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豆ごはん、春を先取り おいしく食べる「豆の豆知識」

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NIKKEI STYLE

この時期、スーパーもデパ地下も道の駅も、まあ豆だらけだ。野菜売り場の一番目立つ棚は、エンドウ豆の緑で埋め尽くされている。グリーンピースにキヌサヤ、スナップエンドウに砂糖ざや。そうそう、日本にたった1人しか生産者のいない「マーメラス」という豆も、大のお気に入りである。

エンドウ豆の仲間は、寒さには強いが暑さに弱い。そのため、うかうかしているとすぐ店頭から姿を消してしまう。だから「見かけたら買う、食べる」が正解。そうでないと、春に乗り遅れることになる。

食べ方は数々あるが、春を丸ごと楽しむのなら、生のグリーンピースを使った豆ごはんで決まりだ。さっそくだが我が家の豆ごはんの作り方を紹介しよう。

豆ごはんには先入れ方式と、あと混ぜ方式がある。先入れ方式の方が豆とコメのなじみがよく、ごはんとしての一体感はあるが、豆の色が悪くなる。あと混ぜ方式は豆とコメが少々そっぽを向いている感じはあるが、色は断然こちらの方が素晴らしい。好きな方法を選ぶといい。

うちの豆ごはんは、豆どっさり。その分豆の甘さが強くなるため、塩気もきっちり。そのまま食べておいしい、おかずいらずの豆ごはんだ。一度この分量で作ってみてほしい。

コメ1合に対して、豆の量はサヤつきで150グラム。塩小さじ2分の1。酒大さじ1。

【先入れ方式】 サヤから豆を出し、軽く洗って水気を切っておく。コメは好みの水加減に整えたあと、大さじ1の水を捨て、代わりに大さじ1の酒を入れる。塩を入れたらよく混ぜて溶かす。最後に豆をコメの上に乗せ、あとは炊飯器にお任せだ。

【あと混ぜ方式】 先入れと分量は同じ。まず先に豆をゆでておく。柔らかくなったらゆで汁をこし、豆もゆで汁も冷ます。このゆで汁に塩と酒を加えたもので、コメを炊く。炊き上がったら、ゆでておいた豆を混ぜる。さあ、炊きたてを召し上がれ!

私は春のエンドウ豆が好きだ。大好きだ。定食のご飯を豆ごはんにできるから、という理由で通い続けた店がある。人生でもっとも愛した駅弁は、豆ごはんが理由だ。豆さえ入っていればゴキゲンなのだ。そしてエンドウ豆の卵とじも大好きだ。卵とじがいつもメニューにある、という理由で通い続けた店がある。人生でもっとも愛した居酒屋は、お通しが卵とじだからだ。豆ごはんと豆の卵とじの両方を注文して「おねえさん、豆ばかりやな」と言われたことすらある。好きなのだ。

もちろん和食以外でも豆を楽しみたい。前菜かスープかをチョイスできる、おフレンチな店で「本日のスープは季節のグリーンピースでござい」などと言われたら、みなまで言い終わらないうちにもう「スープで!」と叫んでしまう。

気軽なカレーランチでキーマに青豆が入っているのを目ざとく見つけ「あ、マトンやめてキーマにします」と変更したことは何度もある。そして最高に好きな中華料理のメニューは「青豆炒蝦仁」、エンドウ豆とエビのむきみの料理だ。私の好きな要素だけを組み合わせたような料理で、これがメニューにあって注文しなかったことはない。

同じくイタリアンチェーン「サイゼリヤ」でも数年来、食べずに店を出たことのないマストアイテムがある。「青豆の温サラダ」だ。柔らかく甘いグリーンピースとベーコンに、とろりとろける温玉。おいしいだけでなく「野菜を食べた」という満足感と、控えめなお値段も相まって、外食時の強い味方だ。私など、時に青豆とグラスワインだけでお昼ごはんを済ませてしまうことすらある。

しかし不思議なものだ。子供のころはグリーンピースは苦手だった。できれば食べたくなかった。最近はあまり見かけないが、昭和の時代はカツ丼でも、天津飯でも、チャーハンでも、オムライスでも、なぜかやたらとグリーンピースが飾りとして乗せられていたものだ。

