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前田敦子 「毎日着ける」、母とおそろい記念のピアス

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NIKKEI STYLE

AKB48でトップアイドルとして活躍した後、女優に転身。映画、ドラマ、舞台で様々な役柄に挑んでいる前田敦子さん。彼女が見せてくれたのは、「これだけはなくしたくない」という大切なピアスだった。

◇  ◇  ◇

「私、よくモノを落として、なくしちゃうタイプなんですよ。イヤリングなんかも、いつのまにか取れてなくなっちゃう。それで20歳になったころ、落ちないように、ピアスの穴を開けたんです。周りからは『開けるのは良くない』と言われたんですけど、それでも、おしゃれしたいな、と思って。

このダイヤのピアスは、当時、二十歳になった自分へのプレゼントとして買ったものです。高かったのですが、『これから仕事がうまくいくように』という願掛けの意味も込めて、奮発しました。それに、穴がふさがらないように毎日何か着けてなきゃいけないので、せっかくなら本当に良いものを着けていたいなと思って、これにしました。

実はこのピアス、2組買ったんですよ。二十歳になったし、お母さんにちゃんとしたプレゼントをしたいなと思って、お母さんの分とおそろいで。お母さんも私も肌が強い方じゃないので、『これだったら大丈夫かな?』と思ったのも、選んだ理由でしたね」

20歳になった2011年は、AKB48選抜総選挙で1位になり、さらに映画やゴールデンタイムのドラマの主演に初めて挑戦した年。「人生で一番忙しかったです。もう覚えてないくらい」と笑うが、それでもどうしても欲しかった記念のもの、それがこのピアスだ。

「お母さんは大事にしすぎて、日常的には着けていないですね。でも私は、ほぼ毎日、着けてます。ほかにもピアスは持ってるんですけど、家に帰ったら、これに付け替えて生活するんですよ。お風呂にも付けたままで入るので、ダイヤに詳しい方に見せると驚かれますね。『大事にしてる?』って(笑)。

これを付けると、すごく落ち着きます。逆にこれがないと、落ち着かない。この間、なくした時は焦りました。別の箱に入れていただけで1週間くらいしたら見つかったんですけど、なくしたときは『終わった!』と思いましたね(笑)。

もし自分に子どもができたら、子どもや孫に受け継いでいきたいですね。これだけは絶対、なくしたくないです(笑)」

限界は作りたくない

2018年3月17日公開の出演作は、「素敵なダイナマイトスキャンダル」。1970~80年代に「写真時代」などのエロカルチャー誌をヒットさせた編集者・末井昭さんの人生を、「南瓜とマヨネーズ」の冨永昌敬監督が映画化した作品だ。前田さんは、末井さんの妻・牧子さん役を演じている。

「末井さんを演じた(柄本)佑さんと冨永監督とは、いつかご一緒したいと思っていたので、お話をいただいたときは、うれしかったです。

牧子さんは、独特な感性を持ってる方だと思いました。末井さんを陰で支えてはいますけど、あんまり末井さんのことを知ろうとしていない(笑)。女の恥じらいみたいなものにも縛られていなくて、自由。この男性社会の物語の中で、どう自分勝手でいられるかが大事なんだろうな、と思いながら演じました。

役作りでは、40代や50代の牧子さんも演じなければならないので、外見に頼った部分もありました。目の下にクマを描いたり、バブリーな髪型にしたり。ヘアメイクさんには、いろいろと試行錯誤してもらいました。

衣装は、『動物が描かれた洋服を着せたい』と監督がこだわっていて、衣装さんがいろいろ探してくれました。犬も着たし、いるかも着たし、アルパカみたいな、よくわかんない動物のも着ましたね(笑)。映画をよく見てもらうと、けっこう動物柄の服を着てるんですよ。たぶん監督の裏設定で、『牧子さんは動物好き』ということになっていたんだと思います(笑)」

映画で印象的なのは、末井さんの仕事ぶりだ。雑誌を売るために会社の電話でテレクラまがいのホットラインを始めたり、写真家の荒木さんらときわどいヌードに挑んでは警察に呼び出されたり…。ひょうひょうとしながらも過激な仕事ぶりが痛快だ。

「男らしくていいですよね。『嘘でしょ!?』っていうようなことを、たくさんなさっている(笑)。自分で限界を作らないというところは、すごく素敵だなと思いました。

自分も、そうでありたいなと思っています。『これはできない』っていう限界は、自分で作りたくないですね。興味を持ったら、全力でやる。末井さんはそれで警察が絡むまでやっちゃってる方ですけど、その姿勢は、お手本にしたいと思いました」

無類の映画好き。雑誌「AERA」に映画コラムを連載し、『前田敦子の映画手帖』として書籍化されたこともある。

「映画のDVDは棚に入りきらなくなって、最近は床に置いてますね。積み上がってます(笑)。

ジャンルは問わないんですけど、今、一番好きなのは、若尾文子さんの出演作を見ること。2~3年前かな、映画館で若尾さんの特集をやっていて、TSUTAYAでも特集コーナーができてたんですよ。その時に何気なく何本か見て、好きになりました。最近、どんどん若尾さん出演作のDVDが出てきているので、そのたびにAmazonで買って、1人で見てます。

今、好きな映画の仕事ができていて、幸せです。どんな女優になりたい、とかはないのですが、いかに長く続けていけるかというのが課題で、目標です。

長く続けるために必要なのは、やっぱり、精神力。そのためにも体を鍛えたり、きちんと食べたり、いろんなものを見て、経験することが大事だと思っています。だから私は、これからもいろいろ動き回っていくと思いますね。それが、仕事のプラスになるんじゃないかと思っています」

前田敦子
 1991年生まれ、千葉県出身。2005年に「AKB48 オープニングメンバーオーディション」に合格。中心メンバーとして活躍し、12年に卒業。以降、女優として映画、ドラマ、舞台で活躍中。主な映画出演作に、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(11年)、「イニシエーション・ラブ」(15年)、「モヒカン故郷に帰る」(16年)、「武曲 MUKOKU」(17年)、「散歩する侵略者」(17年)、「探偵はBARにいる3」(17年)など。ドラマに「毒島ゆり子のせきらら日記」(16年)、「民衆の敵~世の中、おかしくないですか!?~」(17年)などがある。

「素敵なダイマナイトスキャンダル」

岡山の田舎町で育った末井昭少年は、7歳の時、母親が隣家の息子とダイナマイトで心中するという衝撃的な死に触れる。青年になった末井は、工場への集団就職などを経て、『ウィークエンド・スーパー』などのエロ雑誌を創刊。その一方で、妻・牧子がいるにもかかわらず不倫に溺れていく……。監督・冨永昌敬 原作・末井昭(「素敵なダイマイトスキャンダル」ちくま文庫刊) 出演・柄本佑、前田敦子、三浦透子、峯田和伸、松重豊、村上淳、尾野真千子 2018年3月17日(土)~テアトル新宿、池袋シネマ・ロサほか全国ロードショー

(文 泊貴洋、写真 藤本和史)

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