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ポーランドで「ギョーザ」が人気 専門チェーンも繁盛

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白い壁に赤い文字で店名が描かれたしゃれた店構え。「ギョーザ」専門店と見受けられる。通りを歩くと、あれっ、さっきと同じ店。チェーン店なのか。さらに歩き続けること10分、このチェーンの店が、もうあと4軒。夕食時にあらためて向かうと、今度はすごい行列。たいした繁盛店ではないか。

実はこれ、日本のギョーザチェーン店のことではない。ポーランドの話だ。世界遺産に登録されているワルシャワ歴史的地区に向かう通りでのこと。しかも、ギョーザによく似たポーランドの伝統料理「ピエロギ」なのだ。後述するが、ルーツは中国のようである。

ピエロギは、小麦粉と水を混ぜ、こねてつくった生地を丸く抜き、そこにいろいろな具材をはさんで二つ折りにしてとじる。まさに、見た目はギョーザ。皮がギョーザよりも肉厚で、形も丸っこい。ゆでる「水ギョーザ」もあれば、「焼きギョーザ」もある。最近は、オーブンでローストするものもあるという。

具材はいろいろ。代表的なものは、ザワークラウトとキノコ入り。このほか、豚肉入り、ジャガイモとチーズが入ったロシア風、ホウレンソウ入り、ケシの実入りなどなど。イチゴやブルーベリー、ラズベリーなどデザート風のものもある。

ソースは溶かしバターやラードなどで、ローストとしたタマネギのみじん切りや、いためたベーコンのみじん切り、パン粉などが入っているものもある。デザート風には、サワークリームをたっぷりのせ、その上から砂糖をまぶす。ただ、あくまでデザート風なのであり、食事の一環だというから驚く(同様の具材でデザートとしてのピエロギもある)。

「Zapiecek」という冒頭の繁盛チェーン店。なるべく行列の短い店を探して、やっと入店した。さっそくピエロギを注文。「ピエロギ9個」というメニューがあり、「ゆで」と「焼き」のそれぞれで、9つの具材を選んだ。

ほどなく熱々のピエロギが運ばれてきた。ところが、「ゆで」と「焼き」の区別はつくが、外見が同じで中の具材の違いが分からない。豚肉入りは、小籠包のように肉汁がしみ出してくるので、あまりちびちび食べたくはない。デザート風はなるべく後になるよう、エイヤッで「ロシアンルーレット」に挑戦。次にどんな味が飛び出してくるのか、かえって楽しみが倍増した気がする。

ほくほくのピエロギをほおばって、冷たいビールで流し込むのは、日本と同じ。ただし、ポーランドでは、あつあつ、濃厚、具だくさんの伝統スープと合わせるのもおすすめだ。「Zapiecek」でも、ビーツの色鮮やかな「バルシチ」、鶏からだしをとる「ロスウ」、ライ麦を発酵させてつくる「ジュレック」など定番の伝統スープがずらりとそろっていた。

東洋文化研究者であり、日本の食文化についての著書もあるポーランド人のマグダレナ・トマシェフスカ=ボラウェク氏は自身の著書『ポーランド料理道』で、中国発祥のピエロギは13世紀にはポーランドで食べられていたと説明している。やはり、ルーツは中国のギョーザのようだ。ヤツェク・オドロヴオンズという聖人がキエフ(現在ウクライナの首都)からピエロギのレシピを初めてポーランドに持ってきたのが始まりだという。

伝説によれば、その聖人が1241年、タタール人がクラクフ(現在ポーランド第2の都市、古都であり日本の京都にあたる)に侵攻した際、ピエロギをつくって人々に配り、飢え死にから救ったという。そのときから「ピエロギ持ちの聖ヤツェク」と呼ばれるようになったとか。

ポーランドで食べてきたピエロギやほかの郷土料理について、より詳しく教えてもらおうと、在日ポーランド大使館を訪ねた。応じてくれたのは、広報担当で一等書記官のウルシュラ・オスミツカさん。「ピエロギはポーランドで伝統的な料理の一つ。夫は肉入り、息子は果物入りが大好きなんですよ」。

ただ、作るのが結構大変なので、クリスマスや結婚式、断食など、大勢の人が集まるお祭りの前に家族みんなで集まって作るのだという。ちなみにこの断食は、イスラム教のそれとは違い、キリスト教の祝日の復活祭の前にごちそうやお菓子を控えることを指す。肉料理も控えるという。

先の『ポーランド料理道』によれば、ピエロギの語源は諸説ある中で、「祭り」や「儀式」を意味する「piru」という古代スラブ語に由来するという説があるそうだ。そういえば、本家本元の中国のギョーザも春節(正月)に食べるごちそうとして、大みそかには家族総出でたくさん作ると聞く。

ちなみに、ポーランドのクリスマスには肉は食べない。だから、ピエロギはザワークラウトとキノコが主流。また、ウシュカ(小さい耳という意味)という小さいピエロギをスープに入れて食べるそう。これは中国料理のワンタンを思い起こさせる。寒い地方で小麦をおいしく、温かく食べる工夫はいずこも同じということか。