カツ丼は大好きだが、グリーンピースは食べたくない。そこで親の目を盗んで弟の丼にグリーンピースをこっそり移動する。弟は嫌いなグリーンピースが突然増えたもんだから、わんわん泣き始める。すぐ親に見つかってド叱られる。そんなことの繰り返しで、ますますグリーンピースが憎らしかった。まさか大人になって、こんなにグリーンピースばかり食べるようになるとは、思いもよらなかった。

グリーンピースは、あのころと今では別物なのだろう。粉っぽくポクポク、パサパサした食感がイヤでたまらなかったが、今はどこで買っても柔らかく、甘く、ぷりぷりしている。粉っぽいグリーンピースなど、探すほうが難しいくらいだ。特に冷凍グリーンピースはハズレがなく、冷凍庫の常備品である。

だが冷凍庫にまだあるのはわかっていても、生のグリーンピースは買ってしまう。冷凍品には入手がたやすい、値段も味も安定しているなどの利点がある。逆に生グリーンピースには、むくのが面倒、ものによって当たりはずれも大きい、結構高いなどの欠点がある。しかし生を一度食べてもらえれば、欠点を帳消しにしてしまう魅力がわかるだろう。あの味、あの香りは、生でしか味わえないものだ。

ところで私はよく「エンドウ豆って何ですか? グリーンピースとはどう違うんですか?」などと聞かれたりする。実はこの質問の仕方は間違いである。これでは「人間とじろまるはどう違うんですか?」と聞いているようなものだ。「人間」にあたるのが、エンドウ豆。マメ科エンドウ属の総称だ。そして「じろまる」にあたるのが、グリーンピースである。

つまり「人間を大きく分けると女性と男性に分けられる。その女性のうちの1人がじろまるである」というのと「エンドウ豆を大きく分けると実だけを食べる実エンドウと、サヤごと食べられるサヤエンドウに分けられる。その実エンドウのひとつがグリーンピースである」というのは、同じことなのだ。なので、もし名前がわからなかったら「そこのエンドウ豆」と言っておけばいい。間違いではない。他人に向かって「そこの人間」と呼びかけるよりは、ずっと違和感ない。

エンドウ豆は、日本では長らく「のらまめ」、つまりそこらの野良でとれるような取るに足らない豆という意味の呼び名がつけられていた。しかし他の国では少し事情が違った。何千年も前から食べられていたことの証拠に、ツタンカーメンの墓からエンドウ豆が出土したこともある。カトリーヌ・ド・メディチのこし入れの荷物の中には、エンドウ豆を使ったレシピがあったという。つまり「おいしい豆」かつ「王族もお気に入り」という認識だったのだ。

王族がおいしいと思うものは、当然ブラッシュアップされる。日本では見向きもされない間に、ヨーロッパでは次々と品種改良が行われ、乾物としての利用法以外に「未熟な豆を食べるとおいしい品種」や「サヤごと食べられる品種」などが次々と開発された。現代のグリーンピースやスナップエンドウなどは、ここから生まれたのだ。余談だが、エンドウ豆の品種改良の過程で発見されたのが、かの有名な「メンデルの法則」である。

日本のエンドウ豆の歴史が動いたのは、明治時代になってから。開国した日本へ、海外から新しい品種が続々とやってきてからである。新顔の野菜としてまず和食に受け入れられ、ごはんにもだしにもあう甘い香りが人気となり、またたくまに定着した。

もちろん文明開化で一気に広がった西洋料理にも、エンドウ豆はハイカラ野菜として使われた。うん、いや、それは問題ない。西洋からやってきた野菜を、西洋料理に使うのは当たり前だ。

だがチャーハンやらカツ丼にも使い始めたのは、どういうわけだろう。誰が始めたのだろう。ここからは推測にすぎないが、ひょっとしたら「ハイカラ野菜のグリーンピースを使えば料理がカッコよくなる」というイメージがあったのではないか。現代でいうところの「ちょっと盛った方がインスタ映えするんじゃね?」が「グリーンピースを3粒飾る」だったのではないか。そのせいで私はグリーンピースを避けるのに忙しく、弟は泣かねばならなかったのではないか。すべては歴史の闇の中だが。

春のエンドウ豆が出回り始めると、うちは数週間豆づくしになる。豆の旬は短い。どうかみなさんも悔いのないよう、豆の春をお楽しみいただきたい。まずは豆ごはんからだな。

(食ライター じろまるいずみ)

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