出世ナビ

学校のリーダー

ラ・サール生はスマホ禁止の寮で育つ 4割が医学部へ ラ・サール中学・高校のドミンゴ・ビヤミル校長

2018/3/18

むろん、寮生は塾や予備校とは無縁。「都会の進学校に通っても、塾に行かないと一流大学には合格できない。ラ・サールなら塾なしで丸ごと面倒見てくれるから、結果的に経済的だ」と40代のOBは話す。現在も生徒の3人に2人は九州の他県や首都圏、関西圏などの出身だ。

■スマホは禁止 「郷中教育」思わす生活

ラ・サールの授業風景=同校提供

寮内には、10床のベッドを備えた病室が2つあるほか、インフルエンザ対策のための複数の個室もある。不思議なのは何台も公衆電話があることだ。

「基本、スマートフォン(スマホ)はまだダメ。ラ・サール生はフェース・ツー・フェースでコミュニケーション力を高め、人間関係を学ぶことが大切です」。ドミンゴ校長はこう強調する。今どき珍しいが、寮生はスマホは禁止だ。一人でゲームアプリで遊んだり、LINEに興じることは許されない。

同級生や先輩、後輩との間で何事も納得いくまで話し合うのがモットーだ。中学に入って寮生活になると、ホームシックにかかる生徒が少なくない。それを慰めるのは同じ経験のある同室の先輩の役目だ。年上の西郷隆盛が年下の大久保利通らの面倒を見ながら、教えたという鹿児島独自の「郷中教育」に似ている。中学時代の8人部屋がこの空間だ。

ラ・サール名物の体育祭=同校提供

ここでは「ファミリースピリット」と呼ぶキリスト教の精神も学ぶことになる。常に3~4人の外国人のブラザーがいて、「隣人を自分のように愛せよ」を繰り返す。小学生まではワガママ放題に育てられ、最初は抵抗していた生徒たちも、いつのまにか他人に対する心配りや礼儀を教えられる。

ラ・サールはミッションスクールと地元鹿児島の伝統的な教育という東西の文化を見事に融合した学校といえるだろう。

高1になると、剣道か柔道の授業が週1で必修になるため、それぞれの専用の道場が校内にある。これも「武の国、薩摩」の伝統といえる。南九州とそれ以外の地域を紅白2つのチームに分けて競う名物の体育祭は「男くさくて激しい体育祭として地元で有名だ。棒倒しとか、けが人続出なんてときもあった」(谷口副校長)という。ミッション系のイメージとは違い、バンカラな校風だ。

■東進、ANA、野村のトップは先輩後輩

結果、ラ・サール生の人脈は「熱く」なる。「東進ハイスクール」を展開するナガセの永瀬昭幸社長。東大時代に塾を開いたが、講師にはラ・サールの後輩らを次々採用した。その中にはANAホールディングス社長の片野坂真哉氏もいる。かつて全日本空輸社長だった山元峯生氏も同校OBだ。永瀬氏は東大卒業後に野村証券に入社したが、野村ホールディングス会長の古賀信行氏も後輩だ。永瀬氏は「弟のラ・サール時代のクラスメートで、私もよく知っていました。本当は他の会社への就職が決まっていたのですが、私が野村に誘いました」という。

経済人では、ほかにも「ラ・サール時代はバスケットに夢中だった」というヤマハ発動機会長の柳弘之氏や、九州新幹線の開通に尽力したJR九州社長の青柳俊彦氏らがいる。同校出身者としては、一般にはタレントのラサール石井さんが有名だが、最近は経済人や政治家などが増えている。

ラ・サール在籍40年以上になる谷口副校長

谷口副校長は「確かに進学実績では開成や灘と競ったときほどの勢いはない。以前は東大理3の合格者は最多で15人ぐらい、灘を上回ったときもある。関東や関西からツアーを組んでラ・サールを受験していたが、今は都市圏にもいい進学校があるので、仕方がない面もある」という。ただ、ドミンゴ校長は「英国のイートン校とか、世界の名門校には寮生活を大事にしている学校が少なくない。ラ・サールは教養だけではなく、人間力も育てる」と強調する。

イートン・カレッジにはラ・サールから20人程度がサマースクールで訪れるが、「日本のほかの進学校よりもラ・サール生はコミュニケーション能力が高いと評される」(谷口副校長)という。寮を持つ地方の進学校で、ライバルでもある久留米大学付設高校(福岡県久留米市)、愛光高校(愛媛県松山市)は男女共学に変更し、進学実績を高めた。しかし、「男子と女子では成長のテンポが異なる」とあくまで男子校を貫くというラ・サール。維新から150年。未来の人材を育てるラ・サールの存在感は今も大きい。

(代慶達也)

マネジメント層に必要な4つのスキルを鍛える講座/日経ビジネススクール

日経ビジネススクールは、グローバルにビジネスを推進し、
社会に変革と活力をもたらす人材を育成します。

>> 一覧はこちら

出世ナビ 新着記事

ALL CHANNEL