サルのクローン誕生、霊長類で初 ヒトへの応用は
中国の研究チームが2018年1月24日、世界で初めてカニクイザルの体細胞クローンを誕生させたと米国の科学誌『セル』電子版に発表した。用いられたのは有名なクローン羊「ドリー」を誕生させたのと同じ技術。霊長類で成功したのは初めてのことだ。誕生した2匹の映像をご覧いただこう。
2匹のサルは、1匹のサルの胎児の体細胞から作られたクローンで、完全に同じ遺伝子を持つ。この成功は生物医学研究の未知の領域を開く可能性があり、同じ霊長類であるヒトのクローン作りをめぐる論争を引き起こすことは確実だ。
厳密にいうと、クローンサルが作られたのは今回が初めてではない。1999年には、アカゲザルの初期胚を分割するという方法で、クローンが作られている。しかし、今回は「体細胞核移植」という手法により、クローンサルが作られた。胚を分割する手法では少数のクローンしか作れないが、体細胞核移植なら、理論的には1匹のドナーからいくらでもクローンを作ることができる。この手法を用いて、カスタマイズが可能で、遺伝的に均一な動物集団を作ることができれば、生物医学研究に大いに役に立つはずだ。
そこで科学者たちは、同じ手法を使ってウシやウサギやイヌなど20種以上のクローン動物を生み出してきた。そして今回、霊長類のクローンが初めて誕生した。中国の研究チームが開発した手法が画期的なのは、これがヒトをはじめとする他の霊長類にも使える可能性があるからだ。なお、研究チームはクローン人間を作る考えはないと強調している。
論文の共著者である中国科学院脳科学卓越革新センター所長のムーミン・プー氏は、「ヒトを含む霊長類のクローンを作るうえでの技術的な壁は打ち破られました」と話す。「私たちがこの壁を壊すことを選んだのは、ヒトの医療に役立つ実験動物を作るためです。この手法をヒトに応用するつもりはまったくありません」
(日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック 2018年1月26日付記事を再構成]
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