サッカー強いだけじゃ駄目 岡ちゃん、経営に目覚める「FC今治」オーナーが語る新サッカー論(上)

「2025年にはJ1で常時優勝争いをするチームとなり、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)で優勝を目指す」とビジョンに掲げている(写真:FC今治)

では、どうしたらいいのか。最初はサッカーを使って人を集める「今治モデル」を考えました。

サッカーでFC今治を頂点として、少年団や中学・高校生を含むピラミッドを作る。そこに所属するチームには、岡田メソッドを体得した指導者を無償で派遣する。頂点のFC今治が強くなれば、全国、そしてアジアから育成選手として入りたい若者や子供たちが来る。そして指導者も勉強しに来る。外から来た若者たちは、高齢者だけが住む家にホームステイして世代を超えて交流する。気がついたら、人口16万人弱の今治市がコスモポリタンとなって活気を取り戻す。これが今治モデル[注2]です。

[注2]岡田氏がオーナーに就任してから、FC今治は急速に力をつけている。16年シーズンに四国リーグから日本フットボールリーグ(JFL)に昇格。17年シーズンのJ3昇格こそ逃したものの、早期にJ1に昇格し、25年にはJ1で常に優勝争いすることを目指している。17年9月には5000人を収容できるJ3仕様のスタジアム「ありがとうサービス.夢スタジアム」を今治市に開いた。

サッカーで集められるのはせいぜい数百人

ところが、サッカーだけでは限界があることに気づきました。サッカーで人が集まるといっても、せいぜい何十~何百人にしかなりません。将来目標とするJ1に昇格するときには1万5000人収容のスタジアムが必要となるので、そこに「複合型スマートスタジアム」を建設したらどうかと考えました。

最近、日本ではスタジアムを建設するというとコスト面ばかりが注目されて批判を浴びたりします。しかし、行政が税金を投入して「実力値」以上のスタジアムを造るのが時代遅れというだけで、スタジアムが不要ということでは全くありません。スタジアムはある意味、「祭りの場」なんです。年間数十試合のサッカーの試合をやるためだけのスタジアムは、これからは要らないと思っています。スタジアムを常に人が集まる「場」にしなければいけません。

イタリアのサッカー強豪のユベントスは11~12年シーズンから、ショッピングモール、レストランなどを併設する複合型スタジアム「ユベントス・スタジアム」をホームにしています。

スタジアムを複合化することで、試合の2時間前から人が来てそこで過ごし、試合後も1時間半ほど人が残るようになりました。さらに、100マイル(160km)より遠方から訪れる人の割合が、以前の10%以下から55%に急増したそうです。サッカー好きのイタリア人でさえ、わざわざ100マイル離れた場所からは来なかったのに、「半日過ごせる場」にしたらそれが大きく変わったのです。

これは我々にとって貴重な情報でした。今治市は人口が16万人弱しかいません。1万5000人のスタジアムを満員にしようと思ったら、周辺の西条市、新居浜市などを合わせた50万人でも無理。バックヤードに100万人が必要になります。でも、スタジアムを複合型にして、隣接する(ショッピングセンターの)イオンモールなどと組んでエリア全体で半日過ごせる場所を造ればいけるのではないか、という考えに至りました。

経営者になってから3年余り。サッカーの監督をしているときは「面白いサッカーをして強ければ文句ないだろ」と周囲に話していましたが、今は「おまえ、面白いサッカーをして強いだけじゃダメだろ」と言っています(笑)。経営について何も知らないままやって、失敗を経験することによって考え方が変わりました。

(聞き手は日経 xTECH 内田泰)

岡田武史
1956年生まれ、早稲田大卒業。古河電工サッカー部時代に日本代表選手に選出される。95年から日本代表コーチ。97年に日本代表監督に就任し、日本初のW杯(フランス大会)出場。99年からはコンサドーレ札幌、横浜F・マリノスの監督を歴任。2007年に再び日本代表監督となり、2回目のW杯(南アフリカ大会)出場。12~13年に中国の杭州緑城の監督を務めた後、14年からFC今治のオーナー。

[スポーツイノベイターズOnline 2017年12月27日付の記事を再構成]

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