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ヒットを狙え

『君たちはどう生きるか』 読み終えて知る表紙の意味

日経トレンディ

2018/3/24

『漫画 君たちはどう生きるか』は書店でも大きく扱われている(写真提供:マガジンハウス)
日経トレンディ

「リバイバルヒット」は数あれど、これほどスケールの大きな復活劇はめったにお目にかかれまい。実に80年も前の児童文学をマンガ化した『漫画 君たちはどう生きるか』(マガジンハウス)が、17年8月の発売後、半年余りで200万部に達する大ヒット中だ。

快進撃を目の当たりにした出版業界は色めき立っている。このヒットは、単に一作品が受けた突然変異ではない。「マンガ」の可能性が広がったことを示す象徴的な事例だからだ。ヒットした背景や印象的な表紙が生まれた理由などを仕掛け人に聞いた。

吉野源三郎による原作『君たちはどう生きるか』は、学業優秀な少年「コペル君」の周囲で起こるちょっとした出来事と、近所に住む「叔父さん」との交流をつづった児童文学だ。マンガ版でも、おじさんの職業などに若干の変更はあるものの、時代設定などはそのまま踏襲されている。

『漫画 君たちはどう生きるか』(マガジンハウス、原作:吉野源三郎、漫画:羽賀翔一)

新潮社から初めて刊行された1937年は、ちょうど日中戦争が始まった年。その後、出版社を変えつつ書店に並び続け、82年から発行する岩波文庫版だけでも累計130万部に達する超ロングセラー小説だ。近年も「忘れられた作品」だったことはなく、テレビ番組などでもたびたび特集されている。

長く親しまれ続ける理由は、その特異な「生い立ち」にもある。執筆当時の日本では軍国主義が強まり、進歩的な言論が弾圧されていた。そんな時代背景の中で、せめて子供たちには進歩的な考え方を伝えようと「いわば隠れみのとして、児童文学の体裁を取って書かれた」(編集担当のマガジンハウス取締役・鉄尾周一氏)作品だ。

そのため、戦時中という時代性は前面に出ておらず、現代人が読んでもギャップのない普遍的なメッセージになっているのだ。タイトルから連想される自己啓発本的な説教臭さも少ない。あくまで物語であり、コペル君の日常的な体験を通じて、自然と生き方・考え方の指針に触れられる構成だ。

マンガ版の発売後、まず手に取ったのはシニア世代。「一度読んだことのある人や、親から薦められたけれど結局読まなかった人など」(鉄尾氏)。直接的な強いタイトルが皆の記憶に残っていたからこそ、発売当初から興味を喚起した。これから人生を歩んでいく子供向けに書かれた本だが、「今までの生き方が間違っていなかったか確認したいニーズも捉えた。また、大人はむしろ『おじさん』に感情移入するなど、各自の年齢ならではの読み方をされていたようだ」(鉄尾氏)。

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