「チェアスキー」日本で進化 トヨタの技術でより軽く長野パラでアルミ採用、平昌はコンピューター解析で磨き

強度アップとともに、軽量化のためにフレームをアルミニウム合金にするさらなる進化を支えたのが、福祉機器メーカーの日進医療器(愛知県)だ。付き合いがあった同センターの依頼で開発に参加した日進は、強度は高いが加工の難しいアルミのフレームを実現。98年長野パラリンピックで日本選手が使用、広く一般発売された「長野モデル」に結実させた。

98年長野パラリンピックで使われた長野モデル(日進医療器提供)

その後、パラリンピックごとに新しいモデルを開発。2010年バンクーバー大会前から外国にも販売を始めた。日進の山田賀久課長は「米国とカナダチームの合同合宿で使ってもらったら、健常者の時のスキーと同じ感覚で滑れて懐かしいと言われ、うれしかった」と述懐する。海外での人気はうなぎ登りで、14年ソチ大会ではアルペン男子15個のメダルのうち、11個が日進製を使った結果だったという。

今回、「巨人」トヨタの参入は14年8月にアルペン日本代表の森井大輝が同社に転職したことがきっかけだ。森井はテレビ番組で見た豊田章男同社社長の車作りへの思いに共鳴。ソチ大会でも金メダルを逃し、海外勢の台頭を目の当たりにしたことから、入社後、新たなチェアスキー開発の必要性を直訴した。

「隼」を前にした日進医療器の山田課長(左)とトヨタ自動車の榎本主任

これを受け15年夏、日進との共同プロジェクトがスタート。普段は自動車の設計をしているトヨタの榎本朋仁主任は「弊社がパラリンピックのパートナーとなり、アスリートへの支援を強化してトヨタ製品にも生かしたい」と理由を説明する。

ここで威力を発揮したのが、コンピューターの解析ソフトだ。車両開発に使う同社独自のソフトをチェアスキーにも応用した。「スキーの動きを解析して正しい結果が出るか疑問だった。でも、従来の日進のモデルのデータを入れると、フレームのここが弱いと出てきた部分が、過去に壊れた部分と一致したのでいけると確認できた」と榎本主任。日進の山田課長も「これまでの経験則でやってきた方法ではできなかった」と舌を巻く。

ソフトのおかげでフレームの強度を保ったまま、必要のない部分は省いて軽量化することに成功。約11キロだったソチモデルに比べ1キロ以上軽くなった。森井は「リカバリーをしようとする時に動作をものすごく速く行えるようになった」と評価。榎本主任は「彼は一つも妥協しない。車開発の仕事以上の緊張感があり、携われたのは幸せだった」とエンジニア冥利に尽きるといった表情だ。

17年9月に完成した新型チェアスキーの名前は「隼(はやぶさ)」。「響きがいいのと、速くてかっこいいイメージがある。漢字一文字だと海外でもうけるかな、というのもあった」と山田課長は話す。平昌パラリンピックの舞台で、ニッポンのモノ作りの粋を世界に知らしめたい。

(摂待卓)

[日本経済新聞朝刊2018年3月10日付を再構成]

チェアスキーを手がける日進医療器の創業の原点は1964年の東京パラリンピックにありました。こちら(「東京パラから巣立った人たち 障害者の自立は道なき道」)もご覧ください。

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