クリスマスに肉料理を控えるのなら、メイン料理として何を食べるのか。それは、コイの料理。日本で「コイは泥臭いから嫌いだわ」という人もいるように、ポーランドでも普段はあまり食べないという。しかし、このときだけは違うのだそう。

コイは、内蔵やウロコを取り除いて、幅4~5センチくらいの筒切りにし、塩コショウで味付けをし、小麦粉やパン粉をつけてソテーにしたり、フライにしたりする。ちなみに、クリスマスでコイを料理するときは、コイのウロコを家族人数分とっておき、きれいに洗って乾かしたものを、家族めいめいに渡す。それを財布の中に入れておくと幸運や金運が訪れるという言い伝えがあるそうだ。

このときのごちそうは、ピエロギやコイのほか、全部で12種類の料理が並ぶ。キリストの使徒が12人いたことに由来しているそう。夕食はイブの夕方、一番星が出るころから始まる。伝統的に大家族が集まり、あまり恋人や友人を呼ぶということはないらしい。とはいえ、ごちそうは家族人数分に1人分余計に用意する習慣があるという。孤独な一人暮らしの人や貧しい人の来訪に備えるという意味が込められている。

特別な日でも肉を控えるなど、質素なのがポーランド料理の特徴なのかとオスミツカさんに尋ねると、「ポーランドの伝統的な料理は、家庭料理が基本なんです。特徴はカロリーが高いことでしょうか。バター、生クリーム、ソースをたっぷり使うんですよ」と説明してくれた。家庭料理だから見栄えは素朴で派手さはない。しかし、バターなどをたっぷり使うため、濃厚でコクのある味わいとなる。

実際ポーランド旅行での食事を振り返ると、見た目は地味なのに、一口食べるとその深い味わいに、そしてその落差に驚かされたことを思い出す。例えば、ザワークラウトとキノコのスープは、具材が形なく崩れ、焦がしたクリームシチューの中でどろどろになっているように見える。一瞬ちゅうちょしたものの、食べてそのおいしさにびっくり、である。オスミツカさんもスープが大好きで、子供のころ、父親が毎日、違うスープをつくってくれた思い出があるという。なんと、1カ月に30種類だ。

そのオスミツカさんがポーランドを離れて最も懐かしい、そして食べたいと思う食品は何かと聞くと、パンなのだという。日本でも多種多様なパンが手に入ると思うのだが、「ヒマワリの種やクルミなどが入っていて、日本のパンより皮が硬い。日本にはないので毎週焼いていますよ。バターも、日本は種類が少なくてびっくり。ポーランドの食品スーパーのバター売り場にはたくさんの種類のバターが並んでいるのに……」。それはそうだろう。昨今、日本のバターは欠品続き。「お一人様1個まで」と、種類もさることながら、数がない。お恥ずかしい限りだ。

ところで、『ポーランド料理道』によれば、パンにバターを塗る習慣はポーランドで生まれたという。発案者は天動説を唱えたコペルニクス。当時、パンは雑菌の温床といわれ、不衛生な状態で保管されていた。医師でもあったコペルニクスは、パンにバターを塗ると、床に落ちて汚れたときに目立つため、不衛生なパンを避けることができることに気づいた。こうして街ではやっていた疫病を治めるのにも貢献したという。

さて、こんなポーランド料理を日本でも食べたいと探したところ、以前本欄で紹介した世界各国の朝食を2カ月ごとに変えて提供する「ワールド・ブレックファスト・オールデイ」が、ちょうどこの2月と3月にポーランドの朝食を出していた(「世界の朝食にこだわる専門店 次々紹介、はや26カ国」参照)。

毎日決まったものを食べる朝食にこそ、その国の料理や食文化のエッセンスがつまっている。だから朝食を通してその国が理解できるとして、店主の木村顕さんが企画したのがこの店。朝7時半から夜8時まで終日、朝食メニューを提供する。2013年の開店から数えて、ポーランドは30カ国目だ。

朝食メニューの内容は、リンゴが入ったパンケーキの「ラツーシュキ」、ジャガイモの入ったパンケーキの「プラツキ」、白チーズの「トゥファルグ」、ポーランドのソーセージの「キエウバサ」をワンプレートにしている。いずれも、ポーランドの朝食では定番のもの。しかし、この店の目的は朝食だけではなく、その国を知ってもらうことなので、伝統料理は外せない。普段朝食には食べない「ピエロギ」や「ジュレック」もサイドメニューとしてメニューに加えている。

「旧東欧諸国は一般に、かわいい雑貨や素朴なお菓子が多く女性に人気がありますが、ポーランドは予想以上の人気で、驚いています」と木村さん。来店の少ない時間帯を選んで取材に応じてもらったが、確かにその脇で若い女性グループが入れ代わり立ち代わりポーランドの朝ご飯に興じていた。

ポーランドは、今年ロシアで開催されるサッカーのワールドカップで同じリーグで対戦する。また、今年はポーランド独立回復100周年、来年は日本との国交樹立100周年と、何かと日本と縁があるようだ。食を通じて、ひそかなポーランドブームを楽しみたい。

(中野栄子)

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