億り人3人に負けない投資法を聞いた1億円以上の資産を築いた個人投資家と聞くと、複雑で専門的な手法を駆使しているイメージがあるが、実は初心者がマネできる手法も多い。いずれも高確率で利益を得られる「負けない銘柄」がわかる億り人3人の「裏技」を公開する。
■Bコミ式:1つの数字だけで最強企業を見抜く
機関投資家として株・債券のファンドマネジャーなどを経験したのち個人投資家に転身。著書に『朝9時10分までにしっかり儲ける板読み投資術』(東洋経済新報社)ハンドルネーム「Bコミ」氏は、ファンダメンタル投資を軸とした中長期投資を得意とする。彼が初心者向けに勧めるのが、毎年配当を増やし続けている「連続増配」銘柄から配当利回りの高いものを買う「配当貴族」投資法だ。
配当貴族とは、長期連続増配企業を指す通称。連続増配は、増益よりも強い指標で、配当は一度上げたら下げにくいため、高い利益が続くという経営陣の自信とも取れる。「営業利益や内部留保などの細かい決算データを見なくても、経営が順調な企業を一発で探せる最強の指標」(Bコミ氏)という。経営陣が株主のことを重視している姿勢の表れでもある。
なかでも、12年を超える連続増配銘柄は、ライブドアショックやリーマンショック、震災などを乗り越えているため、抜群の経営安定度を持つ。中長期保有に最適な銘柄といえる。
12年以上の増配を達成している銘柄のなかから、なるべく配当利回りの高いものを選ぶのが鉄則だが、「目安は2%超え」(Bコミ氏)。株主優待があればなおよい。高めの配当収入を得られるだけでなく、今後も増配するごとに投資家の買いが集中し、株価の上昇が期待できるのも魅力だ。
連続増配を続けている会社。配当利回りは日経予想(2018年1月20日時点)このリストから異なる業種を選んで組み合わせた、分散投資も一つの手だ。連続増配銘柄はリース系の会社が多いなど偏りもあるので、分散投資によってさらに株価下落のリスクを下げることができる。
■かぶ1000式:短期・高確率で勝てる「PO投資法」
株式投資歴30年の個人投資家。投資手法はバリュー株投資主体で、年率+20%の運用利回りを目指す。当初目標としていた資産1億円は、11年3月に無事達成した割安株を主戦場にトレードしている「かぶ1000」氏が「高騰率手法」と言い切るのは、企業が行うPOのタイミングに合わせた投資法だ。
POは公募・売り出しと呼ばれ、企業が持ち株や新株を売り出すことを指す。価格が相場より3%くらい安く設定されるのが通例で、発表されると投資家により一度株価が下がるが、「しばらくすると株価が元の水準に戻っていく確率が高い」(かぶ1000氏)という。小幅ながら短期間のうちに高い確率で利益を得ることができる手法だ。
アサヒHDの例アサヒHDの例を見てみると、公募価格より株価が下回ることはなかった。その後、順調に株価が回復しているので、下げ止まったことを確認して買えば、利益は多くないが確実にもうかる仕組みだ。
ただし、PO株ならすべてもうかるわけではない。まず見るべきは、「受け渡し日から1週間後の株価」だ。これが公募価格を上回っていれば、PO株を買った投資家たちが一斉に売りに走る。売りが早期に終われば、株価が上昇トレンドに入るため、受け渡し1週間時点で株購入を決めれば、高確率で利益を得ることができる。逆に、株価が公募価格を下回っている場合は、「待ち」になり、いつまでたっても将来の売り圧力が消えず、株価の上昇が起こりづらい。また、1~3カ月後に公募価格を上回った場合でも買っていい。
もう一つ確認すべきは、その会社のPERとPBR。日経平均株価の構成企業の平均と比べて低いかどうかだ(今は約16倍と約1.4倍)。「株価の上昇余力をざっくり把握する、最も簡単なベンチマーク」(かぶ1000氏)。
POは17年だけでも100件以上あり、チャンスも多い。情報は2週間に1度程度の頻度で確認するといい。
■v-com2式:未来が読みやすい「昇格投資法」
サラリーマンと株式投資を両立させながら資産1.7億円を達成。企業決算を徹底的に分析する手法を得意とする。近著に『最強のファンダメンタル株式投資法』(ダイヤモンド社)サラリーマン投資家のv-com2氏が好む投資先は、単に割安なだけでなく、「今後株価が上がるきっかけ(カタリスト)が高確率で来る銘柄」(同氏)。そして、後日来ることが比較的読みやすいカタリストが、上場市場の東証1部への変更、いわゆる「昇格」だ。
東証1部になると、その銘柄を投資対象とする機関投資家が一気に増える。特に、TOPIX(東証株価指数)に連動するインデックスファンドは機械的に買う必要が生じるため、必然的に株価上昇をもたらすのだ。
そして、昇格の予測に役立つ「前兆現象」が、「株主優待を新設」「立会外分売(たちあいがいぶんばい)を実施」の2つだ。立会外分売とは、企業が自分の持ち株を個人に売り出すことで、POを小規模にしたものと考えればいい。
優待新設も立会外分売も、「株主数の増加」をもたらす。東証1部に昇格するには条件があるが、そのうち「株主数2200人以上」という条件だけを満たせずにいる企業が数多くある。彼らが昇格を狙って実施することが多い「作戦」がこの2つ。そのため、優待新設企業や立会外分売の実施企業が、その後昇格に至る可能性は高くなる。
川西倉庫の場合優待新設も立会外分売も、上場企業の発表内容が集まる「適時開示」で検索すれば情報が得られる。そういった発表を見たら、「株主数だけを満たせない東証2部の企業」であるかどうかをチェックすればいい。ただし、同じ発想の投資家の買いですでに上がってしまっていることもある点には要注意だ。
地方市場から東証2部に昇格した企業や東証2部のIPOが、1年後に東証1部へ昇格するパターンも多い。ルール上、東証2部昇格から1年間は1部には行けないため、逆に約1年前に東証2部に上がった企業は注目できる。
(日経トレンディ編集)
[日経トレンディ 2018年3月号記事を再構成]
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