生命保険料はなぜ変わるの? 長寿化で死亡率が低下標準生命表、11年ぶり改定 2割値下げも

良男 保険料は死亡率だけで決まるのかい?

幸子 保険料は大きく分けて「純保険料」と「付加保険料」の2つから構成するの。純保険料は今回改定となる予定死亡率や、加入者に約束する将来の利回りである予定利率などを基に算定するわ。付加保険料は予定事業費率、つまり保険会社の事業に必要な経費や広告費などの予算に応じて決められるの。

 死亡率が下がると、すべての保険が値下げになるの?

幸子 いいえ。死亡率が下がると長生きする分、病気をしたり介護が必要になったりする人が増えるわ。だから一般的に医療保険や介護保険といった生存給付型と呼ばれる分類の保険料は上がる傾向にあるのよ。

良男 でも、医療保険の値上げ幅は小さいね。

幸子 本来、死亡率が低下したら医療保険が値上げになってもおかしくはないけど、そうではないわ。保険会社としては加入者がより安い他社の保険を選んでしまう恐れがあるので、あまり値上げをしたくないの。住友生命主計部数理室長の山口恵司さんは「保険料率を決める別の要素を見直すことで値上げを回避するか、最小限にする努力をする会社もある」そうよ。

 別の要素って?

幸子 たとえば死亡率が下がっても、保険会社が経費削減などをして付加保険料分を減らせば保険料はあまり変えずに済むわよね。それにチューリッヒ生命チーフ・マーケティング・プロポジション・オフィサーの野口俊哉さんは「付加保険料が減らせなくても保険会社が自社で蓄積している入院発生率や平均在院日数など実績データを使うことで、保険料を大幅に変えずに済む場合もある」と話しているわ。また、4月から死亡保障型などの保険料率を引き下げるオリックス生命は、医療保険の保険料の据え置きを決めたの。

良男 ところで「生命表」って毎年、発表されていなかったっけ?

幸子 生命表と呼ばれる統計は主に3種類あるの。厚生労働省が人口推計や人口動態統計を基に毎年公表するのが「簡易生命表」。同省が国勢調査や人口動態統計から5年に1度公表するのが「完全生命表」。生命保険会社のデータや完全生命表を基に、保険業界で作る日本アクチュアリー会が算出するのが「標準生命表」よ。

 どんな違いがあるの?

幸子 いずれも性別や年齢別に死亡率、生存率、平均余命などを調べているけど、簡易生命表は推計の人口を使い、完全生命表は確定の人口を使う点などで違いがあるわ。標準生命表は保険の加入者が亡くなった件数の統計を基に作られているので「経験生命表」と呼ばれることもあるの。生命保険は人の生死に関わる金融商品だから、こうした様々なデータを基に緻密な計算をして保険料が決められているのよ。

■加入急がず、家計と相談
ファイナンシャルプランナー 岩城みずほさん
保険料率の引き下げは、保険の加入を検討している人にとっては朗報です。ただ保険料が下がるからと新たな保険に加入したり、より保障金額の多い保険を選んだりするのは早計です。生命保険文化センターの調べでは、2人以上の一般世帯が負担する生命保険料は年間38万5000円(2015年度)に上ります。
亡くなった後の遺族の生活や病気やけがなど様々なリスクに備えるのが保険です。お金の使い道を限定されない貯蓄は、最も大切な保険ともいえます。保険料の払いすぎで貯蓄ができなくなるのは本末転倒です。また、月々の医療費の上限を決める高額療養費制度など健康保険の制度を知っておくことも重要です。保険を検討するなら、まずは家計や生活設計を見直し、保険料に費やせる額と必要な保障を見極めましょう。
(聞き手は岡田真知子)

[日本経済新聞夕刊2018年3月14日付]

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