忙しいときほど要注意 印象を良くする基本のマナー
年度替わりの時期は、忙しくて誰もが自然とせわしなくなりがちです。新しく職場に来る人、職場を去る人があり、人間関係が変化する時期でもあります。忙しいとはいえ、第一印象を左右する基本のマナーをおろそかにはしたくないもの。マナーコンサルタントの西出ひろ子さんが、他人からは意外に気になる注意点を解説します。
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忙しいとき、人は自分では分からないものですが、他人に対する態度や表情、行動に余裕のなさがつい表れてしまうものです。この記事をご覧になっているみなさんは、一定の経験を積んだベテランとして活躍されている方も多いと思いますので、ベテランとしての余裕を感じさせるふるまいがさらにすてきな印象を与えるはずです。
おさらいになりますが、何ごとも基本は大切です。マナーの基本は表情、態度、あいさつ、身だしなみ、言葉づかいや話し方、返事、相手の名前を呼ぶこと。これらを常に忘れないようにしましょう。
では、他人の目から見て気になる注意点について順にお話しします。
足を組むと威圧的な印象に
第一印象を左右するのはまずは見た目です。身だしなみと表情、そして立ち居振る舞いやしぐさが気になりますね。
男女を問わず、またベテランであればあるほど、最初に「上から目線」と感じさせる横柄な印象を与えないように心されたほうがいいと思います。ビジネスパーソンの方をたくさん拝見していてよく気になるのが、まず座り方です。椅子に深く座って、椅子の背にもたれたり、腕や足を組んだりする方が意外と多いですね。特に社内でのコミュニケーションのときについやってしまいがちです。相手によっては威圧的な印象を与えてしまいます。
足を組むというのは、意外に海外でも行儀が悪いとみなされています。特に英国では女性が足を組むのは控えたほうがいいということになっていた時代がありました。現在でも英国王室の女性は足を組みません。また、足を組むと体にゆがみが出るともいわれていますので、健康面からもやはり控えたほうがいいでしょう。座っているときはひざとひざをつけて、つま先とかかとをそろえることを意識してください。そうすると上半身の軸がしっかり立つので姿勢が美しくなります。
ただ面白いことに、英国王室の女性でも足首だけを交差させるのは差し支えないようです。一方、欧米のビジネスシーンにて男性は脚を組んでも問題ないとされているようです。
また、机の下だから足はどうなっていても見えないだろうと思っても、他の人の位置からは実は丸見えだったりするものです。先日ある研修会で、机の下で靴を脱いでいた管理職の方がいらっしゃいました。仕事中につい、気を抜いてリラックスすることもありますが、誰に見られているか分かりませんので、TPOに応じて注意することをおすすめします。
「心を開いている」と印象づける手のしぐさ
基本的なしぐさでは、手の動かし方も大変気になります。せわしなく見えないようにするには、必ず「両手」での動作を意識してください。例えば資料などを手渡すときは、片手ではなく必ず両手で渡します。指は広げずに、いつも軽くつけておくよう意識します。
相手と話をするときの手も印象を左右します。前にもお話ししましたが、中国では手の甲を「陰」、手のひらを「陽」と考えます。部下の話を聞く際などは、全面的に手のひらを見せるのはちょっと変ですが、少し手のひらが見えるくらいで両手を軽く重ねると、心を開いていますよという印象を与えます。これなら相手も話しやすく、相談などがしやすくなるでしょう。
話をするとき、まっすぐ相手に正対すると少々怖い印象になることがあります。そんなとき、女性の場合は首をほんの少し傾けると女性らしい印象になります。男性の場合はやや難しいかもしれませんが。
話をする際に、これも他人からはかなり気になるのが「相づち」の打ち方です。それなりの役職についている方でよく「ええ、ええ」と相づちを打つ方がいらっしゃいますが、これは「上から目線」的、また「耳障り」な印象を抱く方が多いようですので意識して注意してみましょう。
最後に、二度目以降にお会いする方へのあいさつです。「あいさつは先手」とよくいいますが、先日ある場所で、知っている方に急に声を掛けられ、あいさつをされました。私よりも目上でかなりベテランの女性でありながら、向こうから先にあいさつをしてくださるのは本当にうれしく、その方の印象がぐんと良くなりますね。やはり、仕事で評価される方は常に謙虚で、先手のコミュニケーションを取るのだとあらためて思いました。「あいさつは先手」は本当にすごい効果がありますので、ぜひ日ごろからなさってみてください。
マナーコンサルタント・美道家。英国の民間企業WitH Ltd.ウイズ・リミテッド日本支社代表を務めたのち、ヒロコマナーグループの代表としてウイズ株式会社、HIROKO ROSE株式会社、一般社団法人マナー教育推進協会を設立。企業などでの研修・コンサルティング、マナーを軸に健康、美容、ファッションなどトータルな人材育成とコンサルティングを行う。オリジナルブランド「ヒロコスタイル」でマナーに則した洋服やバッグもプロデュース。最新刊「ビジネスでもプライベートでも役立つマナーの基本」(マイナビ出版)など著書は80冊以上。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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