90年代少女マンガの映画化ブーム 30~40代も狙う
1990年代に一世を風靡(ふうび)した少女マンガの映画化が続いている。メインターゲットである10~20代の女性に加えて、若いころに原作に夢中になった30~40代の大人を取り込み、客層の拡大を狙っている。マンガの映画化以外にも90年代のカルチャーを反映した作品が増えており、名作の掘り起こしに拍車がかかりそうだ。
2017年は、96年から03年にかけて『別冊マーガレット』で連載された『先生!』(映画タイトルは『先生! 、、、好きになってもいいですか?』)が公開。今年も、2月の『リバーズ・エッジ』(雑誌『CUTiE』/93~94年)に続いて、4月に『ママレード・ボーイ』(雑誌『りぼん』/92年~95年)が公開される。
90年代の名作マンガの映画化が相次ぐ背景には、複数の事情がある。1つは「原作マンガの争奪戦」だ。昨今、少女マンガ原作の映画化は邦画実写のトレンドで、「旬のマンガ原作は、争奪戦が激化している」(業界関係者)。そこで各社が目をつけたのが、90年代の作品というわけだ。
90年代作品は、「客層の拡大」も期待される。少女マンガ原作映画のメインターゲットは10~20代の女性。友人とグループで映画館に足を運び、鑑賞後は「どの出演俳優が好みか」など感想を語り合う「イベント型映画」として定着している。90年代作品ならこの層に加え、原作になじみのある30~40代の大人の獲得も狙える。
『ママレード・ボーイ』は、「若いカップルの話だけでなく、その親を交えての話。少女マンガがたくさん映画化されているなかで、そこが格別に違う点であり、新しさを出せる」と映画化された。主人公2人は桜井日奈子と吉沢亮という若手が務めるが、その両親役に起用されたのは中山美穂、檀れい、谷原章介、筒井道隆という、90年代に活躍した面々。まさに30代~40代の観客を狙ったキャスティングといえるだろう。
『リバーズ・エッジ』の制作陣は映画化に際して、「当時も今も通じる若者たちの内面の心情や普遍的な関係性に重点を置くため、 90年代の風俗考証はそこまで厳密にする必要はない」と判断したというが、原作にある記号的要素として、『ウゴウゴルーガ』や『元フリッパーズの~』『地球温暖化問題』といった90年代を象徴するキーワードが取り入れられている。当時を知る世代の心をくすぐることは必至だ。
90年代マンガの映画化ではないが、当時の空気を取り入れた実写映画作品もある。8月31日公開予定の韓国映画のリメイク『SUNNY 強い気持ち・強い愛』だ。舞台を日本に移し、小沢健二をはじめとするJ-POPやコギャルファッションといった90年代カルチャーを散りばめて再構築される。
また17年には、93年に放送された岩井俊二の名作テレビドラマ『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』がアニメーション映画化されている。マンガ、ドラマ、そして音楽――映画化は、90年代カルチャーが再び脚光を浴び、さらには若い世代に語り継がれていくきっかけになるだろう。
(日経エンタテインメント!編集 羽田健治)
[日経エンタテインメント! 2018年4月号の記事を再構成]
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