『イッテンモノ』 即席でコンビ、一点物の漫才を披露
ゲストを招いてトークしたあと、その内容をもとに即席コンビが漫才を披露する――。テレビ朝日系のバラエティー『イッテンモノ』はこれまでにない斬新な構成で人気を集めている。深夜のチャレンジ枠から生まれてレギュラー化し、徐々に視聴層を広げている。
レギュラー出演はサンドウィッチマン、千鳥、三四郎。ここにもう1組旬の芸人が加わり、俳優やタレントをゲストに招いてトークする。そのあと、ゲストが芸人2人を指名。選ばれた即席コンビが、トークで得られた情報をもとに、制限時間10分でゲストのための漫才を作って披露する。
2017年に月曜深夜に設けた、新企画のチャレンジ枠「キタイチ」から生まれて、同年10月からは水曜深夜でレギュラー放送されている。
プロデューサーの松本能幸氏は「最初は番組が本当に成立するか不安だった」と語る。「企画書の段階で『ぜひやりたい』と言ったんです。でも、芸人さんに負荷がかかる企画だなと。漫才って10分で作るものではないし、コンビも本来シャッフルするものじゃない(笑)。できるかどうか、分からないまま進めていった感じです」
特に頭を悩ませたのは出演交渉。即興漫才となると事前に準備できることはほとんどなく、企画に納得してもらえるかが鍵。「『挑戦したい企画があって』と説明して、リアクションを見ながら複数のコンビにお声をかけました。最終的に今の3組に『とりあえずやってみましょう』というお返事をいただけました」(松本氏、以下同)
結果として1回目の収録から手応えは得られたという。進行は千鳥が中心となり弟分の三四郎がいて、みんなの先輩となるサンドウィッチマンが何でも受け止めるという役割分担が何となくできあがった。サンドウィッチマンが40代半ば、千鳥が30代後半、三四郎が30代半ばと世代が分かれたのもプラスに働いた。
「トークのバランスがとてもいいなと。でもやっぱり、漫才のときは戸惑っていましたね。初回は千鳥のノブさんとサンドの伊達さんが指名されて、ツッコミ同士のペアになったんです。必死でネタを作ってもらって、それがまた10分でできたとは思えないほど面白くて。漫才師ってすごいなと再確認しました」
放送が始まってからはSNSで話題になった。途中からはシャッフルに幅を持たせることと、緊張感を保つために、ゲストMCが1組加わるように。銀シャリやタイムマシーン3号、尼神インターらが出演している。「芸人さんの間で口コミがあるようで最近は交渉が楽になりました(笑)。レギュラー陣も声をかけてくれたりします」
漫才が注目されがちだが見どころはトークだと位置づけている。「即興漫才はあくまでおまけ。一番見てほしいのはトークでゲストを深掘りするところ。自分の失敗談やエピソードを交えながら楽しくゲストを盛り上げる感じが見事です」
ゲストは自分が話したことがネタになった漫才を見て感激する人が多いという。目標は番組を定着させて、今後も育てていくこと。「視聴者はM2(35~49歳男性)、F2(35~49歳女性)層が多いですが、お笑い好きなM1(20~34歳男性)層も増えてきているので間口は広く、誰もが楽しめる番組にしたいです」
(「日経エンタテインメント!」3月号の記事を再構成 文/内藤悦子)
[日経MJ2018年3月9日付]
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