日本にも「She For She」 女性同士の一致団結をダイバーシティ進化論(村上由美子)

2018/3/24
画像はイメージ=PIXTA
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2月に来日したチリのミチェル・バチェレ前大統領との少人数の朝食会に参加する機会に恵まれた。大統領として最後の外遊になった日本での滞在は分刻みのスケジュール。あえて日本の女性リーダーとの時間を割いた会談の中で彼女が強調したのは、女性同士のつながりと助け合いだった。

指導的立場の女性は少数だが、同性に対して厳しい人が多い傾向がある。少数派の女性が団結して助け合う事が、社会全体で女性活躍を推進するために必要だと、熱く語った。

男性より女性の方が厳しい上司だと評価される傾向は、様々な調査で指摘されている。特に女性が同性のボスを苦手とする傾向が強い。ハーバード・ビジネススクールのロビン・エリー教授の研究によると、これは女性管理職が少ない職場でより顕著に現れる現象らしい。女性が昇進しにくい環境下で、私生活を犠牲にしながらも、男性同僚より成果を挙げることで、昇進を勝ち取ったごく少数のエリート女性。無意識のうちに、自分と同じような頑張りを後輩女性にも求めている可能性は否定できない。

女性活躍を後押しするためには、女性がキャリアのために多くの犠牲を払わなくてはならない環境を是正すると同時に、女性同士のネットワークの促進が重要。日本の場合、所属部署で唯一の管理職という女性は多いだろう。そんな女性たちが社内のみならず、会社という枠組みを越えてつながれば、女性特有の悩みを乗り越えるためのヒントを与え合い、互いのメンターになり得るかもしれない。

私もウォール街で働いていた時代、男性中心の過酷な競争に何度も心が折れそうになった。そんな時に癒やされたのは、似た環境で切磋琢磨(せっさたくま)している女性たちとの交流であった。

バチェレ氏が大統領として最後に議会に提出したのは、男女平等賃金義務化の法案だった。今後議会が法律成立に向けて動き出すことを願いながらの引退であったのだろう。彼女は女性として、母親として、大統領として、多くの女性達のチアリーダーであった。

そんなバチェレ氏が日本の女性たちに伝えたかったのは「She For She」というエール。日本の女性リーダーはまだ少数だが、一致団結することで互いを助け合い、個々の力をより強力なムーブメントに発展させることができるということだと思う。

村上由美子
経済協力開発機構(OECD)東京センター所長。上智大学外国語学部卒、米スタンフォード大学修士課程修了、米ハーバード大経営学修士課程修了。国際連合、ゴールドマン・サックス証券などを経て2013年9月から現職。米国人の夫と3人の子どもの5人家族。著書に『武器としての人口減社会』がある。

[日本経済新聞朝刊2018年3月19日付]

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