2018/3/17

オリパラSelect

平昌五輪で民泊はどのような役割を果たしたのか。エアビーのデータをもとに読み解いてみる。

平昌・江陵周辺の登録物件が3倍に

五輪会期中の18年2月9~25日、江原道におけるエアビーの利用者は1万5000人で、前年の同時期に比べると6倍に増えた。1回の利用は平均3泊。外国人は全体の44%の6600人で、国別にみると米国、中国、カナダ、日本が上位を占めた。

もっとも五輪でたくさんの外国人が訪れるのは、いわば当たり前。エアビーにとって最大の課題は物件、つまり受け入れ先のホストをどれだけ確保できるかにあった。

原動力となったのが、韓国の五輪組織委員会と17年11月に結んだ公式サポーターの契約だ。ソウルで開かれた五輪のプレイベントに参加するなどして、認知度を飛躍的に高めた。同じ年の1月には平昌や江陵のある江原道との間で連携協定を締結。エアビーは「五輪とは直接関係ない」というものの、テレビコマーシャルもさかんに流した。

17年12月にソウルで開かれた平昌五輪のプレイベント(エアビー韓国提供)

江陵市内に住む大学講師、文鉉善さんがエアビーのことを知ったのは17年秋。「アパートを提供してみたら利用者に喜んでもらえたので、すぐに5人くらいの友人に勧めた」。そのうちの1人、公務員の金麟河さんはちょうど2人の子供が大学進学や留学で親元を離れた時で、部屋が空いていた。「数年後には退職するので、収入の足しになる」と喜ぶ。

こうした口コミ効果も手伝って、江原道のエアビー登録物件は17年の1100件程度から五輪の開幕直前には3.5倍の約4000件に増えた。このうちの1800件が実際に宿泊先として利用された。地元への経済効果は大きく、エアビーによれば現地のホストが五輪期間中に得た収入は合計24億ウォン、1人平均で約120万ウォンに達した。

エアビーの存在は、高騰していたホテルの宿泊料金を下げる効果ももたらした。当初は江陵市内の都市ホテルで1泊80万~100万ウォンといった法外な価格さえ横行していたが、徐々に低下。最終的には平均で50万ウォン程度に落ち着いた。ちなみにエアビーの五輪期間中の平均料金は、その3分の1の16万7000ウォンだった。

エアビーの韓国法人で公共政策の責任者を務める李尚炫氏は「我々は短期間に宿泊先を増やせることを証明した。新しい建物を造る必要がないため、非常に柔軟で、効率的で、かつ環境に優しい」と自信を見せる。

リオで成功体験、住民が「覚醒」

エアビーには成功体験がある。14年6~7月にブラジルで開かれたサッカーワールドカップ(W杯)と16年8月のリオデジャネイロ五輪だ。特にリオ五輪では、同社として初めて公式サプライヤーとなり、ブラジルでの知名度アップにつなげた。

それは、リオにおけるエアビーの登録物件が階段状に増えた様子にうかがえる。W杯の半年前には5700件だったのがW杯の時には1万9300件に急伸。五輪では、開幕半年前の2万4300件から期間中は4万8100件に達した。宿泊の需給がタイトになる大きなイベントが、エアビーの追い風になっている。

特筆すべきは、大きなイベントが終わった後もリオではエアビーの登録物件が増勢を保っていることだ。リオ五輪の3カ月後こそ4万4400件とわずかに減ったものの、それから1年後の17年末には5万5600件と五輪の期間中を上回って推移している。

勢いづいた民泊は、奔流のようになって、その国・地域の宿泊のあり方を変える。韓国がまさにその変わり目にあることを、エアビー韓国法人の公共政策責任者である李氏は実感している。「平昌五輪は、ホーム・シェアリングのメリットについて物件を提供するホストと利用者の双方に気づかせる機会になった」

韓国・江原道の崔文洵知事

急成長の反動として、韓国でも民泊に対する警戒心から規制論議が盛んになっている。エアビーは対策に追われており、18年1月末までに累計3200件の違法物件をリストから消去したという。そうしたなか自治体の民泊に対する期待も高まっており、江原道の崔文洵知事は「エアビーには外国人観光客をたくさん呼び込んでほしい」と話す。既存のホテル業界から不満もあがっているが、「競争することはいいこと」と受け流す。

翻って、20年の東京五輪はどうか。エアビーは「大会成功のため喜んで協力したい」と公式スポンサーの契約獲得に意欲を隠さない。一方で、東京都区部などでは住民の不安を背景に、住宅地で全面禁止にしたり週末に利用を限定したりする規制が広がっている。相性抜群の五輪と民泊。そこに、あえてくさびを打ち込むのはいかにも惜しい。官民の知恵が問われそうだ。

(オリパラ編集長 高橋圭介)