マネー研究所

カリスマの直言

突然の円高 「流れが変わった」に異論(武者陵司) 武者リサーチ代表

2018/3/12

写真はイメージ=123RF
「円高進行を巡り、長期トレンドの転換を示すのか、一過性なのかが市場の関心事となっている」

 円高進行が懸念されている。米国株式相場の突然のクラッシュやトランプ米政権の通商政策を受けて、リスク回避ムードが高まり、ドル円相場は1ドル=110円台から一時105円台と5%もの急騰となった。米朝首脳会談が実現する見通しとなり、円高にはいったん歯止めがかかったものの、2017年は108円~114円台のレンジで推移していただけに、突然の円高が長期トレンドの転換を示すのか、それとも一過性なのかが市場の関心事となっている。

 円高論の最大の根拠は、長期ドル循環の波動がすでにドル安局面に入っている、というものである。過去40年余りのドル循環を振り返ると、ドル高のサイクルは約7年、ドル安は約10年であり、11年から始まったドル高の流れは17年にドル安に転換したというわけである。

■ドル相場を長期で決めるのは米経済および政策

 しかしながら、長期ドル循環を支配してきた決定的な要因は米国経済および政策である。米国内経済の充実期は、インフレ抑制、バブル警戒、対外投資促進などの政策の優先順位が高くなり、金融引き締めによりドル高が進行した(1978~85年、95~2001年、11年以降)。

 逆に米国内経済の不振期には、景気テコ入れ、デフレ回避、輸出競争力強化に優先順位が置かれ、金融緩和によりドル安が進行した(1973~78年、85~95年、2001~11年)。

 では、現在の米国経済および政策はどうだろうか。米国経済が充実期にあり、デフレよりはインフレのリスクが高く、資産バブル警戒にますます重点が置かれていることは明らかである。とすれば、ドル高に理がある。

 今回のドル高の起点がいつなのかも重要である。2011年から14年まではドル高といっても底ばいに等しく、米連邦準備理事会(FRB)の量的金融緩和(QE)の下でドルは歴史的安値水準で低迷していた。本格的にドル上昇が始まったのは、量的金融緩和第3弾(QE3)が終わり、FRBのバランスシート拡大がとまった14年後半からである。事実上のドル高は始まってからまだ3年余りともいえ、長期ドル安局面に入ったとする議論は説得力があるとは思えない。

 英紙フィナンシャル・タイムズのコラム(3月5日付)でサマーズ元米財務長官は、過去米国の為替市場で、高金利の下でのドル安(世界の投資家が米国資産を忌避している状況)は、ボルカー元財務長官登場前のカーター政権時代(1977~78年)、ルービン元財務長官登場前のクリントン政権時代(1993~94年)ぐらいしかなく、それは政策に対する不信に根ざしていたと主張していた。

マネー研究所新着記事

ALL CHANNEL