその細部にまでこだわる。ポイントは2つ「動きやすいこと」「だらしなく見えないこと」。そこには徹底したプロ意識が垣間見えた。
前回「反発心から師匠のヒゲを失敬 一流料理人への第一歩に」もあわせてお読みください。
――コックコートはオーダーメードだそうですね。
「コックコートはダブル(ブレスト)が基本です。東京・神田にある白衣の専門店『村松白衣店』で約30年間、つくってもらっています。1912年創業の老舗で、価格は1着3万円くらい。現在持っているのは20着ほどですね」
「一見するとシンプルなつくりですが、ポイントは2つ。動きやすいことと、お客さまの前に出たときにだらしなく見えないことです。公式晩さん会では日本の代表の一人といった立場になりますから」
■コックコートに込めた自己主張
「腕などはすぐ抜けるようにカットしてあります。ファッション面で工夫しているのはエリとボタン。首にピッタリとフィットするように仕立ててもらっています。毎年寸法を測り直しています。ボタンは手作りのクルミボタンで、通し番号を振ってあります」
――三国シェフにとってファッションとは何でしょうか。
「スーツは相手を引き立たせるもの、コックコートは自分を奮い立たせるもの。コックコートに自己主張を込めています」
――シェフならではのフランス料理を楽しむコツを教えてください。
「リラックスして自分が一番おいしく食べられるスタイルで食べることが一番だと思いますね。フランス料理のかしこまったお堅いイメージは忘れてください。オテル・ドゥ・ミクニは1985年のスタート時からネクタイ着用などのドレスコードを設けていません。セーター姿でいらしていただいて結構なのです」