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利上げの影響は軽微? 米国REITの仕込み時到来か 世界のどこに投資する?(17)海外不動産

2018/3/14

写真はイメージ=PIXTA

 海外不動産に投資する方法は、現物だけでなく不動産投資信託(REIT)を活用する手もある。REITで運用する投信を使えば、日本の証券会社で少額から投資でき、現物に比べ流動性も高い。そこでここから2回に分けて海外REITの世界を見ていこう。

■REITといえば米国、歴史も最長

 日本では2001年に「J-REIT」として上場REITが誕生。昨今では本数も増え、日本の個人投資家の間でも認知度が高まってきたが、REITの本場は何といっても米国だ。1960年に制度が導入されており、歴史は最長。時価総額は約100兆円に達する。

 だが近年、米国REITは価格が低下しており、純資産も減少傾向にある。一因が米利上げ観測の高まりだ。世界の市場は2月の世界株価急落に代表されるように、米利上げの動きに反応しやすい地合いになっている。不動産投資の世界に目を向ければ、「利上げ=返済負担の上昇=ネガティブな影響」と捉えられやすい。では、実際はどうなのか。米国REITで運用する投信を手掛けるフィデリティ・インベストメンツのポートフォリオ・マネージャー、スティーブ・ビューラー氏に聞いた。

――米国REITの価格が低下している。背景には何があるのか。

スティーブ・ビューラー氏 1998年より、米国REITに投資する「フィデリティ・リアルエステイト・インベストメント・ポートフォリオ」の運用に携わる。2016年に全米不動産投資信託協会(NAREIT)より功労賞を受賞

 「いくつかの理由がある。近年、ナスダックを含む米国株市場は良好さを維持する一方、配当を基礎とした(景気変動に左右されない)ディフェンシブ銘柄として捉えられている米国REITの株価推移が振るわなかった。理由の1つは、商業用不動産の賃料の伸びが減速していることだ。米経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)は良好で、賃料は増加しているが、2~3年前ほどのペースではない。

 第2の理由が米利上げだ。この数カ月間で長期金利が上昇したため、米国REITの配当利回りの魅力が相対的に低下した。この結果、米国や日本などからの投資資金が流出した」

――現在の米国REIT市場をどう見ているか。

 「REITの資金調達環境は極めて良好であり、負債も少ない。割安度の指標から見ても、現状のREIT価格は魅力的だといえる。今、資産配分の比率を高めにしているのは産業物流施設だ。電子商取引(EC)の供給業者などの需要が高く、新規の物流施設の供給があっても強い需要で十分吸収されている。

 ただ、今後の米国REIT市場の行方は株式市場の動向にも左右される。2月上旬からの相場下落が小さな調整で終われば、REIT価格には好影響だ。米国REITでは保有不動産に対するREIT価格の割安さから、(投資ファンドや不動産会社などがREITを買収し、非公開にする)非上場化の動きが見込まれ、(『玉不足』による)REIT市場の反発が期待できる」

■「不動産王」大統領の影響は小さい

――トランプ米大統領は「不動産王」と言われてきた。政権が米不動産市況に与える影響をどう見ているか。

 「現実には影響は小さい。米政権は法人税制改革や各種経済政策を実施しており、ホテルやデータセンターなど幅広い商業用資産の需要拡大につながる。間接的にGDP(国内総生産)が押し上がり、好影響も生まれる。ただし、トランプ氏であることによる直接的な不動産市況への効果は判断しにくい」

――実際に米国の不動産需要は旺盛なのか。

 「オフィス物件は割安であり、投資妙味があると見ている。テクノロジー、バイオ、SNSなどの企業のオフィス入居需要は高い。サンフランシスコ、ロサンゼルス、シアトル、私の住むボストンなどの主要都市では雇用が増えているため、オフィスの需要が旺盛なのだ。雇用の堅調さを受け、住居セクターのニーズも旺盛になっている。集合住宅に長く住むようになれば、住居の家賃収入は増えるという好循環がある」

――一方、投資家は利上げ動向に引き続き敏感だ。米国REITにネガティブな影響は出ないのか。

 「私はあまりネガティブには見ていない。米国の金利が上昇し続ければ(=好景気)、ファンダメンタルズの拡大から米株式相場は上昇するというのが基本的な考え方だ。これに伴い、米国REITも良い成績を収めるはずだ。ヘッジファンドなどプライベートファンドが米国の不動産に投資する動きは依然として活発だ。不動産相場が大きく崩れる可能性は低いと見ている」

――米国REITに対する日本の投資家の動きをどう見ているか。

 「日本の投資家の存在は大きい。15年間の運用経験を振り返ると、興味深いことに日本の投資家はとてもよいタイミングで投資している。06~07年前半の相場が高かった時期に日本の投資家は米国REIT市場から退出していたのに対し、08年~09年の相場のボトム期には逆に流入していた。米国の商業用不動産の投資家構成比率を見ると、日本からの投資は2~3年前は10%だったのに対し、現状は約6%まで下がっている。過去の経験から言って、もし今後日本の投資家が米国REIT市場に戻ってきたら、それは米国REITにとって相場上昇を示す良いサインかもしれない」

◇  ◇  ◇

 米国REITの先行きについては見方が分かれる。米経済の成長率見通しは2%台で、現段階では大きなマイナス要因はない。ただし利上げが進めば債務の返済負担が拡大するとの懸念から、REITの基準価格は下落しており、資金も流出しがちだった。

 これに関し、米国REIT全体の負債比率は09年3月末の約65%から足元で3割強まで低下するなど、負担増のマイナス要因は減っているという。もともとREITは、組み入れている不動産の賃料収入や売却益など利益の大部分が配当として投資家に分配されるので、株式に比べ投資効率が高いと言われてきた。米国経済の将来の成長性にかけるならば、米国REITを価格が下がっている今のうちに仕込む価値はあるかもしれない。

(マネー報道部 南毅)

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