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まさかの住宅ローン破産? 「普通の家計」の大誤算 ゴールから逆算する家計改善メソッド(4)

2018/3/27

最後に保険です。Fさんは「家族のため」と大手生命保険会社の「定期付終身保険」に加入した上で、がん保険の特約もつけていました。定期付終身保険とは、掛け捨ての定期保険(生命保険)をベースに、一生涯保証が続く終身保険を上乗せしたものです。

ただFさんは住宅ローンを支払っている最中ですので、団体信用生命保険(団信)にも加入していました。こちらにも死亡時の保障がありますので、いわば保険の一部が重複した状態でした。そこで大手生保の保険は解約。別途、割安な収入保障保険と終身保険などを組み合わせて、月に2万5000円を削減できる見通しとなりました。

これら3支出の見直しで、月に7万1000円、年間85万円もの削減が可能となりました。住宅ローンの見直しも含めると、月に13万7000円(年間164万円)の支出減で、想定したゴールの一つである「年間150万円の支出削減」は十分に達成できそうです。一気に「安泰家計」への道が見えてきました。

図4 住宅ローンの借り換えや生活費の見直しで月に13万7000円を捻出。年間164万円を削減できる見通しに

■老後資金はiDeCoで増やす

もう一つのゴールである「老後資金」については、支出削減で浮いたお金の一部を運用して増やすことにします。具体的には、Fさんに個人型確定拠出年金(iDeCo)を活用してもらうことにしました。Fさんの会社には企業年金(確定給付企業年金)があるので、拠出金額は最大で月に1万2000円。リスクをあまり取りたくないとのことなので、債券ファンド中心で運用するようアドバイスしました。

iDeCoの最大のメリットは、「掛け金が全額所得控除できる」(節税できる)という点にあります。運用益の非課税効果もありますが、それ以上に掛け金の節税効果が極めて大きく、ほぼノーリスクで資産を増やせます(正確には支払う税金が減り、その分だけ手取りが増えます)。60歳まで掛け金や運用益を引き出せないというデメリットもありますが、資産形成を考えるなら真っ先に活用すべき制度でしょう。

Fさんは現在45歳(今年中に46歳)ですので、60歳まであと14年強あります。債券ファンド中心で年間1%の利回りで運用した場合、運用益は14年間で14万7000円ほど。さらに、iDeCoの掛け金が所得控除の対象となるため、14年間では実に60万4800円もの節税になります。結果として、元本201万6000円に対して、トータルでは75万円ものリターンが得られるのです。

図5 iDeCoを利用した場合の利益。14年間で75万円ほどのメリットを得られる

なお、iDeCo以外の非課税型の運用手法としては、「NISA」(少額投資非課税制度)や「つみたてNISA」がありますが、今回は見送ることにしました。例えば、つみたてNISAなら年間40万円まで投資できますが、家計を立て直し中のFさんには運用よりもまずは貯蓄を増やしてもらいたいところ。今後、貯蓄が増えてきた際に改めて検討することとして、当面の資産形成はiDeCoでいくことにしました。

こうした家計改善を盛り込んでシミュレートした結果が下の図です。教育費がかかる時期には一時的に貯蓄を取り崩すこともありますが、資産が赤字転落することはありません。60歳時点では、退職金で住宅ローンを一括返済した後も750万円の資産が残っています。これだけでは老後の資金が不足しますので、Fさんが65歳になる年まで夫婦ともに働いていただき、年金生活に入ることとしました。最終的に、Fさんが89歳の時点まで資産が残る結果となりました。

図6 家計改善後の生涯資産シミュレーション結果。Fさんが89歳の年まで資産が残る

この結果を聞いて、「ひとまず何とかなりそうだと分かって安心しました」とFさん。家計にはまだメタボな部分もあるので、家族で相談して削れるところは削っていくとのことです。万が一、教育資金が家計を想定以上に圧迫したら、奨学金を活用したり、公立への進学も検討すると話していました。

◇  ◇  ◇

なお今回、Fさんのケースでは金利変動リスクを考え、住宅ローンの借り換えでは固定金利(1.2%)を選びました。これだけでも月々の返済額は9万8000円となり、現在より6万6000円も減りましたが、変動金利(0.439%)の住宅ローンに借り換えた場合はどうなるのでしょうか。参考までに試算しますと、返済額は約8万6000円となり、現在の返済額の半額に近づきます。

支払利息の総額を比較してみましょう。借入金額4200万円に対して、固定金利3.1%で借り続けた場合、今後支払う利息の総額は約2440万円。これをFさんのように、購入から11年弱で固定金利1.2%のローンに借り換えた場合の総利息は約1750万円と、690万円もの利息をカットできる計算になります。変動金利0.439%に借り換えた場合は、金利が変わらなければ約1440万円。さらに310万円を削減できます。なお、いずれも60歳時点で退職金を使ってローン残債を一括で繰り上げ返済するものとしました。

金額だけをみると、「変動金利への借り換えもありかも?」と思われるかもしれませんが、個人的にはあまりお勧めできません。先ほど、固定金利1.2%と変動金利が0.439%の総利息の差は310万円とお話ししましたが、これは裏を返せば、変動金利が0.439%から1.2%に上昇すれば、総利息が310万円も増えることを意味します。同様に、3.1%まで上昇すれば1000万円も総利息が増えてしまうのです。

固定金利1.2%と変動金利0.439%の住宅ローンでは、月々の返済額の差は1万2000円。少なくない金額ですが、これを住宅ローン破産の「保険料」と考えれば、そう高くはないとも考えられます。目先の金額だけに惑わされず、数十年先を見据えたライフプランを練っていただければと思います。

前田晃介
株式会社マネープランナーズ代表取締役。不動産賃貸管理業を経て、ファイナンシャルプランナーに転身。独立系FP会社でライフプランニング、資産運用、不動産購入等のコンサルティング業務に従事したのちマネープランナーズを設立。年間100件以上の個別相談を受ける。CFP、1級FP技能士、宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者。
MILIZE(協力)
金融機関向けのソフトウエア開発やコンサルティング業務を手掛けるほか、個人向けの人生シミュレーションプラットフォーム「MILIZE」(https://milize.com/)を提供。給与や生活費のデータを入力すれば、現時点の生活費などの診断に加えて、将来の収支予測なども提示する。2017年11月に社名をAFGからMILIZE(ミライズ)に改称。

(マネー研究所 川崎慎介)

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