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『君たちはどう生きるか』 読み終えて知る表紙の意味

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「リバイバルヒット」は数あれど、これほどスケールの大きな復活劇はめったにお目にかかれまい。実に80年も前の児童文学をマンガ化した『漫画 君たちはどう生きるか』(マガジンハウス)が、17年8月の発売後、半年余りで200万部に達する大ヒット中だ。

快進撃を目の当たりにした出版業界は色めき立っている。このヒットは、単に一作品が受けた突然変異ではない。「マンガ」の可能性が広がったことを示す象徴的な事例だからだ。ヒットした背景や印象的な表紙が生まれた理由などを仕掛け人に聞いた。

吉野源三郎による原作『君たちはどう生きるか』は、学業優秀な少年「コペル君」の周囲で起こるちょっとした出来事と、近所に住む「叔父さん」との交流をつづった児童文学だ。マンガ版でも、おじさんの職業などに若干の変更はあるものの、時代設定などはそのまま踏襲されている。

新潮社から初めて刊行された1937年は、ちょうど日中戦争が始まった年。その後、出版社を変えつつ書店に並び続け、82年から発行する岩波文庫版だけでも累計130万部に達する超ロングセラー小説だ。近年も「忘れられた作品」だったことはなく、テレビ番組などでもたびたび特集されている。

長く親しまれ続ける理由は、その特異な「生い立ち」にもある。執筆当時の日本では軍国主義が強まり、進歩的な言論が弾圧されていた。そんな時代背景の中で、せめて子供たちには進歩的な考え方を伝えようと「いわば隠れみのとして、児童文学の体裁を取って書かれた」(編集担当のマガジンハウス取締役・鉄尾周一氏)作品だ。

そのため、戦時中という時代性は前面に出ておらず、現代人が読んでもギャップのない普遍的なメッセージになっているのだ。タイトルから連想される自己啓発本的な説教臭さも少ない。あくまで物語であり、コペル君の日常的な体験を通じて、自然と生き方・考え方の指針に触れられる構成だ。

マンガ版の発売後、まず手に取ったのはシニア世代。「一度読んだことのある人や、親から薦められたけれど結局読まなかった人など」(鉄尾氏)。直接的な強いタイトルが皆の記憶に残っていたからこそ、発売当初から興味を喚起した。これから人生を歩んでいく子供向けに書かれた本だが、「今までの生き方が間違っていなかったか確認したいニーズも捉えた。また、大人はむしろ『おじさん』に感情移入するなど、各自の年齢ならではの読み方をされていたようだ」(鉄尾氏)。

そしてここから、マンガ版ならではのエンジンが点火する。ギフト需要だ。もともと原作自体、読了者は誰かに、特に若い人に薦めたくなる本。マンガなら、普段は本を読まない人や子供にも気軽に薦められる。こうしてシニアが伝道師となり全世代に広がるという、メガヒットへの快進撃が始まった。テレビで取り上げられ始めてからは女性層に広がり、さらに彼女たちの子供へ。また、学校の先生を通じて10代の読者も急増中だという。「授業で使われた例も実際に聞いている」(鉄尾氏)。門出の時期である3月、4月を迎え、どこまで売れ行きが伸びるのかは正直まだ読み切れない。

『君たちはどう生きるか』の仕掛け人に聞く

「周囲の30代の編集者に『君たちはどう生きるか』の原作の愛読者が複数いることに気づき、世代を超える普遍性を感じた」。マンガ版の企画を立案し、編集を担当したマガジンハウス取締役の鉄尾周一氏は出発点をそう振り返る。

50代の鉄尾氏も、同作を「親から薦められて読んだ」世代だ。現代は原作が生まれた第二次世界大戦直前期と同様、将来への不安が高まっている時代。古風な言い回しもある岩波文庫版では若者にとってハードルが高いが、時代に合わせてパッケージを一新すれば、広い世代に刺さる可能性はあると考えた。

「原作の持つ誠実さや実直さに合った絵」という理由で起用したのが、短編集『ケシゴムライフ』でデビューした漫画家、羽賀翔一氏だ。起用時点で原作は未読。「タイトルから押し付けがましい内容も予想したが、読んでみると人物造形が素晴らしかった。読者が自分のことだと感じられる内容」(羽賀氏)。特に、「おじさんのノート」に書かれた「君が今苦しみを感じているのは、正しい方向に向いているからこそだ(要約)」という言葉には感情を揺さぶられたという。マンガ版独自の演出として、このノートに関わる部分はファーストシーンに採用された。

他にマンガ版の演出として印象的なのが、重要な「おじさんのノート」だけは丸ごと活字にしたこと。その枠となるノートを、コペル君が手に持って読んでいるような視点で描いているのだ。原作すべてをマンガ化するとページ数が増え過ぎるという制約から生まれた演出だが、「コペル君と同じ気持ちでノートを読んでほしい」(羽賀氏)という狙いもある。

制作期間は約2年で「予想よりかなり時間がかかった」(鉄尾氏)という。「ネーム(下書き)に編集としての意見を付けて戻したら、それほど厳しい要求はしていないのに、次がいつまでたっても出てこない(笑)」(鉄尾氏)。羽賀氏は「途中まで描いたら最初に戻ってやり直し、の繰り返しだった」と振り返る。しかしそのぶん、「一貫性のあるキャラクターを描けた。書き下ろし作品だからできたこと」(羽賀氏)。

一番最後に描いたのが、コペル君が意思の強そうな目で見つめてくる「顔面ドン」の表紙。タイトルが強い言葉なので、それと釣り合うように悩んだという。「実は作中にこの表情のコペル君は出てこない。むしろ、読み終わって本を閉じた後に、タイトルと併せてハッとしたという感想をもらった」(羽賀氏)。初見では説教臭さも感じるタイトルと表紙が、読了後に再び問いかけてくる。この演出も、クチコミの連鎖を生んだ一因かもしれない。

(日経トレンディ編集 臼田正彦)

[日経トレンディ2018年4月号の記事を再構成]

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